第4話
菖蒲が亡くなった後、チセとケンは母子二人っきりになった。
慎ましく淋しい暮らしだったけれど、二人になったからこそ、ケンとチセは何をするにも一緒で、チセはケンと始終おしゃべりを楽しみ、笑いの絶えない親子水入らずの日がやって来たように思った。
本当にケンは良い娘だ。
私には勿体ない程、愛らしい娘だ。
チセは畑仕事をする時も、家で食事の支度をするにも縫い物をするにも隣にケンがいる事が嬉しくて仕方なかった。
ケンは宝娘だ。私の宝だ。
石麻呂さんが私に残してくれた宝物だ。
今までは八割方、いや九割方、孫をお婆様に取られてすこーし淋しかったけれど、今は私が生んだこの宝娘は私だけの娘だ。
このままずっとずっとケンと一緒に暮らして行けないものかと思ったり、いつかこの件ケンも人の嫁になってしまうのか。
ケンを嫁に貰う人は幸せ者だが、遠くにはやりたくないと思ったり、婿さんをとりたいと思っても、今や何の財産もないこの家だもの。
それは望めないと考えたりしていた。
畑の隅から隅まで無駄なく耕し、その他に賃仕事があれば手伝いに行ったり、チセは石麻呂が死んでから思いつく限りの事をして来た。
石麻呂の短い寿命の不足分を天からいただいたのか、そんなふうに頑張ってもチセにはどこも悪い所が無かった。
きっとあの人が自分の代わりに子供とお婆様を頼むと健康にしてくれて見守ってくれているんだ。
今もあの山の頂から私の働きぶりを見て応援してくれているんだ。
きっとそうに違いない。
そう思い込み励みにして頑張って来られたのだった。
チセの楽しみと希望は全てケンに集中されていた。
ケンは賢い子だ。そしてケンは親の欲目ではなく誰にも負けない程美しい娘だ。
この娘には絶対幸せになって貰いたい。
私もお婆様も二年か三年で夫を早く失くしてしまった分、ケンにだけは丈夫で長生きする情のある男と一緒になって一生、安心して幸せになって貰いたい。
チセは一人で黙々と働く時もケンと一緒にいる時もいつも思った。
近頃急に、花の蕾が開きかけたように初々しい娘らしさのケンを見る度に、切実に思う事だった。
この子には苦労はさせたくない。
この子にだけは悲しい思いをさせたくない。
どこの親もそうだろうが、チセも負けず劣らず我娘の幸せを願う母親だった。
そういう所に突然、降って湧いたような縁談だった。
チセは正直、まだまだ二年や三年先の話だと思っていた。
嫁に出すのは二十歳頃でもいい。
そう思っていたのだ。
まだつい先日十七になったばかりなのに。先方はどうしてもすぐに嫁に欲しいと言っているというのである。
そんな無茶な話。
しかもどこの誰が?いつケンを見たのだろう?ケンはここ暫らく一人ではどこにも出歩いていない筈。
特にお婆様が生きておられた頃はいつもお世話で殆ど出歩く事は無かったし。
女学校を辞めて以来。友達のような行き来する娘達も姿を消して、チセは少し可哀想に思っていたくらいなのだ。
この話を持って来たのは、やはりカネゲンの親方だった。
相手はこの村から遠く離れた町の青年だという。
町の役場に勤める有望な青年だという。
大学も出ていて、亡くなった父親は町の助役もしていたという素性のしっかりしている家柄で、妹が一人いるが一年前に片付いて今は母親と二人暮らしだという。
だがそんな青年がどうしてケンの事を知ったのだろう。
そう思っていると、中に立ったカネゲンの親方が、実はこの度の申し込みは本人からの立っての申し込みなんだと言う。
「本人は山口圭介君と言うんだがネ。
この度、招集令状が来てネ。近日中に出征する事になっているんだヨ。
圭介君は大変優秀で、町役場でも町長から信頼されて頼りにされている事もあって、この男だけは特別に招集されないようにと願いを出してあったのだそうだが、やはり招集令状が来てしまいました。
彼は山岡家の一人息子だ。
何かあったら大変と母親や町長は急いで嫁探しをしようと言い出した。
そしたら圭介君が、自分には心に決めている人がいると言うので、もう驚いてそんな人がいたのかと聞くと、これは嫁にするならこの人だと自分一人きりで心に決めているだけで、相手の人は僕の事を全く知らないだろう。
そう言うばかりで最初は相手の名前を言おうとしなかったそうだ。
自分が無事に戦地から帰って来たら、その時に申し込むつもりだから今は嫁を取るつもりはないと言い張るばかりだった。
それを母親と町長がああでもない、こうでもないと説得してついに聞き出したのが、
ケンお前の名前だったんだヨ。
ケンは覚えているかい?山岡圭介君という青年だ。
以前うちの勉強会にも参加していた若者だヨ。お婆様が生きていた頃、手伝いを頼んだ事ああったろう?
