『寂しいから電話して』
明日は一時間早く出勤しないといけないので、早朝五時十五分までには着替えて現場に行かなければならない。
だが、今の時刻は夜の十二時半。
なぜ寝ないのかって?
それはだな……、
「あかりちゃんがさ、彼氏できたんだよね。でもその彼氏がすっごい束縛する人で、なかなかあかりちゃんと遊べないの」
「うんうん……ふぁあ……」
眠たい……。
そもそもあかりちゃんって誰なんだ? 聞いている限りだと麻衣の友達だろうか。
かれこれ四時間はずっと喋っている。
あれは風呂上がりのこと。
洗面台に置いていたスマホが落ちていたのに気づき手に取ると、何十件と通話がかかってきていた。
『寂しい』
というメールの後に続く連続通話記録。
俺は慌ててパジャマに着替えて、麻衣に連絡した。
それからかれこれ四時間である。
寂しいというのは、その友達のあかりちゃんって子に彼氏ができたせいで、あまり遊べていないとのこと。
俺に会えないからとかじゃないのか……。
肩を落とす俺を他所に、スマホからは麻衣の愚痴っぽい声が聞える。
「あかりちゃんもそんな彼氏とは早く別れた方がいいと思うの。しーくんもそう思うでしょ」
「うん、思う……なぁ、もう眠たいんだけど、明日早いからさ、そろそろ寝ないと」
「何で! 私は寂しいの!」
スマホの音量を下げているはずなのに、耳につんざくような叫び声が聞こえて、俺は思わず耳元からスマホを遠ざけた。
「はぁ……」
明日は寝不足かぁ。
寝落ちしそうだけど、したらしたで明日が怖いんだよな。
「わかったよ。で、あかりちゃんが何て?」
「それでね、あかりちゃんがね……」
通話が終わったのは、早朝四時。
終わった、と言っても麻衣の方が寝落ちしたため、俺は静かにそっと通話を切っただけだ。
ちなみに麻衣は大学生で、課題も終わりかけているから俺と違って時間に追われていないのだ。
やばいくらい眠たい。
昨日からずっと起きてるし、頭が朦朧とする中で着替えた後、俺はアパートを出た。
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