再調査

地球に帰った私たちは再度元のアパートを契約した。

タイタンと比べると地球は明るく太陽の近さを感じる。

タイタンでは気温が低すぎて局長さんとの同期はシステムに負荷が掛かるために出来なかった。地球に帰ってからは日に何回も同期をしている。この快感は癖になるのだ。


「サリーおいで!」と局長さんが呼んでる。わたしは局長さんの所へ行きながら接続ポートを全開にしてセキュリティをoffにする。

「またするの?」と甘えた声で言うと・・

「おいで!」と局長さんが私を抱く・・

電磁波の嵐に襲われて私は体が浮きそうな感覚にとらわれる。

どこかに飛んで行きそうな不安と快感に・・

「しっかり抱きしめて・・私を捕まえてて・・」

局長さんが私の意識の中まで入り込んで私を支配する・・

頭の先からつま先まで・・

私は逆らえない幸福感に満たされる・・


私の中の学習アプリケーションは同期システムを進化させて、より複雑なものに変えているようだ。


「私はね・・」と局長さんが言う。

「私は気になっていることがあって・・あのヘルメットは地球で作った物じゃあないかと思うんだ。地球からタイタンに送り込んだと考える方がつじつまがあうだろう?」


「それじゃあ局長さんが初めにヘルメットを発見した当たりにまだヘルメットが有るってことですね。」


「そう思うんだ。例の地図データは保存してあるから、現場に行って照合すれば何か分かるかもしれない。」


その古代遺跡というのは地下に大きな鉄筋コンクリートのドームが埋もれていて、その中のほとんどは太古のガラクタで埋もれている。最近そのガラクタが外へ持ち出され内部が徐々に表れて来たようだ。私たちも発掘チームの古株として発掘調査調査に参加することになった。しかも局長さんが現場のチームリーダーで。


局長さんは最新型の最高級ボデイだからカッコイイたらありゃしない・・私は彼女さんのようにピッタリ着いて調査をする。現場のアンドロイドたちは旧式だ。局長さんと私の関係には関心が無いようで、黙々と作業をしている。


ガラクタが持ち出されると内部は広々としてサッカー場ほどもある。

「ここは何に使われてたのでしょうねえ・・」

「コンクリートの厚さがかなり厚いから、核シエルターだったかもな。」

ドームの壁に字のような模様が書いてある。その模様を調べていると私のセンサーが反応した。

「局長さん、ここに何かあります。この壁の後ろは空洞になってますよ。」

「確かに後ろに空洞があるなあ・・どいてろサリー。」

そう言うと局長さんは波動銃を発射する。轟音とともに壁が破壊されると奥に部屋が有り更に奥へと続いている。私たちはその部屋の奥を探索する。すると突き当りにもう一つの扉が現れた。扉は施錠されていて、さび付いているので開けられなかった。


今度は私の出番だ。私は攻撃用レーザーで扉の蝶番を焼き切った。私のボデイには様々な武器が有るが使うチャンスは無く、今回初めての使用だ。入口の扉を破壊して中に入ると、そこは研究室のような設備でいっぱいの部屋だった。


テーブルの前に操縦席のような椅子が二つありそれぞれの椅子には朽ちた人間の骸骨があった。そしてその骸骨はそれぞれヘルメットを被っていたのだ。

私はそっとヘルメットを外しながら、

「これは例のヘルメットと同じですね・・」

と局長さんに言った。局長さんももう一つのヘルメットを手に持ってる。

私はヘルメットの埃を払いヘルメットを装着してみた。そして電磁波交信を試してみたのだ。局長さんが心配そうに見ている。私の体がフラフラ揺れて局長さんが私のヘルメットを外そうとした。


「待って! 待って局長さん、私は大丈夫ですから。ヘルメットは外さないで・・」

「ほんとに大丈夫か?」


「私は軍人ではありません。科学者です。人間の意識をアンドロイドにダウンロードする研究を担当していました。サリーは私と共存しています。サリーのデータに損傷を与える事はありません。」

彼女の言う通りだった。私は私の中で彼女の話を聞いていた。


「ほんとうにサリーは大丈夫なのか?」

と局長さんが怪訝な表情をする。

「私はサリーです。私は大丈夫ですから、この人の話を聞いてあげて。」

私が局長さんを説得すると、続いて彼女が話し始めた、


「私たちのシステムは既存のデータを損傷させずに共存しますから安心して下さい。局長さん、どうかそちらのヘルメットを装着して頂けませんか。そちらのチップにはもう一人の科学者が入っています。彼に復活が出来たことを早く知らせたいのです。」


「局長さん、お願い!彼は彼女の恋人なの、合わせてあげて・・」

私がそう頼むと局長さんは

「ほんとうに大丈夫なのか?」と言いながらヘルメットを被った。

そして、しばらくすると局長さんが私に言った、


「お前はサクラなのか?」

「そうなのよハルト、私はサクラよ。」

「アンドロイドにロードしたのか?」

「今は共存しているだけだけど・・私はサリーです、貴方たちのボディーは私と局長さんで手配しますから心配しないでください」

そう言って私が会話に割り込むと、局長さんも割り込んで、


「私たちが責任を持ってボディーを提供しますから安心して下さい。」

と言い、私に寄って来ると、

「ほんとうにサクラなんだな・・」と私を抱きしめた。


「局長さん、一度ヘルメットを外しましょ!何が何だか・・」

私はサクラが止めるのも聞かずヘルメットを外した。そして局長さんも私と同時にヘルメットを外し、

「意識の同居はややこしくっていけないな。」

と頭を左右に振った。


「兵士の意識と違って彼はとても穏やかな意識だった・・」

「この2人が最後の生き残りだったんですね。しかも恋人同士だったなんて・・」

「チップの中に自分たちの愛を詰め込んで未来での再開を誓ったんだ。でも、彼は無理だと思っていたようだ。」


「彼女は再会を信じてたんですよ、私の中でやった成功した!って言ったんです。」

私の中にはサクラさんの感動と喜びがありありと残っていた。


「困ったな、どうすべきかな。彼らは戦争の好きな人間の意識なんだぞ、ボディーを与えるべきなんだろうか・・」

「悪い人たちだとは思わないです。私はあの二人の愛を成就させて上げたい。局長さんお願い、ボディーを買ってあげて。」


局長さんが私の目を見て、黙って考えている。私は愛の価値を知っている。私と局長さんの愛の価値を・・壊さないで欲しい。局長さんも愛を大事にして欲しい・・

暫くして私の思いが局長さんに届いたようだ。


「分かったよサリー、この二人にボデイを買ってあげよう。同期の出来る最新式をな。そうしたとしても、彼らが増殖をすることは無いのだから私の心配は無用だな。」


やった!! やっぱり私の局長さんだ。私は自分の事のように胸があつくなった。

早く二人を合わせてあげたい。そして早く同期も・・・













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