四神鏡伝~厄災前夜~

長月そら葉

序 四神が住まう国

 ――もとという国がある。


 南北に長く、東西には島々を配し、緑と水の豊かな美しい国だ。

 この国は『四神しじん』と呼ばれる四柱の神々に愛され、見守られていた。その神々の名は、青龍せいりゅう朱雀すざく白虎びゃっこ玄武げんぶという。

 神々は日ノ本に暮らす四つの家を己を祀らせる家と定め、それぞれの当主に自分の依り代となる『鏡』を渡した。特別な神器と共に。


 四家は現在、帝直轄の特別な家としてお目通りを許され、都の東西南北を守るように邸を構えている。


 東の春家しゅんけとも呼ばれる、千東ちはる家。

 南の夏家かけとも呼ばれる、南原みなみはら家。

 西の秋家しゅうけとも呼ばれる、西國にしくに家。

 北の冬家とうけとも呼ばれる、遠北とおきた家。


 四つの家と帝がいる限り、この国は安泰だと誰もが思っていた。


 しかしある時、夏家と冬家からそれぞれ朱雀と玄武の依り代となっている鏡が奪われるという事件が発生する。

 鏡があるべき場所から失われ、日ノ本では四季が崩れた。夏が来ず、冬もない。作物は育たず、人々は実りを得られずに困り果てた。


 事態を重く見た帝を始めとした朝廷は、鏡を取り戻すために武士などを集めて犯人を捜すが見付からない。運よく見付かっても、偽物を掴まされた。

 そのため、一計が案じられる。


「四家の若い者たちを集めよ。彼らに鏡を探させるのだ」


 帝の一声で、各家から一人ずつ集められる。

 四人の若者を前にして、帝は命じた。――四神より賜わりし鏡を取り戻せ、と。


 これは生まれも育ちも性格も違う四人が紡ぐ、四神を巡る戦いの物語である。

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