第2話 

ハナは病院の皆が寝静まるのを大人しくベットの中で待っていた。


ハナ

「そろそろかな……」


深夜2時。彼女はそっとベッドから起き上がり、窓を開ける。

彼女は水筒や軽食を入れたバックを背負い、脱出計画を開始する。

ハナは窓から身を乗り出す。

ハナがいるのは1階だ。窓からすぐ外へ出ることができる。

地面に降り立ったハナは、こっそりと歩き出し、フェンスへと向かう。

そして彼女はフェンスの前にたどり着き、そこで立ち止まる。


ハナ

(よし……さあ行こうハナ)


彼女はカメラの死角を掻い潜り、フェンスをよじ登る。

そしてフェンスを越えて病院の外へと出る!


ハナは走りに走り、そして雑木林の中へ入る。


ハナ

「はあ………はあ………」

「遂に………遂に出た!」


ハナは笑みが溢れ、両手に力拳をつくる!

初めて病院の外を出て未知なエリアに足を踏み入れたのだ。

これは彼女にとって勇気のある一歩であった。


ハナ

「よし……先に進むぞ!」


彼女は一歩一歩嚙み締めて、茂みの中を歩いていった。


ハナ

(……歩きずらいな)


足場は狭く、さらに夜のため、足元が見えずらい。


彼女が苦戦しながら進むも、脱走してから10分経った。

最初は意気揚々としていた彼女だが、一歩一歩進むにつれ、不安が募っていく。


ハナ

(外に出たのはいいけど…これから一体どこに行けばいいんだろう?)

(どこに行けば山から降りられるんだろう……)


ハナは足を止め、その場で考え込む。


ハナ

(いきなり何も考えずに飛び出して来ちゃったけど……)

(やっぱもう少し計画を練らないとダメね……)

(ってうわあ!?)


ハナは足を踏み外し、前かがみに転倒しそうになる!

何とか踏ん張って横に倒れ込む……!


ハナ

「はあっ…はあっ…」


ハナは立ち上がり、踏み外したところを見る。

そこには地面が無く、そこから先は崖であった。


ハナ

(あ……危な!)

(こんなところから落ちたら死んしゃう……!)


ハナは元来た道へ引き返す。


ハナ

(こっちの方角じゃ山を下れない…)

やっぱり、少しずつ周りを把握してからじゃないと、脱出は難しいかも…)


(悔しいけど…今日は引き返そうかな…)

(こうやって少しずつ進んでいけば、いつかは出られるよね)

(今日はまず外に出られただけでも前進したよ…)


