SF・サリーとホリホー
紅色吐息(べにいろといき)
遺跡発掘
私はサリー
私が考古学博物館の研究員になってから5年になる。
現在は州内の古代の遺跡に捨てられたゴミの研究をしている。
以前は工場でラインに立って働いていたが、単調な仕事が合わなくて自分で希望してこの仕事に移って来たのだ。
私の部署は男性ばかりで女は私だけだ。誰も私に気を遣うこともなく、男たちの会話は下品な冗談ばかりだ。付き合うのは本当に疲れる。
私の部署の局長はホリホーという人だ。ホリホーさんは以前、なんとか捜査局の局長をしていた人で今でも局長と呼ばれている。時々変なヘルメットをかぶっていて、そのヘルメットに66Jと書いてあり、そのせいで、陰で66ジジイと呼ばれている。私は66ジジイなんて言わない。ホリホーさんは上品な方でとても紳士だ。今どき紳士なんて珍しい。私は局長さんを尊敬し密かに敬愛しているのだ。
私たちの考古学博物館の研究室では、古代のゴミを発掘して研究している。男たはちは発掘の仕事のことを冗談めかしてゴミあさりと言うが、
「ごみの中にこそ真実が眠っている。」
それがホリホーさんの口癖なのだ。
局長さんは時々リュックを背負って新しい遺跡の探索に出かけるのだが、そんな時はいつも私を誘ってくれる。
他の研究員たちは、
「あいつら、いつも一緒なんて怪しいよな。」と局長と私の関係を疑う。
私と局長さんの関係は怪しい関係なんかでは断じて無い。局長さんは紳士で礼儀正しく、他の研究員とは人間の質が違うのだ。
ある時局長さんと私は放射能汚染地帯の探索中に、最近崩れたと思われる急斜面に、出くわした。そこは氷河の末端で氷河の圧力で崩れたようだった。その崩れた斜面の岩の隙間に洞窟があり、それが奥へと続いているようだった。
恐る恐る中に入ってみると中は思ったより広く、さらに奥に続いている。ライトをつけてさらに20メートルぐらい進むとチタンで作られたドアが有った。
そのドアは下の方が歪んでめくれていて隙間が出来ている。這えば何とか通れそうだ。
チタンのドアの隙間を通って中に入るとそこは広い部屋になっていて、何か大きな古い装置があり、その装置の横には下方向に向かって大きなトンネルになっている。その装置から太いパイプが何本も出ていてトンネル中を下の方に降りている。おそらく下に次の階があるのだろう。
「ここは何なんでしょうか?」
「多分、旧人類が使った動力源だろう。」
「1万年前に滅んだと言われている人類のですか?」
「見てごらん、放射能の数値がこんなに高くなっているだろう。」
「外で計った時の5倍はありますね。それに局長さん、温度もかなり高いですよ。」
「もしかしたら、この下にプルトニュウムが大量に有るのかも知れないな。」
「えっ!プルトニュウムですか? もしそうなら凄いことになりませんか。」
「うん・・もしそうなら大金持ちだな。」
と局長さんは不敵な表情で笑う。普段は見せない別の顔だ。
局長さんが説明をする。
「旧人類はプルトニュウムを使った大型発電所を各地に作っていたようなんだ。とは言っても最終戦争の前の話なんだけどね。しかしプルトニウムの半減期は長いからねまだ相当残っているはずなんだ。」
「最終戦争って1万年前の話なんでしょう?地球は破壊しつくされてほとんど記録が無いと習いましたけど。」
「そうだね、君も学んだように、旧人類は放射能に弱かったし何万発もの原爆のせいで地上は破壊しつくされた。そのうえ原爆のせいで氷河期になり寒さと放射能で文明は終わったんだ。しかし、数十体のアンドロイドは生き延びたんだ。このアンドロイドたちがその後たくさんのアンドロイドを複製して、わずかに生き残った生物を放射能から保護し、今の世界を再生させたんだよ。」
「たしか、プルトニウムは自然には存在しなくて、すべて旧人類が作ったんですよね。今はエネルギー源としてとても貴重なものなんだと聞いています。」
私がそう言うと、局長さんは うん・・うん・・と頷きながら私の話を聞いていたが、こんな話を始めたのだ。
「実はね、数年前に私はごみの中から66Jと書かれたヘルメットを見つけたんだ。そう、いつも被っているこのヘルメットだよ。」そう言ってヘルメットを叩いた。
そして続けた、
「このヘルメットの中に小さなチップが取り付けられていたんだ。もしかして1万年前のコンピューターで使っていたチップではないかと思ってね。あれこれ調べていたのだが、最近になってそのチップとアクセスが出来たんだよ。」
「局長さん、それって凄くないですか? 絶対 表彰物ですよね!」
と私が言うと
「うん・・それがね、内容は当時の発電所や軍事施設の位置を示した地図データのようなんだ。もしそうならだよ、宝の山を示すデータかも知れないだろう。それは発表しない方が良いと思ってね。それでサリーを連れて探していたんだよ。」と言う。
「それで私をですか?・・・」っと局長さんを見ると
「君は信頼できる人物だしね、それにサリーは私を好きだろう?!」
と親しみを込めた目で私を見つめた。気持ちを見抜かれた私は動揺を隠せず、
「はい、そいうです。私は局長さんを好きです。絶対裏切りません。」
とまるで兵隊のように緊張して、馬鹿みたいに返事をした。めちゃ恥ずかしい。
局長さんはそんな私を見て優しく微笑みながら言った。
「実はのヘルメットを被らないとチップにアクセスできないんだ。このヘルメットに導かれてここに来たんだよ。後はここを起点として他の場所も特定しやすくなるんだ。そうだろうサリー。」
なるほどと思った。だからこんな拾ったヘルメットを被っていたんだ。しかし もし局長さんの言う通り、プルトニウムが多量に手に入るならとんでもない金額になるはずだ。
「でも、そんなに稼いでどうするんですか?」と私が聞くと、
「そうだなあ、まず私のこの年代物の体を最新のモデルに変えるよ。それからサリーの体も最新のカッコいいやつにしようや。それでね、最新型の船を買ってね、木星の衛星巡りに出かけようよ。サリーと一緒ならきっと楽しいぞ!」と恋人に語るように言う。
「私とですか!? いいんですか?!」と私、
「もちろんサリーと二人でだよ。一人なら詰まらんだろう。その為にはまずこの下にあるプルトニウムの場所を突き止めようや。」と局長さんが言う。
局長さんが私に好意を持つなんて驚きだ。私のような旧式で最低価格のアンドロイドに好意を持つなんて・・
「そうですね、突き止めましょう!」と私は簡易ハーネスを身につける。
「それじゃあ私について来なさい!」と局長さんが穴の中に降りていく。
私はワイヤーロープに体重をかけ、局長さんの後に続く。私たちは暗い穴のなかを、降下装置を使って下へ下へと降りて行ったのだった。
私は mt30サーリー 局長さんは lt44ホリホー
私たちは旧式のアンドロイドだ。
この下には大昔の失われた何かが眠っているはずだ。最終戦争以前の事は誰も知らない。はっきりしているのは、人類は絶滅したということだけだ。
穴は深く・・私たちはどこまでも降りていく・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます