ハルトとサクラ
人間最後の生き残りの意識ハルトとサクラ・・
局長さんはこの2人に最高級のボデイを買って上げた。そればかりか私たちと同じマンションの最上階に部屋も用意したのだ。それにはハルトさんとサクラさんも大変感謝し恐縮している。ここまでするとは、いったい局長さんはプルトニウムで幾ら稼いだのだろう。
「私たちは最後の生き残りになってしまいました。」とサクラさんが話した。
「核戦争が始まった時、人類の絶滅は想定内でしたが、私たち2人が最後になったのです。どうせ死ぬのならせめて意識だけでも残そうと思ったのですが、その頃にはハルトの様態がかなり悪く、いつ死んでもおかしくない所まで来ていたのです。私は最後の望みをかけて彼の意識をデジタル化したのです。それをチップにインストールして水晶でコーテイングしました。その後すぐに彼は亡くなったんです。」
「あなたが人類最後の人になったのですね。それは孤独だった事でしょうね。」
「一人になった私は自分の意識をチップに入れ水晶でコーテイングしなければ、未来に彼と合えません。しかし私も体調が悪く体力と時間の戦いでした。ふらふらになりながら何とか自分のチップを完成し、ヘルメットを彼にかぶせ私も装着したのです。未来で誰かが気が付いてくれる確証は0に近い事は分かっていましたが、ほかに方法が無いのなら、どんな可能性の低い方法でも最善の方法なのだと考えました。」
そうサクラさんが説明するとハルトさんが
「私は自分の意識を保つのが精いっぱいの状態で、サクラの考えていることは理解できませんでした。人類の滅んだあと誰が私たちの意識に気が付くでしょうか、気が付いたとしても復元など出来るはずもありません。可能性など無いと考えていたんです。」
その話を聞くと局長さんがヘルメットを見つけた経過やタイタンでの話など時系列で詳しく説明した。そして私が説明を補足した。
「今の地球は放射能が残っていますが、アンドロイドはボデイが影響を受けないので心配はいりません。それと、ソフトウェアを同期させると動物のセックスと同じなので試してみてください。ポート全開とセキュリティをoffで簡単に出来ますよ。」
それを聞いてサクラさんが、「出来るんですか?」と驚いている。
「高級機種だと出来るんです。私たちもよくするんですよ。ねえ局長さん。」
と局長さんを見る。
「アンドロイドも高級だと人類と大差はないのかと思いますよ。感情的には少し違いますけどね、アンドロイドは激高したり切れたりはしませんから。」と局長さんが少し人間を見下したように言うと、それに答えてハルトさんが、
「確かにそうですね、それが私たちの欠点で、感情に論理が支配され何が正しいのかさえ見えなくなるのです。それで人類は滅んだのですから。」と言う。
するとサクラさんが
「自分の見栄やプライドや欲を制御できないのです。特に男は勝った負けただけにこだわり世界の破滅まで戦うのですから、それがオスの本能なのですよ。」
「オスの本能なのですか?」と私が聞くと。
「そう、下等なオスの本能なんです。だからオスは競うのです。見苦しいぐらいにね。アンドロイドから見れば異常な心理ですよね。」とサクラさんが答えた。
局長さんも興味を持って
「そうなると正義や論理は関係ないのですね。それじゃあ本能を制御しないと平和に暮らせないという事ですか。」
「そうです。本能を正義や論理にすり替えて憎み合うのですから手に負えません。これはもう下等動物と言ってよいでしょうね。」とサクラさんが言う。
「メスのカブトムシと比べるとオスの角が意味もなくでかくなるでしょう、あれと同じです。角の大きさに正義や論理なんて関係ないでしょう?」
カブトムシとは驚いた。最終戦争の後に一番たくさん生き残ったのは昆虫だったからだ。ほとんどの哺乳類は絶滅し小型のネズミだけが動物園で暮らしているし鳥類は全滅した。植物は近年にになってほぼ回復したと考えられている。
「オスの本能に正義も糞も無いよなあ・・」と局長さんが言うと、皆が笑い出した。私は思った、カブトムシは本能の為に殺し合いはしない・・まして戦争で絶滅など・・人間はオスの本能が壊れていたのかも知れない・・
そう思うと、人間のオスの本能と言う得体の知れないものに恐ろしさを感じた。
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ゲームをしたことがありますか?
オスは銃を乱射し、破壊する事に熱中しますよね。
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