(四)-2(了)

 いつもならこの時間は近所のスーパーのパートに出ているはずの母親がリビングから顔を出した。今日は休みなのだ。

「あら、お帰り。まだ制服着替えてないの」

 その母親の声に、私はびっくりした。なんでこういうときに、声をかけてくるのか。

 手に持っていたものをとっさに見えないように隠した。

「ママには関係ないんだから」

 私はそう言って階段を駆け上がった。

 部屋に入ると、ドアを閉め、鍵を閉めた。

 そしてデスクの上にスティックを置いた。

 スティックの窓には、一本の線が浮かび上がっていた。

「うそ、でしょ……」

 私はそうつぶやかずにはいられなかった。


(了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

キスから始まる世界 【い-14】文学フリマ京都_筑紫榛名 @HarunaTsukushi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画