第2話 いや、チート能力押し付けられる感じなんですけど

 「はーい!伏見慶くんね!」

目の前にいるのは美少女、いや女神様、もうどっちでも良い。

 「死因はえっと、どれどれ、なだれに巻き込まれて死亡、と」

見た目は完全に外国人。金髪に碧眼、それもクリクリ。その純白の服装が超お似合いです。


 「ちょっとー、ちゃんと喋ってよー。お姉さん、寂しいゾ!」

「俺、転生させられるんですか?」

「転生?んーと、まーそうとも言うかな?死んじゃったもんね。現世ここにはいれないもんね。というか、最初にそれ聞く、普通?もっと「ああ美人な女神様ですね!」とか、「お美しい、サインお願いします!!!」とかないわけ?」

まじでめんどくさい女神様っているんだ。勝手に女神様ってみんな優しいって思ってた。けど、神も皆、人それぞれだもんな(?)


 って、おいおい、何この現実受け止めちゃってるんだ俺。違うだろ!違うだろっ!

 俺、異世界転生(いや正しくはおそらく「異世界転移」)すんのかよ。あんだけ生前異世界転生モノバカにしてたくせに。うわっ恥ずかしっ。

 あんだけ「チートとかハーレムとかありえねー」って言ってた俺が異世界転生かよ。なんか知ったかしてたみたいな気分になるな。


 それに家族とか……まあ、それはいいか。考えないお約束だ。作品に余計なことはいらない。これは俺も同意な。


 「ちょっとー!さっきから聞いてる?」

「へっ!?」

「スキルよ、ス キ ル!どれが良いの?一応、一個は与える決まりになってるの」


 やっぱりありますよねー。逆に無いわけ無いか。

「どんなのがあるんですか?」

「んーとね、今余ってるのだと……」


 余ってる?余ってるって何?いや、俺余り物のスキル与えられんの?そんな売れ残りみたいなスキルいらねえんだけど。まあ、そんな運命もなろうアンチらしいか。

アンチしていたことによる天罰だと思って甘んじて受け容れよう。


 「今の旬はこれ!まず、『TS』!簡単に言うと性転換ね。スキルっていうより設定だから、今なら無料でもう一個スキルサービスしちゃうゾ!」


 体がこれを欲しがってるのがわかる。でもこれはダメだ。絶対ダメだ。俺のプライドが許さない。こんな俺がTSしたなんて現世の奴らにでもバレてみろ。滅茶苦茶にバカにされるに決まってる。

「まだ、現世の事考えてるのー爆笑!!!」

うっわ、思考読まれてるんですか、俺。また恥ずいな。

「素直になっちゃいなヨ!今なら大サービスでさらにもう一個無料でスキルつけちゃうゾ!」

「大丈夫です。次はなんですか?」

よし、理性が勝った。


 「もう、強がっちゃって!まあいいや。どうせ次のやつが使うでしょ。えーとね。次は、グラビティ!重力を自由に操れちゃうよ!」

いや、めちゃくちゃ強そうだな。チートっぽいぞ。はいパス。俺はチートなんていりません。今決めました。普通に一般市民として過ごして一般市民として死にます!

「おいおいコラ!そんな強がりはダメ!」

「げっ……なんで俺なんかが異世界転生するんですか?」

「いやいや、勇者不足なのよ。私の世界。だからあんたのとこの神様に言ってこっちに回してもらったの」

うっわ。俺、運なさすぎ。

まさかの勇者役とか。めっちゃ恥ずかしいじゃん。馬鹿じゃん。死ぬじゃん。

「勘弁してくださいよ……俺だって、死にたくて死んだんじゃないんですから」

「私だって呼んだのがたまたまあんただったってだけなのよ。そんなにお姉さんを困らせるんじゃないの。それとも何?魂ごと死にたいの?」

そっちこそ勘弁して下さい。マジで。


 「わかりましたよ。じゃあそのグラ……」

「ストーップ!今最高のスキルが入りましたーーーーーイェス!」

「は?」

「もういいよね。チートスキルで」

「ちょっと待って下さいよ」

やっぱりチートスキルなんかいやだ。現世の奴らに一生顔向けできない。

「現世の家族はどうでもいいとか言っといてそれは無いゾ!少年。というわけで今入ったこのスキルで決まりね」

女神は俺の返事を聞くまでもなく手元にあったスイッチを押した。


床が抜ける。

どういうわけか何とか空中にとどまっていられる。


「スキル名は無限資本ね。どこでも好きなだけお金が出せるから、それで世界救ってきてね」



「いや普通にチートじゃん」



ストーーーーーーーーーーーン


そのまま俺は絵に描いたような大草原に落ちていった。

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