彼女は病院から出たい要求にかられて勢いで出てしまったが、冷静さを取り戻し、

一度引き返すことに決めた。

彼女が諦めて戻ろうとしたその時、目の前の岩場に誰かが倒れていることに気づく。


ハナ

「誰!?そこに誰かいるの!?」


倒れていたのは一人の少年。少年はうつ伏せになって倒れていた。その少年の髪は銀髪であり、少しボロボロなマントを羽織っていた。

ハナは少年に声をかける。しかし、一向に返事がなく、身動きすらしない。

彼女は恐る恐る少年に近づき、そして少年の前に立つ。


ハナ

「もしかして……死んでる?」


ハナは少年に近づき、息をしているか確認する。


ハナ

「……わずかに息している」

「ねえ…起きて!ねえ!」


ハナは片手で少年の頭をポンポン叩く。

しかし、一向に反応が無い。


ハナ

「仕方ない……まずは体を起こそう」


ハナは少年の体を力づくでうつ伏せからひっくり返す。

少年は仰向けになる。


ハナ

「……!?」


ハナは少年の顔を見てびっくりする。少年の顔の半分が甲殻のようなモノで占めていたからだ。


少年は今にも死にそうな震えた声でつぶやく………。


少年

「水………」


ハナ

「水?…水ね!ちょっと待ってて!!」


ハナはバックから急いで紅茶の入った水筒を取り出し、ふたを開けて、紅茶を注いでいく。


彼女は紅茶をいれたコップを少年に飲ませる。

少年はぐびぐびと飲んでいく。


少年

「ぷはあ……!」

「はあ…はあ…」


少年はすべて飲み干し、息を吹き返す。


少年

「……ありがとう…助かった……」


ハナ

「………大丈夫?」


少年

「大丈夫………おかげさまで生き返った」


ハナ

「どうしたの?行き倒れ?」


少年

「……うん」


ハナ

「あなた私と同じくらいの年齢に見えるけど……もしかして迷子?」


少年

「迷子ではないよ……」


少年は震えた足でゆっくりと立ち上がる……。


ハナ

「ちょっと!安静にしてた方がいいよ!」


少年

「大丈夫……少し経てば自然に回復するから」


ハナ

「そんなのダメだよ!……そうだ!」

「私病院からここまで来たの。すぐそこに病院があるからそこに行こう!」


少年

「いいや……大丈夫。本当に大丈夫だから」


ハナ

「どう見ても大丈夫じゃないんだけど!?」

「ほら!一緒に病院へ行こう!」


ハナは少年の腕を掴み、無理矢理病院へ連れて行こうとする。

その時、遠くから女性の声が聞こえてきた。


「ニーニ~ニーニ~!」

「いたら返事してー!!」


少年

「あの声は……アニ!」

「無事だったんだ……」


ハナ

「もしかしてこの声は、あなたのお母さん?」


ニーニ

「お母さんではないけど、僕の仲間だよ」

「どうやら探しに来てくれたみたいだ」

「もう大丈夫。仲間が来たから、帰れるよ」


ハナ

「そっか………ならよかった」


ハナは少年を掴んでいた腕を放す。

少年は仲間の声がするほうへ歩き出す。


少年

「あ………そうだ」

「君の名前は?」


別れ際にニーニはハナの名前を聞く。


ハナ

「私はハナ。あなたは?」


少年

「僕はニーニ」


「そうだハナ。今度ハナにお礼をしたい」

「ここにはよく来るの?」


ハナ

「ここら辺は今日来たばかりだよ」

「でもこれから毎日来るつもり」


ニーニ

「そうなんだ」

「なら明日またこの時間に会いに来てもいいかな?」

「お礼の品を持ってくるよ」


ハナ

「お礼だなんてそんな………」


ニーニ

「お礼させてよ。ハナのお陰で生き延びることができたから」


ハナ

「………うん。わかった。明日またここで会いましょう」


ニーニ

「じゃあまた明日!」


ニーニはハナに手をふり、お別れを告げる。

ハナもニーニに手をふる。

ニーニはアニの声がする方へ歩いていき、ハナの前から姿を消した。


ハナ

「……変わった人」


ハナも帰り道に体を向け、歩き出す。


ハナ

「なんか今日はいろんなことがあったな~!」

「外にも出れたし、久しぶりに他の人にも会えたし!」

「あ~楽しかったな!明日もあの人に会う約束したし、明日も楽しみだ!」


ハナは久しぶりに外の人と出会うことができ、話すことができてうれしかった。

ウキウキ気分で彼女は病院へと戻っていった。


ハナは何事も無かったように病室へと戻り、ベッドの中へと入る。


ハナ

「今日はよく眠れそう」

「明日もいいことがありますように……」


ハナは明日ニーニに会えることを楽しみにし、就寝する……。



この日の夜、ニーニ達レギオンを発砲していた人間たちが、山奥で話し合いをしていた。


マーカス

「くそ……結局逃がした奴らを見つけられなかったな」


ジン

「仕方ない。今日は引き上げよう。また明日調査を行おう」


マーカス

「まさかこんな山奥にレギオンが現れるとはな…」


ダキヤ

「こんなところで襲われたらたまったもんじゃない」

「早く駆逐しなければ…」


マーカス

「そういや明日、お前は娘さんの病院に行くんだったな?」


ダキヤ

「そうだ…。申し訳ないが、明日は半休をいただくよ」


ジン

「半休とは言わず、一日休んだらどうだ?レギオン探しは俺らに任せとけ」

「奴らの巣を見つけたら、駆除しとくからよ」


ダキヤ

「それはありがたいが……レギオンを見つけた以上は一日でも早く駆除しないと危険だ」

「午後には参加させてもらうよ」


ジン

「そうかい。仕事熱心だな」

「少しでも娘さんの側にいてあげたほうがいいと思うが」


ダキヤ

「ああ……そうしたいところだが」

「万が一レギオンが娘のいる病院に現れたら大変なことになる」

「レギオンの駆逐が最優先だ」


マーカス

「確かにな。わかった。じゃあ明日は午後から頼む」


ダキヤ

「おう……明日よろしくな」


男たちは山を下りていき、住宅地へと向かっていった……。

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