あの時にお前を見染めたらしんだヨ。」とヤマゲンは言った。
「あの、でも私ずっと裏方で台所にいておばさん達のお手伝いをしていましたけど。」
「それなんじゃよ。途中でひどく酒に酔って具合を悪くした青年とそれを介抱した青年がいた筈だ。その時、ケンに親切にされて見染めたらしい。」
ケンはその時の事を思い出していた。
酒宴もたけなわで、お料理もお酒も出し終わって、最後の方でじゃんけん大会があるから皆も参加するように言われて、おばさん達も喜んで参加しに座敷の方へ行ったあの時、の事が思い出された。
ケンはそういう賑やかな中で混じってじゃんけんしたり、ましては勝って注目される事は商品を受け取れるとしても嫌だった。恥ずかしくて行く気にはなれなかった。
「私、ここで留守番しています。」と言うと、おばさん達が、「勝てばなにかいい物が貰えるヨ。大旦那は気前がいいから。」と言ってくれたけれど、
「いいえ、私は留守番の方がいいんです。」
そう言って一人残っていたのだった。
その時、具合悪そうな人とそれを支えるもう一人の二人の青年が台所に入って来たのだった。
「あの、呑み過ぎて吐きそうだというんです。どうしたら良いでしょう?」
と聞いたのが付き添っている青年だった。
ケンは急いで勝手口を開けて外を教えてやった。
暫らくすると全部吐いたのだろう。
青白い顔の青年を抱えて戻って来て、「少しここで横にさせて良いですか?」と言い、ケンは青白いグッタリしている青年に水をやって台所の片隅を指して、ここに少し横になったら?と言った覚えがあった。
その時、付き添っていた青年がニッコリ笑って、
「ありがとう、助かったヨ。皆のいる前で吐いたりしたら座がしらけて、こいつが大恥かく所だった。」と言ってから、
横になっている青年を見て、「“不幸中の幸い”ってこの事だナ。」と言って笑った。
病人のように青白くぐったりしたその青年も、「ああ、助かったヨ。」と言ったような気がする。
それはほんの少しの時間だった。
やがてじゃんけん大会も最後の勝負がついたのだろう。
ワーッと盛り上がったり、どっと笑ったりの声が聞こえたかと思うと、座敷の方からおばさん達が帰って来る足音やおしゃべりの声が聞こえて来た。
口々に、「ケンちゃーん、ケンちゃーん。」と呼んだ。
「ケンちゃんの分もしっかりお土産を貰って来たヨー。」
「ケンちゃん、お土産あるヨー。」と声がした。
ケンは恥ずかしそうに、「皆、帰って来ましたヨ。」と言った。
すると二人の青年達は慌てて立ち上がり、
「それじゃ、僕達も行きます。本当にお世話になりました。」
と、おばさん達と入れ違いに帰って行ったのだった。
特別じっくりおしゃべりした訳ではないし、ほんの束の間の事だったのに。
ケンは具合を悪くした青年よりも介抱していた青年の顔を思い出していた。
最後に帰る時振り返ってニッコリ笑い、
“ありがとう”と言ったあの顔を思い出していた。
だが、この度の縁談は具合を悪くした方の青年らしいという。
「助けてくれたケンの様子で、もしも嫁を貰うならこの娘が良いと思ったらしんだ。
正にその時は地獄で仏に会った気持ちがしたのだろう。」と源之亟が笑った。
ケンは、
「私はあの時、特別何もしていません。お水を差し上げただけです。」
そう言うと、
「縁とはそういうものなんだヨ。人の目に付こうと着飾らなくとも表に出ないで裏の方で目立たないようにしていても、見染められる者は見染められるんだヨ。」と言った。
チセが、
「でもケンはまだまだ大人になったとは言えませんし、まだまだ未熟者です。
人の嫁になるにはそれなりにいろいろ教えたい事もありますし、気持ちの準備もあります。」と言ったが、
カネゲンは、
「それがナー、さっきも言ったが戦地へ行く前に盃事を済ませて安心して向かいたいのが先方の気持ちなんだヨ。
何せ戦地へ行くとは命をかけるという事だからナ。家では嫁さんが待っていてくれる。
その大事な嫁さんを守る為に戦うのだ!という気持ちが厳しい状況にも耐えられるというものなんだ。
それにこういう縁組はこの国のあちこちであるものなんだ。
男も大変だが女もまた戦争に行く男達の心の支えになって送り出す事も立派な務めなんだヨ。
ケン、突然の事でびっくりしただろう?何が何でも承諾してくれとは言わないが、あの青年は私もよく知っているが、良い男なんだ。
顔も学歴も職業も家柄も全て申し分ないが、それだけじゃない。
山口君は人物もなかなかのもので、他の者達が激論を戦わせて争っている中でも常に冷静でしかも口を開く時はどちらの言い分も尊重しながら各々に自分が発した言葉の足りない所を気付かせるような事を言うなかなか優れた調整役だ。
こういう人物が将来偉くなるのではないかと儂は思って見ていたヨ。
