(二)-13

 一週間経った。

 宗ちゃんとはその後、全然しゃべっていない。

 それよりも心配なことがあった。あの噂のことだった。あんなの嘘っぱちだと思っていた。

 そう思いながら、靴を履いていると、リビングから母親が顔を出して言った。

「あんた、替えの下着とかは持ったの」

「何よそれ」

 いきなり何を言い出すのか、この母親は。

「そろそろあの日でしょ」

 私は息を飲んだ。なんで知っているのか。いや、自分の母親だからそれくらいは把握しているか……。

「そんなに大きな声出さないでよ、パパに聞こえちゃうでしょ」

 私はそう言ったが、母親は「持っていきな」と私の方に何かを投げてきた。

 私は慌ててそれをキャッチした。小さい巾着袋だった。

「もう持ったから」

 私はそれを投げ返して、家を出た。

 それにしてもどんだけ勘がいいのよ、うちの母親は……。


(続く)

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