後編 俺の彼女は義妹でアイドルなんだよ(ヒヤッ)

 翌日。

 両親が旅行でいない2日間、ひよ菜と2人だけで過ごすことになった。


「いやー、久しぶりにひよ菜と2人っきりだな」


 朝食を作っているひよ菜の背中を見ながら話す。


「お兄ちゃんと2人っきりで私も嬉しいよ」


 うん、この笑顔でご飯三杯はいけそうだ。


「どこか出かけるのもいいが、ひよ菜はアイドル業で忙しかっただろうし、今日はとりあえずゆっくり休むといいさ」


「ありがとう」


 ひよ菜お手製の朝ごはんを平らげ、食後のお茶を飲んでしばらくした頃、何だか身体が熱くなってきた気がした。


 チラッとひよ菜を見ると、クスリと笑っている。


 何か薬を盛られたのかと思い、ひよ菜に詰め寄るも勢い余って押し倒してしまう。


「お兄ちゃんどうしました? もしかしてそろそろ私が欲しくて堪らなくなってきたんじゃないですか?」


「やっぱり盛っていたか……」


「はい♪ 睡眠薬と媚薬を少々」


 そのダブルパンチはダメだろ。

 いつかやりそうだと思っていたら。


 押し倒すような体勢になっている俺の首に手を回し、ひよ菜は話す。


「お兄ちゃん」


「なんだ?」


「好きですよ」


「それは俺もだ」


 そう返すと、回された手に力がこもった。


「私ね、本当はお母さんの再婚に反対だったんです。お兄ちゃんが出来るって言われても全然うれしくなかった。アイドって職業柄もあるし、もしバレたりでもしたら襲われるかもって……。でもお兄ちゃんは凄く優しくしてくれた」


 ふと、1年前を思い出す。

 母親の後ろに隠れるようにいたひよ菜は心底冷たい表情をしていた。


 一つ屋根の下で暮らせば、仲良くなりだし……最終的にべったり懐かれた。


 懐かれたどころじゃない。あれは……誘惑してたな。


 例えば両親と食事中、気のせいか俺にひよ菜は見せつけるように卑猥な雰囲気で食べていた。


 口元に付着したハンバーグのソースを舌で綺麗に舐めとったり、チラチラと服を引っ張り谷間が見えそうだったり……。


 食事中にも関わらず、俺はひよ菜でエロい妄想をしてしまいそうであった。


 そしてお風呂。


「お兄ちゃん、一緒に入ろう」


「ひ、ひよ菜!?」


 生まれたままの姿をしたひよ菜が浴室に入ってきた。歩くたびに暴力的な大きさを誇る二つの果実がプルンプルンと揺れる。

 背中を洗ってあげるとか言って、おっぱいで現れた時は昇天しそうだったなぁ。


 それから俺がハマっていたアイドル『tiramisu』のセンターの日和ヒヨという衝撃事実も発覚。


 そしてひよ菜の積極的な誘惑に堕とされた俺は、アイドルと付き合うという後ろめたさもあったものの、恋人関係になった。

 今ではその背徳感を楽しめるくらいに余裕が出てきたけど。


 昔を懐かしんでいると、ふぅーっと、耳に生暖かい息を吹きかけられた。


「ひゃ!」


「ひや、って……お兄ちゃん可愛い♪ ねぇ、お兄ちゃん。さっき私のことは好きって言ってくれたけど……tiramisuの中では誰が好きなんです?」


「もちろん、ヒヨだよっ」


「ですよね。でもお兄ちゃん、私がヒヨってバラす前、『彼女と推しは別っ!』とか言ってましたよね?」


「言ってましたね……」

 

 ひよ菜が彼女になる前、自室にヒヨのポスターを入っていた俺は言っていた。


『お兄ちゃんって彼女作らないんですか?』


『もちろん作りたいさ。でも今はヒヨがいるし……』


『彼女さんができてもヒヨちゃんを推すんですか?』


『ああ、もちろん。彼女と推しは別だからな!』


 今思い返しても、本人前に言っていたと、恥ずかしすぎて火が出そうだ。


 ひよ菜はまた身体を密着させ、言う。


「でもそれって……同一人物じゃなかったら、……だよね……?」


 笑っているはずなのに……怖いのよ圧が。


「私が推しなら私だけを推さないといけないよ? 他の女の子は見ちゃダメ。例え同じメンバーのナツさんとかでも」

  

「……もしかしてナツさんとの会話聞いてたのか?」


「んー、わっかんない」


 ひよ菜はわざとらしく首を傾げ、ボタンを上から2つ外した。その仕草には、色気のようなものが含まれていた。


 はだけた胸元からは透き通るような肌と、膨らみが覗いている。


 と……ひよ菜がこんなに機嫌が悪いのは、ナツさんとのやり取りを聞いて嫉妬したんだな。

 

 睡眠薬に媚薬、両親は2日いない……この状況かなりやばいのでは?


 そして、俺の服も脱がされ始めた。


「待った待った! 落ち着けひよ菜! お兄ちゃんはひよ菜のことだけ好きだぞ!」


「もちろん知ってるよ? ただ他の女の子とデレデレしていたお兄ちゃんにお仕置き」


「お仕置き?」


「そう、お仕置き。まずはお兄ちゃんの身体中に私のものだったってキスマークつけた後……しちゃおっか♪」


「いやダメだろ!!」


 流石に手を出したりしたら洒落にならない。


 と、俺の抵抗もここまでらしい。

 薬が本格的に回ってきた。


「あ、一旦、眠っちゃうね。大丈夫。起きたらきっと楽しいことが待ってるから。義妹でアイドルで彼女のひよ菜を2日間、たっぷり味わってもらうね」


 妖艶な笑みを浮かべるひよ菜を確認し、俺は瞼を閉じた。

 



 一週間後。


「私、日和ヒヨは一般男性とお付き合いすることになりました」


 テレビ越しで満面の笑みのヒヨ。いや、ひよ菜。


 ……俺のまだ平和だった日常が荒れるなぁ。


 俺は苦笑しながら、首元に付いたキスマークをなぞった。




◇あとがき◇


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【完結】「彼女と推しは別っ!」とか言ってるけど、それって同一人物じゃなかったら、"浮気"……だよね……? 悠/陽波ゆうい @yuberu123

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