勉強会に集まる若者の中でも頭の良さでは五本の指に入るだろう。あの男はやがては町長になり更に上にのぼって行く男と見た。
そういう男だからケンの良さをすぐに見抜いたのだろうヨ。
町長から直々に頼まれたという事もあるが、儂個人の意見を言うなら、こんな優秀な男との縁談はなかなか無いと思うし賛成だ。
だがどんなに良い男でもこれから戦地へ向かう身だ。残されて婚家で留守を守る嫁の身となれば、お母さんと二人のんびり暮らして来たようにはいかないだろう。
大変な苦労が待っていると覚悟しなければならない。
人の縁はいつ、どこで結ばれるか解らないものだ。
断る事も出来るが、二度とこういう人物とは出逢えないかも知れない。
とにかく今晩一晩よく相談して考えてくれないか。
明日また返事を聞きに来てすぐ相手に伝えなければならないからネ。
先方ではもしも良い返事を貰えたらすぐにも祝言を上げたいと言っているからのー。
本当にこんな時代だから仕方ないんじゃが、申し訳ないのー。
とにかく、また明日の朝返事を貰いに来るから、それまでによーく考えておいておくれ。」
年老いてもまだまだかくしゃくとしたカネゲンはそう言い残して帰って行った。
本当に寝耳に水のような話だった。
チセとケンは二人になると途方に暮れてしまった。
あまりに急で、しかも時間がないという。
「カネゲンの大旦那様がああおっしゃるんだから、その方は申し分のない方なんでしょう。
大学も出ていらっしゃるんでしょう?
私、そういうお方のお嫁さん務まるかしら?」
ケンがそう言うと、チセが、
「何を言ってるの。ケン、お前はその辺の娘さんが百人集まったって、どんな女学校を出た娘達にもひけを取りゃしませんヨ。何たってあのお婆様にみっちり仕込まれたお婆様のお墨付きの娘なんですからネ。
自分に自信を持ちなさい!
それは別にして、よその家に嫁に入るってそりゃ大変な事ですヨ。いくら当人が良い人だと言っても、戦地に行ってしまったら相手の母親と二人っきりの生活だ。
私はその事の方が心配ですヨ。せめてこの近くに嫁ぐんなら私の目が届くし、何かと持って行ったり愚痴を聞いてやる事も出来るけれど、あの町は遠すぎるからネー。
ところでケン、お前はその相手の人を見ているんだろ?」
と母親は言った。
ケンはあの時の事を思い出していた。
本人は具合が悪そうに目を瞑って下ばっかり向いていて最後に“どうもありがとう”と弱々しくお礼を言ったかも知れない。
むしろ付き添っていた人の方が記憶に残っていた。
あの人も優しそうな人だった。
ケンはあの時の事を幾度も思い出したが、やはりケンが一人でいた時に突然入って来たその名前の知らないその付き添いの青年の優しそうな目と目が合って話し掛けられた時、娘心に頬が赤くなる思いがあった事を思い出すだけだった。
ケンがボンヤリしていると、
「ケン、あんまり好きになれそうにない相手なら断っても良いんですヨ。
何だって急な話ですからネ。
今日話を持って来て明日の朝返事だなんて、あんまり急ぎすぎるし、しかもすぐ祝言だなんてあんまりですヨ。」
チセは出来ればこの話は断りたかった。
カネゲンが保障する人物でも何だか不吉な予感がした。
自分も姑の菖蒲も夫とは早くに死別している。夫のいなくなった後、無我夢中に頑張って来て自分が不幸だと嘆いたり泣いたりする暇さえなかったけれど、世間の長く連れ添っている夫婦を見ると羨ましくなる。
可愛い自分の娘にはそういう思いはさせたくないと思った。
だが世の中の若い男という男は、健康である限り戦争に駆り出されて行ってしまうのだ。今は、そう言う世の中だ。
チセとケンの家はすぐ後ろに深い木々の森を背負うようにして建っている。
いわば山々の連なりの裾に建つ、昔は山長者だったという。
しかし今や母娘二人っきりの慎ましい暮らしであった。
誰か家の中に男が一人でもいれば今の戦争に対しても、もっといろいろな情報や話が飛び込んでくるだろうが、たまに村の顔役が重要な話を知らせに来たり、金属製の物があったら供出するようにと言って集めに来た時には、蔵の中を探してそれらの物を出したりした。
それ以外は特にお婆さんが生前の頃は、周囲人々もどこか遠慮して気楽に遊びに来る者もなく、どこか世間から離れて静かに暮らしている節があったのである。
勿論、赤紙の事も、家の中に若い男がいる家庭では赤紙が来るかも知れないと戦々恐々としている事も知らない訳ではなかった。
母娘二人の男手のない家は少し離れた所からこの度の戦争を見ていたのである。
こんな形で突然戦争というものが自分に覆い被って来るとは思ってもみなかったのである。
母親のチセの言葉を聞きながらケンは考えていた。
断る事も出来るだろう。
だけど断った後はどうなるだろう?
