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LIVE当日。本番まであと30分というところ、龍友さんは緊張を隠せないでいる。あたふたしている姿が可愛くて目が離せない。龍友さんは裏方として、今日のLIVEの総監督を務める。そんなことから緊張しているのだろう。
「めっちゃお客さんいるよ!俺の宣伝効果すごいでしょ!?」
涼太さんが興奮状態で、私たちが待機している場所にきた。
「涼太、本当にありがとな」
ぐーと親指を立てて、にこりと笑う涼太。涼太さんは2人の補佐という役目で、こちらに顔を出してくれている。
「龍友さん、こっちで確認してくださいー」とスタッフから声がかかった。
「あ、呼ばれちゃった。そろそろ行くね。レイナさん、今日は楽しもうね!」
と龍友さんは手を出した。私もその笑顔に釣られて手を出し、握手をする。
「それじゃあ」と龍友さんは私に背を向けた。
「龍友から聞いたけど、本当にレイナさんは死神なの?」
と、涼太さんは、真面目な声色で私に問いかけてきた。真っ直ぐ私の目を見つめる涼太さんに
「そうですよ」と答えることしかできなかった。
「本当なんだ…龍友のことを、今まで面倒見てくれてありがとな。初めて会った時「プロデュースさせてください」とかだったから、びっくりしたでしょ?」
涼太さんは思い出し笑いをしている。それに釣られて私も笑ってしまう。
「それはもうびっくりしましたよ。でも、私、初めて人に必要とされたんです。死神なんて、人に余命宣告するんだから、不必要でしょ?だから、すごく嬉しかったです」
「不必要ねー。そんなことはないよ、必要とされてない人なんてない。誰しもが、なんらかの形で必要とされているよ」
「え?」
「まぁ確信ではないけどね。でも、そう思ってたほうが気持ちは楽だよ」
あははと笑う彼の姿に、楽しそうな人だなーと、私も楽しくなる。
「流唯も、そんな人だったなー」
「あ、後藤…流唯さんからの伝言です」
「え!会ったの?」
「はい。流唯さんが「少しの間だったけど、会えて、話せてよかった。俺のことは思い出にしてほしい」と言ってました」
「思い出にしてほしいって…なんで」
「涼太さんがこれからも頑張ってほしいからですよ。陰ながら見守っていきたいみたいです。もう当分の間、忘れて欲しいと」
「そっか。流唯なりの考えがあるんだろうね」
「そうだと思います」
「レイナさん、そろそろステージへ」
とスタッフに呼ばれる。
「はい!そろそろ行かないと。涼太さん、龍友さんをよろしくお願いします」
「え、でもあいつは今日で、」
「あと、この手紙を龍友さんに渡してください」
「わかった、もしかしてレイナさん!今日発表の龍友に報告してない新曲の意味って…」
「涼太さんの思ってる通りです。龍友さんには秘密にしてください」
そう言い残して、私はステージへと向かった。いい加減に、私も決意をしなければならない。私の夢を叶えるためにも、龍友さんの夢を叶えるためにも。私はここに決意をする。
ステージに立つと、私を見ている人たちが、数えきれないぐらいいた。歓声や私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
ステージの袖から、龍友さんの微笑んだ顔が見える。それを合図に音楽がなり初め、私は歌い出した。私の歌とお客さんが一体となっている気がする。とても幸せだった。
全部の曲を歌い終わり、汗だくになった自分の体に、達成感を感じる。
キラキラ輝くステージを見て、私は心を奪われた。この景色を見させてくれたのも、私の才能を開花させてくれたのも、私に夢を教えてくれたのも、全部全部龍友さんだった。龍友さんと出会ったあの日から、私は変わった。楽しいことは楽しいと、嬉しいことは嬉しいと感じることができた。生きる希望をくれたんだ。そんな気持ちを乗せて、私はマイクに言葉をのせる。
「今日は、来てくれてありがとうございます。少し、聞いて欲しい歌があります。私自身で、作曲、作詞した歌です。初めて披露するので、緊張しますが、聞いてください」
私はギターを鳴らす。龍友さんも聞いたことがない、初めて作った歌を歌う。
ステージ袖を見ると、龍友さんが驚いた顔でこちらを見ている。私はにこりと笑い、歌い出した。
♪ 『出会わなければよかったのでしょうか?
恋をしなければよかったのでしょうか?
もうあなたの隣で歩けない
だからあなたの笑顔はもう見れない
時を何度でももどして
何度でもあなたといられたら
こんなに辛い思いをしなくて良かったでしょう
黒い羽が二人を引き寄せ、恋に落とさせた
白い羽が歌を奏で、二人を引き離した
私はあなたを幸せにする
だからあなたは幸せでいて
これができないなら本当あなたは馬鹿ね
出会わなければよかったは間違ってて
恋をしなければよかったはもっと間違ってる
こんなに甘くない世界でも
ごめんね、あなたに生きていてほしい
そしたら私は幸せなの
時を戻せば、なんて思いながら
私は生まれ変わる
ここまで辛い思いをしたのはあなたのせいじゃない
黒い羽が二人を引き寄せ、運命をくるわせた
白い羽が歌を唄い、二人を成長させた
あなたは何も知らないでいて
私があなたを支えるから
『私たち二人が恋に落ちる前に戻りたい』
知ってるよ
どうにもならないことも
でもあなたと離れることができなかったの
またいつか黒い羽で出会って白い羽で歌いましょう
明けない夜はなく、世界は明るいと教えてくれたこと
私の手を引いてくれたこと
私はわすれないよ
あなたをわすれないよ
私が生まれ変われたら
あなたを助ける天使になるね
あなたが好きよ』♪
歌う途中で、自分の気持ちが溢れ出しては涙が止まらない。龍友さんが大好きで、言葉にできないくらい大好きでたまらなかった。こんなにも人に夢中になったことは初めだった。ありがとうの5文字じゃ足りないくらい、龍友さんには感謝をしている。
龍友さん、本当にありがとうございます。龍友さんが大好きです。幸せになってください。
LIVEが終わった後、すぐに私はいつもの場所へと向かった。
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