あちらの世界3
私は幸せのうちに亡くなった。
棺桶にたくさんの思い出の品を入れられて彼が激しく泣きながら大粒の涙をぼろぼろと溢しながら友達に抱き抱えられ棺桶の蓋が閉められた。
私は意識が飛んでいた。昔事故で頭を打った時も意識が飛んだがアレと似ている。
気がついたらゴソゴソと言う音と共に蓋が開けられた。
眩しさに目を瞬き慣れると美男子が覗き込んでいた。誰もが一瞬で恋に落ちる美男子が存在していて目の前で大丈夫?と尋ねてくるのだ。
「大丈夫?」と手を差し伸べられ棺桶から起こそうとする美男子くんと、耳が美声で心地良いな天国かな?と考えている私と。
誰しもが死んだなら生きていた時の彼氏よりも天国の美男子くんを優先する。
手を取り引っ張り上げられ背中に手を回されありがとうございますと嬉し涙が出そうになるのを隠してなるべく上品そうに対応する。
私は美しく魅力的に少しでも見えているだろうか?気さくさと優雅さを兼ね備えたちょっと美人じゃなくてもえ?と思わせられるような微笑みができているだろうか?
私は恋に落ちた。
彼は水溜りを指差して覗き込むようにと言い私は従う。水溜りの向こうに天井が見える。
地上にいた時の彼の唇がアップで映り水面が揺れる。
理解出来ずに美男子くんの説明によるとこちらはコップの水の中らしく向こうの彼の唇がアップになったのはコップの水を飲んだかららしい。
美男子くんはちょっと頭がおかしいらしい。
向こうの彼は誰かと話していてとても悲しそうな表情をしている。私のことを悲しんでいるのね。でも大丈夫よ、美男子くんがいるから。
美男子くんは他の水溜りを指差した。
覗き込むと私の友達の女の子が慰めていた。そして彼の手をそっと握って元気を出してと言っているようだ。ああ、私の彼は友達に取られてしまうの?と、美男子くんにしなだれかかった。
あちらの世界 ソーダ @soda_ice
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