(三)-3
でも、今回はできなかった。宗ちゃんの唇が私の唇に触れる瞬間、私はとっさに手を差し入れて彼の動きを止めた。
「この前は、したじゃん」
宗ちゃんが言った。
「ゴメン」
「何か理由でもあるの?」
「ゴメン」
「もしかして、俺のこと嫌いになった……とか」
「ううん、それは違う」
「じゃあどうして……。キスだけでいいから」
宗ちゃんは私の両肩に手を置いて、私の方をじっと見ていた。
私は彼の顔を見ることができなかった。
「ねえ……。もし私が妊娠したって言ったら……」
小さい声で言った。自分の耳でもはっきりとは聞き取れないほど小さい蚊の鳴くような声だった。
(続く)
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