第4話


ニーニとハナが出会ってから3週間が経とうとしていた。

彼らは毎日夜になってはいつもの場所で会っていた。


ある日、ハナが歩いている時、懐から日記を落とした。

ニーニは日記を拾い上げ、ハナにそれを手渡す。


ニーニ

「これは何?」


ハナ

「ん?これは私の日記」


ニーニ

「日記?」


ハナ

「ニーニは日記を知らないの?」

「日記はこうやって文字をかいて伝えたいことを書くものなの」


ハナは日記を開き、文字が連ねられているページをニーニに見せる。


ニーニ

「へえ……これ文字っていうんだ」


ハナ

(……ニーニは文字も知らないのね……。ちょっとびっくり…)

(ニーニはもしかして貧しい環境で育ったのかな……)


「文字はね…こうやってペンのインクで紙に記号を書くの」


ハナは、こんばんわと紙に記載する。


ハナ

「これこんばんわって意味の文字」


ニーニ

「ほー……」


ニーニは興味津々に日記を見つめる。


ニーニ

「これはなんて書いてあるの?」


ハナ

「えっとね……これは……」


ニーニが指さしたところには、ハナの闘病の内容が書かれていた。


ハナ

「早く外に出たいって書いてあるよ」


ニーニ

「外に?」


ハナ

「うん、だって私ずっと病院にいるんだもん」


ニーニ

「そっか……これはハナの願望が書かれた日記なんだね」


ハナ

「……うん。願望というか、ほとんど愚痴だけどね」


ニーニ

「この日記を誰かに見せたりするの?」


ハナ

「ううん。これは誰にも見せないよ」


ニーニ

「そうなの?じゃあ何で書いてるの?」


ハナ

「確かになんでだろうね…。やっぱり、心の内に留めて置きたいものを書き出したいからかも」

「私が外に出たいと言っても皆病院から出してくれるわけじゃないから、こうやって日記に書いて心の内にとどめているの」


ニーニ

「なるほど。誰にも言えないから日記を書くわけだね」


ハナ

「うん。そんな感じ」


ニーニは暫くハナの日記をパラパラめくり、興味津々で見ている。


ハナ

「……」

「そうだ!ニーニも日記書いてみない?」


ニーニ

「え?それは難しいんじゃないかな……。だって僕は文字というのが書けないよ」


ハナ

「大丈夫!私が教えるから!」

「すぐ覚えられるよ!」


ニーニ

「本当に!?やった!」

「ちょっと書いてみたい気がしてたんだ」


ハナ

「じゃあ早速今日から教えるね!」

「これペンを持って!」


ニーニ

「ペンってどうやって持ってるの?」


ハナ

「こうだよ!」


この日からニーニはハナに人間の読み書きを教わることになった。

毎日毎日少しずつ、ハナから文字を教わり、やがて日記を読めるようになっていった……。

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