第10話

ニーニはハナのいた病院に辿り着く!

そして何名かの人間たちが外で集まっているところを目にする!

人間たちは喪服を着ており、そして棺桶を囲んで立っていた。


ニーニ

「いた…!人間ども!!」


ニーニはその人間たちを皆殺しにしようと腕を尖らせ、突撃する!

ニーニが近づくと、棺桶の中に見覚えのある顔が見える。その顔はハナであった。

ニーニはハナの顔を見ては、足を止める。


ハナは棺桶に入れられ、彼女の顔の周りには花がたくさん置かれていた。

周りにいる人間たちは、ハナの顔を見て、皆泣いている。


そこのには父ダキヤが悔しそうに男涙を流していた。

その姿を見て、ニーニは昨日ハナの死に泣いていた自分を重ねる。

そしてその泣いている姿は先ほどの自分もそうであったことを思い出す。


ニーニ

「うう……」


もどかしい。殺したいのに復讐したいのに手が動かない。

どうして……どうしてそんな顔をする……。

お前らはアニたちを皆殺しにしたのに……。

どうして……


人間が憎い……でもハナの前で……ハナの家族を殺したら……

ハナが……悲しむ……アニを失った僕のように……

ああ……一体どうしたら……どうしたら!


ニーニはもどかしさに耐え切れなくなりその場から逃げ出す!

いろんな思いがニーニの中で駆け巡る。

アニたち仲間たの死、ハナの死、人間への殺意、ハナとの思い出。

様々な感情がニーニの心を蝕んでいく……。


ニーニ

「ぐ……ああ……」

「ああああああ!!」


ニーニは耐え切れず、泣き叫ぶ!

ニーニは足を止め、その場でうずくまる……。


ニーニ

「どうして……どうしてこんなことに……」

「うう……」


「もう……仲間は誰もいない…」

「僕が生きている意味は無いんだ…」

「ここで死んで皆に会いに……」


ニーニは右手を尖らせ、そしてそれを自分の喉につきたてる。

喉を掻っ切って自害しようとしているのだ。


ニーニ

「こんなに苦しいのなら……辛いのなら……生まれて来なければよかった……」

「全て……全て奪われるなら……ここで……」


バサッ……


ニーニの懐からハナの日記が落ちる。

そして開かれたページは……


「生きたい」


ただその一言がそのページに記されていた。

ニーニはその言葉を見ては、体が硬直する。


ハナの闘病の姿がニーニに思い浮かぶ。

何もしていないのに病気にかかり、リハビリを行う毎日…。

死にたいとも思う日もあるけど、それでも最後まで生きようとした。


最後の最後まで……

ただ「生きたい」と……


ニーニは右手を降ろし、そしてその場で泣き崩れる……。


ニーニ

「……」


ニーニは日記を手に取り立ち上がる。


ニーニ

「……まだ……まだ死ねない……」


そして彼は花畑で話し合ったことを思い返す…。

それは二人で夜空を見上げていた時のこと…。


ニーニ

「こう夜空を見ていると本当に世界って広いんだなって思うんだ」

「宇宙から見たら僕たちってほんとうにちっぽけで気づいてくれないんだろうね」


ハナ

「確かにそうかもしれないけど」

「でもきっと宇宙から見た私たちは、この夜空みたいに1つ1つ輝いて見えるかもしれないよ」

「ニーニが言うように私たちはちっぽけな存在だけど一人ひとりこうやって輝いているのかも」


ニーニ

「なるほど……確かにそうかもね」


ハナ

「私ね…。将来医者になりたいんだ」

「困っている人の病気を治すの」

「誰かを救うって素敵なことじゃない?」


ニーニ

「素晴らしいことだよ」

「ハナは偉いね……立派だよ」

「現に僕もハナに助けられたし」

「本当に感謝しかない」


ハナ

「私もニーニに助けられたよ!」

「ニーニと出会わなければ、私ずっと一人だったから……」

「だからニーニも立派なの」


ニーニ

「ハナ……」


ニーニは我に返り、閉じていた目をゆっくりと開ける。


ニーニ

「……」


ニーニはゆっくりと立ち上がり、空を見上げる……。

いつの間にか日は暮れて、月が薄っすらと見えていた。


ニーニ

「僕がここで死んだら……ハナと出会ったことを否定することになる……」


「ああ……そうか」


「ハナ……わかったよ……僕は……」


ニーニは日記を強く握りしめ、しっかりと前へ進む。

一歩一歩山の奥へ進み、やがて姿を消した……。

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孤高のレギオニーニ ふしたくと @hukurai

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