赤紙を受け取ってこれから戦いに向かう青年の願いを断った自分は一生後悔する事になるのではないだろうか。
もしも自分が断った為に、失意のうちに一人戦地に行かせ、そのまま戦死するような事があったら、自分は取り返しのつかない悔いに一生襲われるだろう。
男の人は招集令状が来てもそれを嫌だと言って断る事は出来ない。
だが女の私はこの縁談を嫌だと言って断る事も出来る。
この縁談は女の自分にとっては招集令状のようなものではないだろうか?
山口圭介というその人の心の支えになって、自分も心を一つにして戦争に参加するべきではないのか?
山口という人はそれを自分に求めているのではないだろうか?
そうであるならば、この縁談は断る事は出来ない。
それに今まで何かとお世話になって来たカネゲンの叔父様の顔を潰す事にもなる。
ケンは決心した。
今の世の中、どこへ行っても戦争の話でもちっきりだろう。
この渦の中から逃げ切って安穏な暮らしが出来る訳はないのだ。
「お母さん、この縁談断る事なんか出来ないワ。相手の男の人はこれから戦争に行くのヨ。戦争へ行きたくないって断れないで行くのヨ。
それを私は女だからって縁談を断る事が出来る?
もしも断ったらその人はがっかりして戦争に行くでしょう。
そして、今まで数々お世話になったカネゲンの叔父様の顔を潰す事にもなるワ。
私とお母さんにとっては、今となっては何かあったら頼りに出来るのはのはあの叔父様しかいないのですもの。」
チセはそう言う娘の顔をしみじみ見つめて、深い溜息をついた。
「ケン、お前は覚悟を決めたんだネ。
そうだネ。
女にとってこの縁談は招集令状のようなものだからネ。引き受けるしかないかも知れないネ。」
と力なく言った。
話は急に決まった。向こうから事情が事情なので、何の用意もしなくて良いから身一つで来てくれという事だった。
それでも祝言のある朝に相手方から仲人役の町長夫妻が迎えに来た。
ケンの家できちんとした盃事をしてから、ケンとチセと源之亟と町長夫妻とで、町にある先方の家に向かったのだった。
ケンは後で必要な物を送って貰う事にして、とりあえずは祝言の席に着る振り袖一式と、普段着を何枚かと肌着類を持っただけだった。
相手の方も本人と母親と妹だけだった。
妹は嫁いでいたが、やはり夫は既に出征して戦地にいるという事であった。
従って仲人夫妻を入れて総勢八人だけでささやかな祝言を上げた。
突然の事ではあったけれど、ケンの衣装は大層美しく豪華な装いだった。
亡き祖母の菖蒲が大事に保管していた品々は、少しも古くはなく今時どんなに金を出しても、もう手に入らない手の込んだ精巧で贅沢なものばかりだった。
ケンの花嫁姿はとても美しかった。
チセは娘の晴れ姿を見上げながら、菖蒲のありがたみを改めて感じた。
チセ自身もまた、菖蒲が特別大事にしていた裾模様の着物に金糸銀糸の見事な帯をしめた大層立派な作りだった。
それは恐らく菖蒲の母親が遺したものだろう。
こういう時にカネヤマの昔の栄えていた頃の、当時作った着物の数々を有難く思った。
チセは心の中で、自分一人の力では何から何までケンに肩身の狭い思いをさせたに違いないと思った。
人は中身が一番だが、それがすべての人に通じるものではない。
多くの人間はまず最初に見た目で判断する事が多いからだ。
そういう意味でも今日は、自分もケンも誰に対しても恥ずかしくない仕度が出来たと思った。
それに今、自分達にはこの地方で広く顔のきくカネゲンの源之亟がついている。
こうしてお願いされて嫁に来たのだし、ケンはよもや粗末にはされないだろう。
チセは祝言の最中にも、相手の婿殿よりも、その母親と義妹になる娘をさり気なく観察していた。
見た目は少しもきつさを感じさせないにこやかな顔をしている。
チセは今まで、賃仕事や手伝いで多くの人達を見て来た。
外面は良くても、内面は全く違うという人間も見て来た。
外見だけでは人の中身や性質はやはり解らないものだ。
その下に隠れる性格までは読めないし、この家に嫁ぐ事を決心した娘のケンは、どんな事があっても夫がいなくなった後のこの家で頑張り通すしかないのだ。
せめてこの義母と義理の妹がどうか温かい心を持っている方でありますようにと願った。
チセは生まれた時からあの村で過ごし、母親のハナが病気になってからは町に奉公に出る事もなしにそのままケンの父親の石麻呂に嫁いだ経緯がある。
