第2話 なみだ姫。
僕には
でも先輩が書いてくださった疑問文には、なるべくきちんとお答えしておきたい。
そう思いながら画面とニラめっこしていた僕の横顔を、いつの間にか友永先輩が笑みを浮かべてガン見していた。
「へっ、へーっ」
友永先輩は、どこか自慢げな表情を浮かべる。
ゼータスペックの人事担当の方からの指摘を受けた人材会社の担当者は、慌てて友永先輩にコンタクトを取った。
そして、大力作の
日付の上では一月ほど先に僕の方がインターンを始めたことにはなるけれども、経緯も経緯だし、友永さんは正々堂々たるたる
そんな友永先輩は、ある日、小森センパイに引き連れられ、僕のところにやってくるなり、
「あぁ、
そう言いながら、小森センパイとキャーキャーしはじめる。
お二人ともがメガネ姿であることも相まってか、まるで年の近い姉妹みたい。
以来、友永先輩は、席は別室のデザイナールームにあるものの、時々僕のところにいらしゃっては、僕を軽くイジくるのだった。
そして、今日は小森センパイまでもが僕の席に向かってこられた。
久しぶりの姉妹揃い踏み。
お二人の姿を認めた僕が、友永先輩の持つ、ご立派なノートへと視線を落とした時、小森センパイが口を開く。
「トモナガ先生の新作、「なみだ姫、
そして、友永先輩が、ジャジャ~ン、とその絵を
コウの姿はまさしく
「ちなみにぃ、『ルカ・クラネルと涙』というお題は僕が出したんだぜよ。ルカ君はなんていうか、お江戸では蔵に閉じ込められてそうだし、ダンジョンに入ったら斬ったモンスターに涙しちゃいそうというか。」
そう言うなり小森センセイは、僕の前でいっそう声を出して笑う。
そして、友永先輩は、
「でもね、なみだ姫くん。小森センパイはね、お昼のレクチャーではレベルを落とさないようにしていて厳しいも言うけれども、君のこと思いっきり応援しているんだからねぇ。」と言うなり、ノートを
そこには、高校の時に
その刹那、僕は耳元に何事か囁きかける風を感じ、鳥肌が立つ。(モシカスルト友永先輩には、絵に描いたものを本物にする力があるのかもしれない) 刹那、僕はそう想ってしまう。
数秒の間をおいて、小森センパイが例の謎の
「まぁ、そんなわけで、ひとり涙してはいかんせよ。。君は、トモナガ先生がメインデザイナーを務める、、、かもしれない【バージョン8】の8人めの剣士ルカなのだから。」
いつもよりゆっくり目に、そう呟いた小森センパイは自席へと戻っていかれた。
そして、トモナガ先生は、突然に僕の頭を
「君のはじめての人は、誰なのかな?なみだ姫くんのこと、みんな放っておかないよ。」
インターン中、僕は涙を流したことなどない。
ただ、悩むことがいろいろとあることは事実だし、うつむき加減な時は泣いているように見えるのかもしれない。
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