第一章 黒い羽との出会い

「かんぱーい」という合図と共にビールを一気に流し込む。僕は仕事が終わった後、長年の友達である、斎藤涼太と飲みに行っていた。


「龍友いい飲みっぷりだね。仕事上手くいってんの?」


「全然。この仕事始めてからヒット作が一度もないから焦ってんだよ。」


「そんなもんだよ」と相槌を打ちながら笑う涼太。僕と涼太の関係は15歳の時、約10年前から続いている。こいつは頭はいいが、運動ができない間抜けなやつ。逆に僕は頭は悪いが、運動だけはできる、いわゆるモテ男だったりする。お互いできないものは補っていく最高なコンビだと僕は勝手に思ってる。


「涼太の仕事はどうなんだよ」


「俺?結構いい感じ!」


と嬉しそうに話す涼太は、頭のよさを活かして、雑誌編集の仕事についている。


「そうか、羨ましいよ」


えへへと気持ち悪い笑みを浮かべる涼太。それに嫉妬してしまう自分がいることにイライラしてしまい、ビールをゴクゴクと飲み干した。


「よく飲むね。よっぽど溜まってんだ」


「うるさいな」


「あ、それより聞いて欲しいことがあって。龍友は、人が死ぬことをどう思う?」


「え?どういうこと?」


「あー聞き方が悪かった。えっと、人が死ぬって老いてしまったからか、病気とか事故とかじゃん。でもそれが、とある人物によって死ぬタイミングが左右されてる、とかだったら、怖くない?」


また涼太が編集している雑誌のテーマになる話なのだろう。そういう話に限って、涼太は目をキラキラ輝かせて僕を見てくるから。


「怖いっていっても、どうせ神様とかだろ?運命なんだから怖くねぇよ」


「普通はそう考えるよねー。」


「なんだよ」


「知りたい?知りたいよねー。」


「早く言えよ」


中々答えを言わずにたぶらかす涼太に、僕はイライラしていく。そしてまたビールをゴクゴクと飲む。


「わかったよ。その人物の名前は…

“死神”だよ」


「あ、死神?」


そんなに溜めておいて、口から出たのが死神という非現実的なため僕は驚く。


「そう、最初聞いた時は俺もびっくりしたさ。死神なんて空想だと思うだろ?だからお寺に行ったり、死神の被害ていうか、会ったことあるみたいな人に話を聞きにいったんだよ。」


「そしたらどうだったんだよ」


「死神は、絶対いるよ、確信した」


「そうか、よかったな」


「えー信じないのかよ」


「僕は確信ができませんでした」


「龍友ー。あ、死神に会ったら、まず俺に相談しろよ。なんでも知ってるから」


「気が向いたらな」


そしてまたビールをゴクゴクと飲む。

それからは、日頃の愚痴を話しては、学生の頃よく遊んだ懐かしい話などたくさん話した。涼太と話すと胸の中のモヤモヤが晴れた気がする。

ビールも4杯目を飲み終えた頃、時間も23時を回っていて、飲み屋を出る。

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