ケンが生まれて誕生を迎えるかどうかのあたりに石麻呂が病に倒れた。
私とお婆様は嫁姑の諍いをする事なくどちらかと言うと二人は力を合わせて頑張って来た所があった。
チセも控えめに精一杯気を遣って来たが、姑から小言や皮肉や意地悪をされた事は一度もなかった。
だけどまた、親しみを込めた腹を割っておしゃべりをした事の記憶もないのだった。
菖蒲という人はどこか踏み込めない人だった。
何を考えていたのか何か心配事があったのか、何度か嫁の自分に話せない事を抱えているのではないかとふと考えた事がある。
たまに何を考えているのかボーッとしている時があった。
チセの母親のハナとはまるっきり正反対の人だった。
母親のハナは何から何まであけっぴろげで人に自分の全部を見せるのを少しも恐がらない人だった。
それなのに、陰で近所の女房達が“妲己のハナ”等と陰口をいっているのを耳にした事がある。何故だろう?
あんなにいいおっかさんなのに。
いつもカラカラ笑いながらもいつも人に気を遣って、人一倍思いやりのある人だったのに。
そんな自分の母親を思った。
大好きだった母親だったが、自分はそういう意味では母親に似ていないと思う。
元々がそうなのか。それとも嫁いで菖蒲という人と一緒に過ごすうちにこうなったのか。
どっちかと言えばお婆様に近い性格かもしれない。
だけどお婆様は、いつも筋がピーンと通っていた。
世間のおしゃべり好きの女達のように余計な陰口や偏見を持つ事をしなかった。
従って、筋の通らない意地悪が嫌いな人だった。
今、この祝いの席の向かいに座る婿さんのお母さんという人はどんな人だろう?
その人はチセに向かっても丁寧に、
「この度は、突然の申し出をお受け下さいまして本当にありがとうございました。
よく承諾して下さったと本人共々、感謝しております。」
と丁寧な挨拶をいただいた。
当の婿さんも見た目もキリっとして頭の良さを感じさせる立派な人に見えた。
ケンの良さをいつまでも覚えていて申し込んでくれたからには、中身のある人だろうとチセは好感を持って見た。
仲人役の町長夫妻も立派な方達だと思った。
特に町長は、自ら娘のケンと母親のチセに頭を下げ、
「この度は本当にありがとう。
山口君の願いが叶って私も喜んでいます。山口君が出征した後も、時々は気にかけるようにしますから安心して下さい。
彼は立派な男です。子供のいな私にとっては息子のような存在です。
その山口君が望んだ大切な人だ。
私もそのつもりで山口君の留守中は時々顔を出し、相談に乗るつもりです。」
等と言ってくれた。
チセは祝言の翌日には帰らねばならないが、ただ一つだけ気になる事があった。
婿殿の母親と妹娘が何をするにもぴったりくっつくように仲の良い事だった。
母と娘が仲の良いのは自分とケンも同じなのだが、チセにはその様子が婿さんの留守の間のケンの立場に何か良くない影響を与えやしないかと気になった。
そう思いながらも、先々の事まで取り越し苦労をしている自分がやはりただの母親だと思った。
とにかくケンは嫁に出してしまったのだ。
苦労も含めて覚悟して本人が決めた事だ。
ケンはきっと何があっても乗り越えて行くだろう。
チセはそ
う自分に言い聞かせて、翌日帰るしかなかった。
その日、二人っきりになるとケンは勇気を出して圭介をちらりと見た。
圭介は眩しそうにケンを見ただけだった。
祝言の間中、うつむいてよく相手の顔を見る事は出来なかったが、やはり初めて見るこの人はあの介抱していた人とは違う人だと解った。
あの日、具合悪そうに目を瞑ってばかりいたあの人に違いなかった。
だがこの人があの時の私を見染めてくれたのだ。嫁にするならこの人と決めてくれた人なのだ。
私の良さを認めてくれた人なのだ。だから、私はこの人の妻になるのだ。
だから私はこの人を信じついて行くのだ。
ケンはひたすらそう思い続けた。
二人っきりになって身の置き所に困って緊張していると、ケンに圭介は初めて口を開いた。
「ケンさん、驚いたでしょう?」
そう言って笑った。
笑った顔は優しそうな人だった。
そしてすぐに改まったような真面目な顔で、
「突然な事なのによく承知してくれました。
本当にありがとう。そして申し訳ないと思っています。
私のわがままを許して下さい。」
と頭を下げて謝った。
いきなりそう言われてケンは驚いてしまった。
