第9話
ニーニは体に傷を負いながらも、何とか逃げ切った。
ニーニは茂みをかき分けて前へ進む。
進んだ先には壁があり、その場で行き止まりであった。
ニーニは壁にもたれかけ、撃たれたところを布で止血を試みる。
彼は発砲されたものの、幸いにも致命傷に至らなかった。
暫らくニーニはその場で安静にすることにした。
月の光が照らされ、あたりは明るい。
ハナが死んだことが信じられず、ニーニは放心状態となっていた。
ニーニは、握っていたハナの日記を開く。
開いたページの文字は歪んでおり、
いかにハナが苦労して書いているか伝わってくる。
「どうして私だけ」
「怖い」
「死にたくない」
そう日記には書かれていた……。
ニーニはページを次のページをめくる。
文字はギザギザでほとんど形を成していない。
しかし、その文字は大きく描かれており、一言で書かれていた。
「ありがとう」
そう一言書かれていた。
ニーニ
「……」
ニーニはノートを閉じ、ハナとの思い出を思い返す。
わずか数週間の出会いであったが、
初めてできた人間の友達だった。
ニーニは途方に暮れた顔で三日月を眺めていた。
満月の下でハナと一緒に過ごした日々を思い返していた。
ドンッ!!
突如、遠方から大きな破裂音が聞こえてきた。そしてニーニの視界に炎が入った。
遠方で火事が起こっているようだ。
ニーニ
「……あの方角は……まさか!?」
火事が見える方角はニーニの仲間たちがいるところだ。
ニーニは咄嗟に起き上がり、炎が見える方角へ走り出す!
ドオオオオッ!
爆発音が何発か鳴り響く!
ニーニ
「アニ…皆…!」
ニーニは全速力で駆け抜けていく!
朝日が登り始め、徐々に視界が明るくなっていく…!
ニーニは走りに走り、やっとのことでレギオンの住処に辿り着く。
ニーニがたどり着いて目にしたものは、焼き野原だった。
レギオンの住処は焼かれており、そして何体かレギオンたちが倒れている。
皆黒ゴケに焼かれていた。
ニーニ
「なんてことを……」
ニーニはあまりにも悲惨な光景に呆然と立ち尽くしていた。
「ニ……ニーニ……」
どこからかニーニを呼ぶ声が聞こえる。
ニーニは声がする方へ振り返ると、そこには全身焼かれたアニの姿があった……。
ニーニ
「……!?」
「アニか?アニなのか!?」
全身が黒焦げであり、もはや誰なのか検討がつかない。
アニ
「ニーニ……よかった……無事で……」
ニーニ
「アニ!!今助けを!!」
アニ
「ニーニ……早く……逃げ……て」
ニーニ
「アニ……アニ!!」
アニ
「人間が……襲って……くるから」
アニはこの言葉を最後に二度と口を開くことは無かった。
ニーニ
「アニイイイ!!」
「畜生!!」
「なんでこんなことを……どうして……」
焼け焦げた匂いが蔓延する中、
ニーニはその場で嗚咽を漏らす……。
ニーニ
「人間……よくも……よくも皆を……」
「許さない……絶対に……許さない!!」
人間たちが放った炎はニーニの心に引火し、
彼の中で轟々と憎しみの炎が渦巻いていった。
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