第11話 帰りの馬車にカートが追いついてくれました

私はホームルームが終わると夕食を取らずに着替えて、学校の近くを通る乗合馬車で家に帰ろうと思った。馬車に乗り込もうとしたら、後ろから走ってくる足音がした。


「カート!」

「リア!酷いじやないか。勝手に帰るなんて」

カートが私の隣に座りながら文句を言ってきた。


「えっ、でも約束なんてしていないし」

私はカートが来てくれて嬉しかったが、言葉では違うことを言っていた。


「殿下が一緒に行かせるって約束したろ」

「えっ、殿下に言われて無理やり来さされたの?」

自分で言ったにもかかわらず、私はカートの言葉にムッとした。


「嫌だったら来ないよ」

カートは少しふてくされて言ってくれた。


「リアは俺が一緒だと嫌?」

カートが私を覗き込むように聞いてくる。


「そんな訳無いわよ。カートは頼りになるし」

私はそんなカートが眩しくてまともに見えなかった。


「とか何とか言って。障壁さえあれば問題ないと思っているんじゃないか」

「そらあ、障壁があれば一人で行けるけど、一人より二人のほうが良いし」

私は出来るだけ平静を装って言った。顔が赤くなっていなければいいけど。カートと一緒に行けるのは本当に嬉しい。本人にはそこまではっきりとは言わないけど。


「なら良いけど」

そう答えるカートの顔が少し赤いように思えるのは私の気のせいだろうか。



「で、すぐダンジョンに潜るんだろ」

カートが話題を現実問題に変えてきた。


「家帰って道具取ってからね」

「今日は徹夜かな」

少しつらそうにカートが言った。


「6時間もあれば終わるわよ」

「真夜中じゃん」

私の言葉にカートが言う。


「うちに帰って寝ればいいでしょ。部屋は準備しておくから」

「無かったらリアの部屋でもいいよ」

カートが冗談を言ってくる。


「最悪床で寝かせてあげるわ」

「一緒のベッドでいいよ」

「障壁で弾き飛ばして良いのなら」

「・・・・まあ考えるよ」

一瞬カートは絶句していた。私なら本当にやりかねないと絶対に思っているな、この反応は。まあ、私もカートに抱きつかれたりなんかされたら、パニクってやりかねないけれど・・・・


「大丈夫。部屋は準備しておくから。それよりもカート、あなた、殿下とどういう関係なのよ」

私は無理やり話題を変えた。


「えっ、単なるクラスメートだけど、それがどうかした?」

「あなた、私の有る事無い事殿下に吹き込んでいるでしょ」

「そんな事ないよ。少し話しただけだよ」

「私のこと話す必要ないでしょ」

私が膨れると


「あの入試で障壁を放って教室壊した女の子って、どんな子だって聞かれたんだよ」

「それだけ?」

「そうだよ。それよりも今日のリアはすごかったな。第二王子達を障壁で弾き飛ばしたんだろ」

カートも話題を強引に変えてきた。まあ良いけど。


「ジルおじさんがオリエンで一番になったらドラゴンの角くれるって言うから、頑張ったのよ

「えっ、ドラゴンの角って、超希少価値があるじゃないか。本当なのか」

カートが食いついてきた。


「ジルおじさんは嘘はつかないわよ」

「まあそれはそうだと思うけど」

「じゃないと、急にダンジョンに薬草採取に行かないわよ」

「本当だ。危険だから一人で行くときは必ず前もって声をかけろって言ったよね」

少し怒ってカートが言った。


「学園の中でカートに会えるかなって思ってたんだけど、会えなかったのよ。今日もゴールのところで少し待っていたのに、中々ゴールしてこなかったじゃない!」

私が少し怒って言うと、


「それは悪かったよ。俺らは途中で体調不良になったやつがいて棄権したんだよ」

カートは言い訳した。


「そうだったんだ。それは残念だったね。最後のオリエンだったのに」

「まあ、そうなんだけど、最後はせっかくだからリアとパーティー組みたかったかな」

「えっ、でも学年が違うから無理じゃない」

「ま、そうなんだけどね」

私も組みたかったけど、班分けはクラスの親交を温めるためのものであり、基本は同学年同クラスだ。


「でも、最後に殿下らとは共同戦線張ったんだよ」

「えっ、そうなの」

「そうだよ。カートも早く来てくれたら共闘できたのに」

私が少し怒っていった。


そうすれば学園の思い出にできたのに・・・・私は残念に思った。


でも、殿下と共闘した時、殿下と障壁を解くタイミングぴったりだったんだけどなんでだろう。私は少し不思議だった。


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カート登場です。深夜のダンジョンデートになる予定。


続きは昼前後に更新予定です。

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