「自分がわがままなのは充分承知していました。ですが、招集令状が来て戦地へ行かなければならないと解った時、そして、もしかしたら自分はこのまま死ぬかも知れないと思った時、一番先に思い浮かんだのが貴女の顔でした。
こんな事言うのは恥ずかしいのですが、自分の本当の気持ちを言わずに戦地に行き、そのまま死ぬような事があったら後悔しますからネ。」と照れ臭そうに言った。
「でも、その時はただ思い出しただけだったんです。これは自分の胸の中だけの事でした。それが町長や母が嫁を貰ってから出征させねばと騒ぎ出したからです。
そして嫁候補に近所の娘や親戚の娘達の名前を出し始めました。
その時、私は思いました。好きでもない人を間に合わせに一緒にさせようとしている。
だからつい言ってしまったんです。
僕には心に決めた人がいるんだって。
貴女の迷惑も考えないでつい言ってしまいました。それからが大変です。
町長がカネゲンの大旦那様に話しを通すと言い出した時、初めて貴女にとって大変迷惑な話だという事に気が付きました。
貴女程の人だ、他に好きな人がいるかも知れない。そうじゃなくても急な話です。
私の方では貴女の事を想っていても、ケンさんの方では私の事など記憶にないかも知れない。私も少しは悩みました。でもほんの少しです。
今、申し込まずにいたら後々きっと後悔するに違いない。
戦地に行く時もまた、戦地で死ぬ時も後悔するに違いない。
断られたら断られたでいい。とにかく、わがままを言ってみよう!
もしもケンさんが万に一つでも承知してくれたら、僕は自分の全てで大切にしよう!
それで許して貰おう。
そう思いました。
だから私は貴女を大切にします。それで許して貰えますか?」
圭介は自分の思っていた事を全部話してニッコリした。
安心したような笑顔だった。
ケンはこの時、圭介を好きになった。
本当に正直で誠実な人だと思った。
カネゲンの叔父さんが言っていた通りの人だと思った。
このような人に見染められた自分は幸せ者かも知れないと思った。
それからの二人は仲の良い友達のようにいろいろな事を話し合った。
楽しかった。
兄弟のいないケンは、兄が出来たような気がした。
父も早くに亡くして顔も覚えていない。
圭介は知識も豊富であらゆる事を知っていて、頼もしさを感じた。
町長も出征まで間もない事もあって、休暇を与えてくれたので二人していろんな所に出掛けた。
景色の良い所に座って、のんびりして将来の事を語り合った。
圭介が戦地に持って行くというので、写真屋に行って写真も写した。
夜になると二人仲良く並んで寝て、圭介はケンが心配したり恐れている事は何もしなかった。
ケンが、きっと突然の縁談だったから心が通い合うのを待っているのだと思っているうちに、明日は出征という最後の夜がやって来た。
ケンは心を決めていた。だが膝を揃えて向き合った時、圭介の口から出た言葉は意外な事だった。
「ケンさん、私は貴女の事は清いままでいて貰います。私は最初から貴女を迎える時はそうしようと決めていました。
最初の日に言いましたネ。私は貴女を大切にすると。
私は貴女と形の上だけでも結婚出来て最高の幸せを貰いました。
私はこの写真を持って出征します。僕にはこんなに可愛い日本一の嫁さんがいるんだ。
僕の帰りを待っているんだ。
この人を守る為に一生懸命戦って、そしてこの人の為に死なないで生きて帰って来よう。そういう希望が持てます。
僕は必ず死なないで帰って来ます。待っていて下さい。僕は約束します。
ケンさんが待っていてくれるのですから、死んでなんかいられません。
ですが、何と言っても戦争です。万に一つは死ぬかも知れません。」
そこまで聞くとケンの顔はみるみる曇った。
「そんな顔をしないで下さい。僕は生きて帰るのですから。
でも万が一の事も考えておかなければなりません。
その万が一の事ですが、つまり私が帰って来れない時の事ですが、その時は、僕の事は出来るだけ早く忘れて他の人と結婚して幸せになって欲しい。
その為にも貴女には清らかなままでいて欲しい。それが私の考えた貴女を大切にするという事です。解ってくれますネ。」
圭介は優しくケンに言い聞かせた。
ケンは悲しくて悲しくて泣きながら、
「そんな事おっしゃらないで下さい。貴方が死ぬなんて事。そんな事言わないで下さい。私は圭介さんの妻になったのです。
