第4話 家庭菜園

 義母かあ様は義妹いもうとと一緒に、うちから5分のところで暮らしているのですが、うちの方で家庭菜園をやっていて、そこでいろんな野菜を作っておりました。

 トマト、きゅうり、なす、ピーマン、キャベツ、人参、白菜、セロリ、葱、玉ねぎ、かぼちゃ、大豆、おかず豆(正式名称わからず)、菜っ葉多種(義母様にかかれば全部菜っ葉)、馬鹿でかいズッキーニ…… 

 夏場には野菜を買いに行くことなく生活できておりました。

 

 義母様は、ちょいちょい全く分からないものも植えます。

「あのね、あのね、畑の向こう側にあるやつ。キャベツとカブの間の子みたいなやつ。食べてくれていいからね」

 という義母様。

「一体、それは、何?」

「えーと、だからね、カブから、こーんな感じで、キャベツがニョキニョキ出てきてる感じの野菜」

 

 義母様の謎の説明ではわかりかねて、行ってみると、確かにカブの途中からキャベツみたいな葉っぱが出てる未知の野菜。

「……」

 とりあえず掘り出して、根っこ切ろうと思ったら硬くて切れやしない。家に持って帰って、

「じいちゃん、根っこ切ってー」

 と、義父とう様に頼む横着な嫁。

 義父様も、

「なんじゃこれ?」

 と言いながら、ナタで根っこを切ってくれました。


 一体何だかわからないので、帰ってきた夫に調べてもらいました。

「コールラビだって」

「なにそれ?」

「なんだろう?」 

「とうやって食べるのよ?」

 なんとか料理サイトで検索し、サラダや天ぷら、きんぴらなんかにしましたが。収穫時期がわからないものを植えているので、育ちすぎてて硬い硬い。

「あら~、そうかい。もうちょっと小さい時に採るんだね。で、どうやって食べるの?」

 ……お義母様。未知の野菜作って、私に試食させて、レシピ聞くのやめて下さい。


 ある年には、芯が赤いほうれん草を植えました。サラダにして食べれるからね〜、というので、葉が柔らかいうちはそうやって食べたのですが、

「……?」

 っていう味。

 そのうち葉が成長しまくってきたので、「お義母さん、あのほうれん草、もうトウが立って食べられないんじゃない?」

 と聞くと、

「いや、まだ柔らかいのよね。持ってって食べていいから」

 と言う。

 有り難く抜いて一言。

「この『玉』は何???」

 義母様に、これは絶対ほうれん草ではない旨、力説し、また夫に調べてもらう嫁。

「あーあー」

 一人納得する夫。

「ビーツだわ」

 待てい。ビート(砂糖の原料、この辺で普通に作られています)じゃなくて、ビーツ? あの、ロシアで食べられてるやつ……

「って、どうやって食べるの?」

「んー、ボルシチ?」

「……」

 そんなもん作れるかい! とばかりに、またお料理サイトに頼る妻です。

 そしてできるボルシチ。正解がわからないけど、なんとなく外見は一緒。

「おいしい?」

 と夫に聞くと、

「肉がよく煮込まれてておいしい」

 ……ビーツ食えよ、ビーツ。


 毎年、未知の野菜を作ってくれる義母様。それにしても……広すぎるだろう、家庭菜園。郷里の田んぼ一枚は余裕にあると思います。草取りが大変で大変で。収穫が大変で大変で。それより何より使い切るのが大変で大変で大変で。

 無駄に広い土地があるのも考えものだな。と、思った嫁でした。


 今は事情があって、もう何も作らなくなってしまいましたが、やっぱり完熟トマトの味が忘れられなくて、トマトだけでも植えようかな~、と思っていたりします。

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