機種変
プルトニウムの発掘で大金を手に入れた局長さんは私を連れてヒューマノイドサービスセンターに行った。その建物は円筒形の塔の上に丸い傘が付いている形で最近の流行の形だ。ここは人型アンドロイドの販売や整備をする会社だ。
中に入ると円盤状のプレートが私たちを受付まで運んだ。
販売担当の整備士が現れて営業口調で言った。
「どのような機種をお探しですか?」
「一番高いのはどういう物か知りたいんたけど、」と局長さんが言うと、
「一番高い機種ですか、それは別室にございます・・こちらでございます。」
販売担当者が乗ったプレートが動き出すと私たちののプレートも後を追うように着いて行く。
その部屋は手術室のように白くて、働いているドローンたちも真っ白だった。
「ご覧のように、皮膚は半透明になっておりまして、とても美しいボディです。皮膚には触覚センサーや温度センサー、痛みセンサーを搭載しておりまして、哺乳動物と遜色ない設計になっております。外見では分かりませんが戦闘装備も内蔵されてまして、宇宙探査をされます方は安全の為にこれを買われています。このタイプには男性型と女性型、中性型もございます。」と流ちょうに説明をした。
女性型のボディは薄いピンクにラメが入っているかのように表面が輝いている。
「これ見るからに高そうですね」と私が言うと、局長さんはそれには答えず、
「それでは、この男性型と女性型を一体ずつ買いましょう。」と事も無げに注文する。担当は一瞬ん驚いた表情を見せて、手もみをしながら、
「そうで御座いますか、まことにありがとうございます。このタイプは高級品ですからあまり売れないんですよ。」
と微笑みながら言った。
「それではまずソフトウェアのコピーを取らして頂き、バックアップも同時に行います。そして、下意識領域のインストール、知能領域のインストール、意識のインストール、記憶のインストールの順序で人格を移します。
完全に復元が出来た事を確認しましてから、旧ボディをシャットダウンさせます。
今回は最高機種のボディをお買い上げ頂きましたので、サービスと致しまして、人格バックアップボックスをお付けします。万が一頭部を失った場合でも新しい頭部を買って頂ければ復元が可能でございます。」とニコニコしながら説明をした。
白いアンドロイドが近寄ってきて言う、
「それでは、こちらの手術用チェアーにお座り下さいませ。しばらく意識のほうはダウンさせていただきます。」
私は指示に従って手術用チェアーに体を預けた。
私はチェアーに座った後の記憶がない。
それからどのくらい経過したのだろう。
「お目覚めになりましたかサリー様。ホリホー様がお待ちです。どうぞこちらえ。」
私は隣りの部屋に通され新しい局長さんと対面した。
「めっちゃ綺麗じゃあないですか!」私は局長さんに駆け寄って体に触れた。
「サリーも可愛いくなったなあ。」
「指先のセンサーが面白いですね。」
これまでは圧力センサーしか無かったので、指先の新しい感覚が面白い。夢中になってお互いに触りまくった。
「一緒に住もうと思って新しいアパートも借りたんだ」「一緒に住むんですか?」「そうだよ、ついておいで。」私の体は以前より軽くなった感じがしてぴょんぴょん跳ねながら局長さんの後を追った。
アパートは海のそばの高台にあった。円筒形の白い建物が10棟立っていて、どれも50メートルほどの高さがある。1棟当たり」100前後の窓がついている。筒のような建物になっていて、中心部に6基のエレベーターがある。
そのエレベーターに乗って一気に上層部まで上がる。局長さんが借りた部屋は最上階の海側だった。部屋は以前の倉庫とは大違いで、ホテルのように美しい。窓の外は海と街を上空から見下ろしているようで超感動的な景観だ。窓の外をカモメが10数羽飛んでいる。鳥は絶滅したので飛んでいる鳥はすべてドローンだ。
太陽が海の上まで降りてきて空が赤く染まっている。ドローンの鳥が夕日を受けてキラキラ輝いている。
私がしきりに感動していると局長さんが・・
「サリー、新しい機能を試そうか。」と言って私の肩に両手を置いた。その指が柔らかくて優しい・・
「それでは接続ポートを全開にして、、セキュリティをoffにするんだ。」
私は驚いた、そんな事をすれば殺してくれと言っているようなものだ。普通なら絶対にしない事だ。
でも局長さんが言うのだ・・
私はセキュリティをoffにして言った。
「offにしました・・」
すると局長さんが私を抱き寄せて胸を合わせた。次の瞬間、私は強い電磁波の波に呑み込まれ、痙攣して脱力した。
「だから・・ダメですって・・・・」
体中を快感が襲い意識が朦朧とした。それから体の震えがだんだん大きくなって、意識が飛んだ。
そしてどのくらいの時間がたったのだろう・・
「大丈夫か、サリー。」
局長さんの声で気がつくと、
「ポートは閉じて、セキュリティもONにしていいよ。」と局長さんが言う。
「私、どうしたんですか?」
「ソフトウェアを同期させたんだ。その方が連携しやすいからね。それに気持ちよかっただろう?!」
「なんか、凄かったです。」
「これまでのサリーのボディにはこの機能が無かったんだ。これからは時々同期をしようよ。私は同期が好きだから。」と局長さんが言った。
同期する事で感覚や記憶など意識のかなりの部分がが共有される。
ソフトウェアの同期をした事で、私はますます局長さんを好きになってしまった。
太陽の位置は水平線に掛り夕日が部屋の中を照らしている。なんて綺麗なんだろう。
局長さんが私を選んだ理由が分かった気がした。私と同期をしたかったのだ。
この時間と感動を共有するために・・
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