自分が万が一死ぬなんて事考えないで下さい。」と泣いた。
「僕は自分の中の正義を大事にしたいんだ。自分の一方的な想いに負ける事は簡単だが、相手の将来を考えずに戦地に行き死んだら、僕は無責任で身勝手な人間という事になってしまう。
今まで考え行動し、友人達の前でも語って来た事が全部嘘になってしまうんだ。
そんなに泣かないでくれ。
僕は生きて帰って来る。絶対、生きて帰って来るから。
その時は本当の夫婦になろう。
そして子供の沢山いる幸せな家庭を作ろう。
僕がこの世の中でケンを一番大切に思っている。その証だと思って欲しい。
いいネ、僕達は恋人同士だ。この先、ずっと恋人同士なんだヨ。
僕は手紙を何通か書きたいから先に寝ていなさい。」
圭介はそう言って、隣りの部屋へ行って手紙を書いているようだった。
ケンは布団に入っても、圭介が死ぬ事があるかも知れないと思うと、悲しくて悲しくてその夜は一睡もしないで夜を明かした。
圭介もその後、ケンの所には戻って来なかった。
そして出征の時が来た。
必死で涙を見せずに送り出そうとしているケンに、圭介はこの上なお優しい笑顔を残して出征して行った。
あの人は絶対帰って来る。
あの人はきっと笑いながら帰って来る。
圭介が出征して行ってしまうと、家の中は急にガランとした。
ケンはまだ馴染まない家の中を身の置き所を探すように、あちこち仕事を見つけては掃除をするしかなかった。
姑のサクが、疲れた気の抜けたような顔をして、
「ケンさん、無理して動かなくって良いのヨ。今日は体を休めなさい。
私も疲れたから横になります。」
そう言って、自分の部屋に入ってしまった。
息子を送り出した母親の気持ちはきっと昨日今日知り合って嫁になった自分とは比べ物にならない喪失感があるのかも知れないとケンは思った。
それからのケンは、朝、目が覚めると、お勝手で朝食の支度をし義母のお膳を整えた。
時々、サクを訪ねて客があったが、体の調子が悪いからと言ってケンに断らせた。
もう暫らくしたら体調が戻ります。そしたらこちらから伺います。
名前を聞くと、ケンにそう言わせた。
ケンは掃除をして三度の食事の支度を整えて用意すると、何もする事がなかった。
里にいた頃はいくらでもする事があったし、自分の時間が出来ると縫い物をしたり、自分の部屋で絵を描いたりして過ごす事が出来たのだったが、その材料もない。
縁側に立って裏庭を眺めるしかなかった。
裏庭はあまり手入れもされずに草が伸びていた。
ある日、暫らくぶりにサクが起き上がって来た所をつかまえて、「お義母さん、あの裏庭に何か蒔いてもよろしいでしょうか。」と聞いた。
好きなようにして良いと承諾を得ると、せっせと雑草を抜き畑を作り出した。
母のチセがいつも言っていた。
「人間はどんな時だって生きる為には食べて行かなければならない。
主婦とはその算段が一番の仕事なんだヨ。」
そう言っては、朝も早いうちから畑を作っていろいろな物を蒔いていた。
お陰で一見これといった収入のない家だったが、祖母と母と孫はひもじい思いもしないで暮らして来れたのだった。
勿論母のチセは、たまに頼まれてどこかに手伝いをしに行く事はあったが、女の賃仕事、たかが知れていただろう。
それを思い出してケンは裏に作った畑に芋や大根、ネギ等、毎日食べるのに必要な物を植えていった。
姑はたまにどこかに出掛ける時以外はいつも自分の部屋に閉じこもっていて、家の中に話す人はいないし、一通り掃除してしまうと手が空いてしまい、後は自分でも慣れぬ家で何をすれば良いのか困っていた矢先だった。
畑を作る事は思いの他、楽しかった。
小さな草も一本一本抜き、少しの土地も無駄にしないように毎日畑の世話をした。
それはいつかケンの楽しみになって行った。
義母の所には時々義妹が訪ねて来たが、二人で暫らくおしゃべりをすると帰って行った。
ケンを仲間に入れたり話し掛けたりする事はなかった。
嫁ぎ先は歩いて行き来出来る近さなのだろうか。
小さい子が一人いると聞いたが、その子は嫁ぎ先の姑にでも預けて来ているのだろうか。
義妹と言ってもケンより三歳年上の義妹は、特別ニコニコ話し掛ける訳でもなく、それかといって意地悪な様子でもない。
ケンにしても義妹にしても義母にしても、ここの若い当主が急に招集されてバタバタと見ず知らずの若い娘を迎えていなくなった後、まごついているといった状態だったのではないだろうか?
