違和感
「今年も寒いなー。あ大吉だ」
「おにぃ初詣一緒に行く友だちすら居ないの? ──末吉だし、泣いたー」
「前は誰かしらと行ってたんだけどな。思い出せないんだよなよく、だからお前で良いかなーって」
「お陰でファンに絡まれないような地元の神社で済むからいーけど」
古くからこの土地に祀られた神様に手を合わせて目を瞑るが、相変わらずじっと出来ない
「早いっての」
「こーゆーお墓参りとか参拝とか、ありたんだけ言えばいーじゃん」
「お墓参りと参拝を一緒にするなよ。そう言えば今年も母さんのお墓参り行かないとな、あともうひとつも」
「……うん。そうだね」
「待って待って聖華ちゃんだ! 写真一緒に良いですか?」
黙り込んでからの返事に思わず横目で顔を見たが、一瞬だけ暗い顔をしていたようにも見えたが、外出には避けられないファンとの遭遇に一瞬で笑顔に戻る。
「ありがとー! 先週雑誌の撮影あったからお姉さんたちぜひ買ってね」
3人組の女性ファンと盛り上がって居るのを待っていると、今度は一緒に居たこっちに標的が移る。
「お兄さんって彼氏さんですか?」
「兄です。ご心配なく」
「あー、そう言われると目とかめっちゃ似てるかも!」
「聖華ちゃんも可愛くてお兄さんもかっこいいって、やっぱり家系なのかな!」
「お兄さんもモデルとかやってるんですか?」
「あいや、普通の高校生で。モデルとかそんなのは全然」
「ごめんね、マネちゃんに呼ばれててこれから向かうとこだったんだ。これからも聖華ちゃんを応援よろた〜ん!」
見かねた聖華は腕を掴んでずるずると引きずり、最後までファンサを忘れずにポーズまで決めてこの場を離れる。しばらく歩いてようやく立ち止まり、ぷふっと吹き出して肩をはたかれる。
「どうしたよ」
「うんん。何も知らないのにばかみたいって思って。おにぃは私より全然売れてたのに」
「好きで普通の高校生してるから良いんだよ。お前も仕事から帰ってきた時にご飯あったら嬉しいだろ?」
「未だにおにぃ以上の男が見つかんないのは私のせいじゃないし。これ以上世の男を貶めんなよばかにぃ」
「なんだよ分からん。それよりマネさんは良いのか?」
「それ逃げるための口実だし。元日まで仕事したくないでしょ?」
「そーゆーもんなのか」
「そーゆーもん」
「……ご飯どーする? 近くに良い感じのイタリア料理屋出来てたよな」
「おにぃのでいーよ、どーせ違い分かんないし」
「お前なぁ、元日から働かせるなよ」
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