第3話

☆☆☆


夕飯を食べて家族団らんをして、さぁ、明日も早いからもう寝ましょうと言われて自室へ入る。



しかしそう簡単に眠れるものではなくて、私はベッドの中で何度も寝返りを打った。



目を閉じるといろいろなことが思い出されて逆に落ち着かなくなってくるのだ。



何度目かの寝返りを打ったあとスマホで時間を確認してみると夜中の2時が近い次官になっていた。



もうそんな時間かとため息を吐き出して、外に続いている雨音を聞いていると、それが不意に途切れたことに気がついた。



本当に唐突に、ピタリと止まった音に戸惑い私は部屋の電気をつけてベッドから降りた。



1階で眠っている両親を起こさないようにそっと足音を殺して窓辺へ近づく。



レースのカーテンを開くと目の前に闇が広がっていた。



星の光も街灯の明かりもなにもない真っ暗闇。



私は一瞬息を飲んで後ずさりし、そしてまたゆっくりと窓に近づいた。



窓の外には街の景色が広がっていて、街灯で少しはその光景が見えるはずだ。



だけど今日はどの街灯も消えているようで、なにも見えない闇がただひたすらに広がっている。



その闇を見ていると奥の方からとても大きな怪獣がキバをむき出しにして、両目を光らせながら歩いてくるような気がして、上空へと視線を移動させた。



空にも星はひとつもみえなかったが、これはおかしなことではなかった。



なにせついさっきまで大雨が降っていたのだ。



空は真っ暗で雨ばかりがおりてきていることはわかっていた。



だけど今その雨はピタリとやんで闇だけが広がっている。



「どうなってるの?」



いつもの様子とは違って、私は自分の体を抱きしめて身震いをした。



なんだか少し嫌な感じがする。



早くベッドへ戻って眠ってしまったほうがいいという気もする。



だけど視線は暗い夜空に固定されたままで、なかなかベッドへ戻ることができなかった。



そのときだった。



真っ黒な夜空の中に、ひときわ黒い点が見えた。



私は目を凝らしてそれを見つめる。



あれはなんだろう?



そう思っている間に黒い画用紙の一点だけを更に黒く塗りつぶしたようなソレが、どんどん近づいてきていることに気がついた。



「星?」



近づくにつれてソレが黒く輝き、流れていることがわかってきた。



流れ星?



それにしてはやけに遅い速度だ。



一体なんだろう?



更に目を凝らしてソレを見ていたとき、不意に流れ星なら願い事をかけないといけないという考えた浮かんできた。



みんな知っている願いのかけ方。



流れ星が落ちるまでに同じ願いを3度唱えること。



黒いソレが流れ星なのかどうかはわからない。



だけどこれだけゆっくり流れているから、願いことをかけるチャンスだと思った。



私はクリスチャンのように両手を胸の前でくみ、黒い星を見上げた。



「あいつらに復讐できますように、あいつらに復讐できますように、あいつらに復讐できますように」



少し長い文章だったけれど、十分に唱えるだけの時間があった。



そして黒い星はゆっくりと夜空の彼方へ消えていったのだった。

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