やはり慣れるには時間がかかるに違いない。しかも一番しっかりしなければならない姑が、自分の息子だけはまさか戦地にとられないと信じて来ただけに腑抜けになってしまって寝たり起きたりの状態になっている事だった。
ケンは自分の出来る事を精一杯するしかなかった。
姑は半月程も寝たり起きたりフラフラしていたが、さすがにこうしてはいられないと床上げをした。
そして縁側に立って裏庭に作った畑を見て、
「まあ、一生懸命作りなさったのネ。ありがとう。
これから食料不足が厳しくなるっていうから、これは良い考えネ。」と言った。
姑にしては精一杯、ケンの働きを誉めたのだろう。
ケンも初めて嫁として褒められて嬉しかった。
ケンは増々この家の役に立つようにクルクル立ち働いた。
一ヶ月経ち、二ヶ月経ち、その頃から姑はケンの働く様子を気にして見ている事が多くなった。
「ケンさん、あんまり無理しなくっていんですヨ。体を休めなさい。」
そんな優しい言葉をかけてくれてケンの心は少し温かくなった。
三ヶ月程が経つと、義理妹と相変わらず何か話しあっているようだった。
ケンは母と娘の話には立ち入らずに畑や家の事をしているのだが、何か自分の事を話しているのではないかという気がして気にはなっていた。
そんなある日姑が、
「ケンさん、よく働いてくれるけれど、貴女、体の調子は大丈夫?
どこか具合の悪い所はない?」と聞いて来た。
「いいえ、どこも悪い所はありません。」と答えると、
「そう。」と言ったきりだった。
それからもケンの体調を気にかけるように離れた所からじっと見ている視線が気になったが、若いケンはそれを不思議に思いながらも気にしない事にした。
ずっと後になってケンはその時の姑の行動に合点がいったが、その当時若いケンには姑の気持ちなど解らなかった。
姑は嫁の体の中に新しい生命が芽生えていないか気にし期待もしていたのだろう。
それが半年も経つと、今まで気を遣っていたのをすっぱりやめたようにケンの様子も伺うような目もしなければ、逆に頻繁に外に出掛けるようになった。
姑という人は本来社交的な人なのかも知れない。
きっと暫らく会っていなかった女友達と外で会っているのだろう。
ケンはそう思っていた。
そんなある日、仲人に立った町長が、ケンが一人でいる時にひょっこり訪ねて来た。
「お義母さんは出掛けていて留守ですけど。」と言うと、
「解っています。実はこの間から圭介君のお母さんから再三頼まれていた事なんですが、その事でケンさんにお話があって来ました。」と言う。
ケンはお茶を出しながら、何事かとあらたまってその話を聞いた。
町長の話というのは、圭介の留守中、この家に家事をする為に二人の女は必要ないし、若いケンが家の中でじっとしているよりも外に出て働いてみる気はないかという事であった。
「急にそんな事を言われても何をしたら良いか戸惑うだろうと思って、圭介君の奥さんにふさわしい所をいろいろあたっていたんです。
なかなか楽できれいな仕事はありませんナー。結局私の知り合いの所なんですが、ここならどうかという仕事を今日は持って参ったんですが、ケンさん、気持ちはどうですかな。」
と町長は話した。
お義母さんは何故私にそんな話をしなかったのだろう?
何故当人の私のいない所で話を進めたのだろう。ケンはそう思ったが黙っていた。
町長が持って来たのは、歩いて通える距離にある病院の勤めだった。
まかないのお仕事ですか?と聞くと、まかないではなくて看護助手の仕事だという。
町長は善良な良識のある人なので、
「突然、こんな話をされてケンさんの気分を害されたかも知れないが、サクさんもまだ貴女に気兼ねがあるんでしょう。圭介君がいないこの家で年若い貴女とどう接して良いか解らない。狭い家の中に女が二人いたのでは世間の嫁姑のようにいらぬ諍いを起こしかねない。そうなる前に若い貴女に外に勤めてもらい、自分が家事をする。そうした方が良いと考えたのでしょう。」
と言った。
その時初めてケンは、
自分が姑の目からはかなり若い、若すぎる小娘に見えるのだろう。
はっきり言えば、大人の女同士として扱えない程、幼く見えるのではないだろうかと思った。だが、仮にも息子の嫁、ケン以上に戸惑っているかも知れない。
ケンはそう思う事にした。
そして、「解りました。町長さん、私何でも致します。
そうですよネ、お義母さんのおっしゃる通りです。家の中の仕事は一人で手が足りますからもしも働き口があったら、私は外で働いて少しでもお家のお役に立ちたいと思います。
宜しくお願いします。」と言った。
町長はホッとした顔で帰って行った。
夕方、姑のサクが帰って来たので、ケンは日中に町長が来て就職の話を持って来てくれた事を離した。
サクが一言、
「ケンさんはそれで良いのですか。」と言った。
ケンは、“はい”と答えた。
サクはケンをじっと見て、「そうですか。相解りました。」
そう言ったきりだった。
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