第24話 火魔法

装備を整えた俺は、ジョセ翁の執務室のドアを叩いた。


ジョセ翁は、俺が来る事が予め解っていた様に書類を片付け、


「準備は出来た様じゃな、

早速、魔法の手解きをしてやろう」



※※※※※※※※※※※※※※※※※


城の城壁の内側の広場は訓練場も兼ねている。右の広場ではホブゴブリン達が剣術を、左の広場ではゴブリンマジシャン達が弓や魔法の練習をしていた。


左の広場に向い、ゴブリン達を追い払うと、ジョセ翁は、


「まずは見本を見せてやるのじゃ、

心して見るが良い!」


『ファイアボール』


洗練された動作で、杖に魔力を通し、

シュ〜ッ!と音を立て、ドカン!と的が爆発した。


「これが基本!

ファイアボールじゃ!」


いや全然違う!!

スピードと正確差も破壊力も、俺が経験したモノとはモノが違う。


「今度は応用じゃ!」

的の足元から火柱が上る。

『ファイアウォール』

轟轟と音を立て、前方の的から左右に火柱が移動して幅10メートル高さ5メートルほどの炎の壁が出現した。

命ある者は絶対に立ち入る事を拒む、

灼熱の壁。



「仕上げじゃ」

ジョセ翁の身体が発火した。

ゆうゆうと壁に向い歩き出すと、そのまま壁に呑まれる。

するとまるで嘘の様に炎の壁は消え失せ、ジョセ翁の背中だけがあった。

ジョセ翁が振り向くと同時に、再び発火し、ジョセ翁は炎となる。


『ファイアバード』


迸る炎の中から火の鳥が生まれ、翼を広げる。

放射状に広がる光りと熱に、広場にいる誰もが顔を覆う。

炎の精霊はひと羽ばたきすると、俺の前まで膨大な炎を纏い、寸前でジョセ翁の姿に戻った。


「久しぶりで魔力が尽きたのじゃ」


はっはっは、と機嫌良く立ち去るジョセ翁。

手解きは終わった。



「すいません誰か⁉︎

説明して頂けますか?」

俺の懇願に見学していたマジシャンが、答えてくれる。


「火の魔法の基礎と応用、ジョセ猊下の特有の魔法であります。

ジョセ猊下は火の精霊に化身する。唯一無二の伝説の賢者様です。」


誰にも聞かれない様に耳もとでそっと囁いてくれる。




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