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「お前何言ってんだ。綿飴なんか食いたくねーし。てか、それ原宿だから」
「あっ……そうなんだ。じゃあ、原宿行く?」
「あのさ、お前俺より年下のくせに、なんか喋ってる内容がだっせぇんだけど。あんなとこに住んでるからじゃねぇの」
あんな所というのは、僕たちが住んでいる場所を指しているのだろう。確かに都内に比べたら圧倒的に田舎だし、商業施設も少ない。
車窓を流れる景色も、建物ではなく田畑が目立つような所だ。
だけど今は、それが問題ではなかった。それよりも僕は、彼より年下だと思われていたことに羞恥心を覚えていた。
「……こう見えて二十歳過ぎてるんだけど」
彼の目が見開かれ、視線が僕を頭のてっぺんからつま先まで行ったり来たりした。
「嘘だろう……とても成人しているようには見えねぇけど」
だからこそ、少年や少女たちの担当を任されているのだと、口にはしなかった。歳が近い方が親近感が湧くだろうということからだったけれど、僕からしてみれば、ただただ恥ずかしいだけだった。
「酒とか煙草とか、年確されんじゃねぇ? 俺ですらないのに」
さらりと言った台詞に、今度は僕が目を大きくした。
「ちょっと待って、君は未成年なんだから駄目でしょ」
「……別に良いだろう。あんな田舎じゃあ、煙草か酒か女ぐらいしか、楽しみがねぇんだからさ」
「何だか君の方が、おっさんみたいなこと言ってる様に思えるんだけど」
僕の言葉が気に食わなかったのか、ギロッと睨まれる。
「とにかくさ、分かってるだろうけど、時間は無限じゃないんだ。同じ所をぐるぐる回っていてもしょうがないんだよ。前に進まないと」
「親やセンセーみたいなこと、言うんだな。なんか、お前が言うと中学生に言われてるみたいで、余計腹立つ」
「中学生はスーツなんか着ないよ。そんなことより、みんな君を心配して言ってるんだよ。僕だってそう。それに君をちゃんと送り届けるのが、僕の仕事でもあり、自分に課せられた使命でもあると思っているんだ」
「ご苦労なことだな」
鼻白む彼に僕は、どうしたものかと頭を悩ませる。
本当だったら、彼の気持ちも考えて穏便に済ませたい。だけど、彼は同情したり親を持ち出しても余計に反抗するばかりだ。それならば、多少の残酷さも必要なようにも思えた。
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