第12話 ダンジョンに行く途中でカートと一緒にサマーパーティーに参加する約束をしました
それやこれや話すうちに馬車は家に近づいた。
馬車で家の近くで降ろしてもらうと、もう夕闇が近くなっていた。
閉めようとしていた近くのお店で適当に食材を買う。
薬屋は当然閉まっていたので、裏から入る。
「ただいま」
夕食を食べていたハンスに挨拶する。
ハンスは夕食に固形食を食べていた。
「リア、お帰り、カート様。いらっしゃい」
「ハンス、何その食事。私がいなくなってたった2日しか経っていないのに。今から食事作るからご飯炊いて」
今まで食事は私が作っていたので、いなくなるとすぐにこれだ。夕食に固形食ってなんだ。私がいないと母とハンスは同じことをする。今は母もいないから尚更だ。
我がブライトン王国の主食は米だ。最近は帝国から小麦も流入していてパン食も増えてきたが、私はご飯派だ。
私は食材を刻んで鍋にする。
ハンスは母と同じで食事の時は使えないので、結局カートが米をかしてくれる。
「米は何合にする」
「夜食もいれて10合くらい炊いておいて」
「えっ、そんなに食べるのか」
驚いてカートが聞いてきた。
「帰ってくるのが深夜になると思うから明日の朝も考えて、後、夜食でしょ。それくらいいるでしょ」
「ま、そうか。夜食はおにぎりにして二人で4合くらい持っていくか」
「非常食の分も考えてそんなものでしょ」
私とカートは慣れたものだ。
「えっ、リアはこれからダンジョンに潜るのか」
慌ててハンスが聞いてきた。
「オリエンで一位になったから、ジルおじさんからドラゴンの角もらえる事になったのよ。それで、急遽ポーション作ろうと思って」
「でも、若い男と二人で行くのはどうかと思うぞ」
ハンスが急に保護者ヅラして文句を言ってくる。
「カートとは母がいる時はいつも二人で行っているじゃない」
「でも、今はアリシア様がいらっしゃらないから、俺が保護者でしょ」
ハンスは私より10ほど上で10年前から母の助手をやっている。基本は薬オタクであまり他のことにはうるさくないのだが、私には兄的存在で結構うるさい。
「ま、硬いこと言わないでよ。ドラゴンの角、手に入ったらハンスも使っていいから」
「まあ、でも、若い男と二人というのは」
角をちらつかせると態度が目に見えて軟化する。
「私がリアに変なことするわけ無いだろ。どれだけ長い付き合いだと思っているんだよ」
カートが言う。冒険者のカートがちょくちょくこの店に来るようになってもう5年位だ。昔から良く薬草採りに付き合ってもらっている。その時から剣も魔力も更に上がっているから護衛としては最高なんだけど。
私に手を出されるというか恥ずかしいことされると困るが、絶対にしないと言われるのも女心としては傷つく。そんなに魅力がないのかとも思ってしまう。たしかに胸はあんまりないし、顔もベッキーとかに比べれば派手ではないけれど。
「当たり前です。手を出したと知れたら絶対にアリシア様に殺されますから」
「えっ、あれだけ好きにしている母が言える義理はないと思うけど」
私は驚いて言った。遊び回っている母に言われる筋合いはない。
「ああは見えても、アリシア様はとても過保護です。リアに手を出そうとした冒険者の何人かは半殺しの目にあっていますし」
「えっ、本当なの」
私は初めて知る事実に驚いた。
「知ってますよね。カート様も」
「最初に釘は刺されているよ」
ハンスの声にカートが答えた。
「何故なの?自分はあんなに奔放に生きているのに」
そうだ。母は過去に何人ものイケメンを連れ込んでいるのだ。人のことをどうのこうの言う前に自分の貞操を守れよ、と私は言いたい。
それに私の障壁はドラゴンだろうが破れることはないのだ。男に襲われても瞬間で弾き飛ばせる。
「まあ、それだけリアのことを心配しているんだよ」
「私をほって世界漫遊に出ているのに」
カートの言葉に私は納得できなかった。
「まあ、学園に預けておけば問題ないと思っているんじゃないかな」
「何人もの方に娘をくれぐれもよろしく頼むと連絡していかれました」
ハンスがぼそっととんでもないことを言う。
「えっ、じゃあジルおじさんが来たのも」
「手紙は確実に届いている」
ハンスが言った。
「カート様ももらっておられますよね」
「ああ」
ハンスの声にカートも頷く。
何だ。ひょっとしてカートが付き合ってくれているのって母の手紙があったから・・・・
私は急に機嫌が悪くなった。
ご飯を3人で食べて、片付けはハンスに任せて、私達はダンジョンに潜る準備をする。
薬草入れるために大きめのザックをそれぞれ背負って出発した。
ダンジョンは家から歩いて1時間位のところにあった。
流石に夜に入る者は私みたいな薬草採取者くらいだ。
家の近くのダンジョンの中はどういう仕組みになっているか判らないが、昼は明るく、夜は暗かった。
「リア、どうしたんだ。家にいる時から急に静かになったけど」
「別に何でもないわ」
私はぶすっとして言った。
「言っておくが、人に言われて付き合うほど俺はお人好しじゃないぞ」
「えっ」
私はカートが言ったことがよく理解できなかった。
「だから、お前についてきているのは、王子に言われたからでもお前の母に言われたからでもないからな」
「そうなの」
「そうだ。それだけは理解しておけよ」
まあ、何言っているかよくは判らなかったけれど、私は少し機嫌が治った。
「それよりも、夏の終りに学園でサマーパーティーがあるのは知っているか」
「えっ、そうだっけ。まだよくスケジュール見ていない」
私は全体のスケジュールもまだよく見ていないことを思い出した。
「さすがリアだな」
呆れてカートが言った。
「で、そのサマーパーティーが何なの」
私はカートの言葉に少しムッとした。
「出来たら一緒に参加してほしいのだけど・・・・・」
「えっ、良いけど・・・・」
私はよく判らず頷いていた。
「よし、良いんだな。約束だからな」
何故かカートに指切りまでさせられた。
学園のサマーパーティーなんだから全員参加じゃないんだろうか。一緒に参加するのに何があるんだろう。私はその時は良く知らなかった。
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知らぬ間に外堀を埋められているリアです。
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