第五章 黒い羽の決意の歌声
LIVE前日の日。空も赤くなってきた頃、いつもの屋上でギターを鳴らしていた。作曲や作詞は難しくて、龍友さんはこんなすごいことをしてたのかと、改めて感心した。そんなことを考えていると、龍友さんからの着信があった。
「もしもし」
「レイナさん、突然ごめんね!少し公園で話せる時間ない?」
といつも通りの温かみのある声で、龍友さんは電話越しで言った。
「ありますよ!すぐ向かいます」
私は屋上から飛び出して、いつもの噴水のある場所へと向かった。私たちが出会った場所、支えあった場所、特別な場所だ。
公園へ着くと、龍友さんは噴水の前のベンチに座っていた。私と目が合ってすぐに、私の元へ走ってきた。
「お待たせしました。遅かったですか?」
と息が荒いまま話すと、龍友さんは優しく明るい笑顔で「全然。来てくれてありがとう」と言った。その笑顔が、眩しかった。
「急にどうしたんですか?」
「…明日何の日かわかる?」
「LIVEの日でもあって…お別れの、日です」
私は怖さのあまり、龍友さんから目を逸らした。
「そう。だから、少しレイナさんと話したくて!最後の思い出作りに」
龍友さんはまた明るい笑顔を私に見せた。
「…最後に、私の夢を伝えてもいいですか?」
「夢?なになに?」
「人に不幸を与える死神じゃなくて、人に幸せを与える天使になることです」
「天使?」
「はい、与え方は歌を歌ったり、作曲をしたりすることかなって思うんです。天使になって、龍友さんからたくさんの幸せをもらったみたいに、私も幸せをあげたいんです!」
「僕が幸せ?それは本当?」
「はい、そうです!」
「そんな嬉しいことを、、嬉しいな!でも、そう言ったら、レイナさんも僕にたくさんの幸せをくれたよ。数えきれないぐらいたくさんの」
「私がですか?」
「もちろん」
「そんな嬉しいです。私が龍友さんに幸せなんて、、」
私は嬉しくなって、少し微笑む。
「龍友さんと過ごす日々は、私にとって嬉しいことの連続でした。本当にありがとうございます。龍友さんに出会えてよかったです」
今までにないくらい、思いっきり笑ってみる。初めて心の底から笑った気がした。
「…充分レイナさんは天使だよ。その笑顔は、たくさんの人に幸せを届ける。レイナさんの笑顔が大好きです」
「大好き」という不意打ちの言葉に、私は言葉が出ない。
「レイナさんに出会えてよかった。これからも、たくさん笑ってね」
「私も大好きです。どうか私のことを忘れないでください」
「もちろん」
と2人で指切りをした。
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