第7話姉達はヤンデレ


「何でお前達がここにいるんだ……!! 祭を楽しんでいるのではなかったのか!!」


 父親は現れた姉達に驚いていた、確かに驚くのだが、一体どうやって隠れてたのだろうか。

ここに隠れる場所なんてそんなないんだけど。


「まあ女の子が産まれれば、いつも通りに仲良くなっていくつもりだったんですけど。男の子が産まれたら心配で目を離す事なんて出来るわけないじゃないですかお父様」


「それにさ情報屋から聞いたけど、お父さんユウを誰かに売買するつもりだったんでしょ」


 クラ姉さんとルミ姉さんが話すと、父親はいきなり震え出した。


「そんな一体誰が情報なんて、まさかあいつらか、だから来ないのか」


「えっ……一体誰の話し?」


「多分あの時の人達だと思う」


「ああ、私達がボコボコにした人達の事か!!」


「残念ですがお父様、情報屋は私達の信頼する人物です、そんな野蛮な奴等などもう騎士団の牢屋にぶち込みましたよ」


「さすがは騎士団の団長クラ姉さん、クラ姉さんのおかげで簡単に牢屋行きになったよ」


「全く私抜きで行くなんて。でも……今度から騎士団前には置き去りにだけはしないで下さいね色々と面倒なんですから。まあ牢屋にぶち込んでから十発は殴りましたからいいですけど」


「あれ? 私達よりクラ姉さんの方がボコボコにしてないかな?」


 姉達の言動を聞いていると、どうやら父親が言っていた人物は、その騎士団に捕まり姉達にボコボコにされたと、もしかして姉達は怖いものしらずなのか。


「そんな、あいつらが捕まるなんて。何が信用できるだ全部嘘じゃないか!!」


 父親は地団駄を踏み悔しがっていた。


「それとあの時部屋に訪れたの私だからねお父さん」


「あの時、まさかあの確認をしに来たのはお前なのかミカロ」


「うん、あんまり騙したくはなかったんだけど、ユウの為だからね」


「まさか私が作った声を変える道具が、あそこで役に立つとは思えなかったけどさ、成功して良かったよまだ試作段階だからさ」


 声を変える道具とか、まるっきりあの推理探偵少年を思い出すのは俺だけだろうか、だがそんな事を考えている暇などない。


「あの時もお父様に報いを受けさせる事は簡単でしたが、さすがにあの部屋はお母様も使っている部屋なので血に染める事は躊躇いましたよ」


 血に染めるとか恐いよ、一体姉達はこれから何をしようとしてるんだ。


「ルンキ、ユウをお願い出来ますか。さすがにここから見せる事は出来ないので」


「はーい、ほらユウ。お姉ちゃんと行きましょうね」


 ルンキ姉さんに抱かれるとルンキ姉さんは抱きながら壇上を飛び越え他人の家の屋根に着地した。


「姉さん達、私にも残しといてよ」


 ルンキ姉さんは姉さん達に聞こえるように言うと、そのまま俺を抱き抱えたまま下に着地した。


「おい、止めろ、俺がいなくなれば家だって大変になるだろう」


「大丈夫ですよ、お父様がいなくなった後はお母様には他の人と結婚してもらい、その人がお父様の後継者となるようにしていますから」


「いつの間にそんな事が」


「そろそろいいよねクラ」


「ええ、いいですよ、シルから先でも」


「お父さん今度生まれ変わる時はもっと善人になった方がいいよ」


 シルはどこに仕舞っていたのか数メートルの斧を取り出し、父親の右腕を切り落とした。


「止めろ…!!止めろ…!! うわぁぁぁぁぁ!!」


「ああ、血でべちゃべちゃ気持ち悪い」


「残してないとルンキが怒りますからね、私は最後でいいので、皆で先にやって下さい」


「腕が……!! 俺の腕が!!」


「もううるさいな、まあ次で腕が無くなるから覚悟してた方がいいよお父さん」


 ブランはシルから斧を引き継ぎ振り上げた時に父親が勢いよく言った。


「止めてくれ…何でも言うことを聞くから…もう止めてくれ」


「そんな泣いて止める訳ないでしょ」


 そんな父親の言葉などは聞かず今度は左腕が切り落とされた。


「次は私ね、お父さんの足って汚いから触りたくないしどうしようかな」


「もう許してくれ、頼む」


「ああ、最高にいいことを考えた。これ見てお父さん」


「なんだそれは?」


 ルミは袋から芝刈機みたいな機械を取り出し、父親の足の部分に取り付けた。


「これはね人の肉をおやつに変える道具なんだって、この前ルンキが作ったんだけど。使い道がないって言ってたから私が貰ったんだよ。お父さんに使ってあげるね」


「待て……そんな事しないでくれ……!!」


「はい、スイッチオン」


「どうする皆……? お父さんの足から作ったグミとかクッキー食べてみる」


「良く食べれますねルミ、私は結構です」


「私もいらないよルミ姉さん」


「結構いけるんだけどな、クラ姉さんもミカロもいらないなんて。あれシル姉さん食べるの?」


「うん、少しお腹空いたから」


「私も私も食べる」


「不味い、ルミの味覚はおかしい」


「うぇぇ……本当だよルミ姉さん、なんでこんな変な味のクッキーが食べれるの」


「なんでお前達は平気な顔をしてるんだ、ミカロお前はおかしいと思わないのか」


「お父さんに育ててもらった事は感謝してますよ、でもユウを人に売ろうとするなんて、もうそんなのお父さんじゃないです」


「ああ、そんな」


「ミカロいいのですか、もう一本足が残ってますが」


「私はいいよ、でも遅いねルンキ姉さん」


「確かにそうですね、ルンキならそろそろ戻って来てもいい頃ですけど」


「ごめんごめん、遅くなっちゃった」


「戻って来ましたか、ルンキどうしたんですかちょっと遅かったようですが」


「なんでもないよ、只ちょっとしたい用事思い出して騎士団の方に寄って来たんだ」


「そうですか、ちゃんと出来ましたか?」


「うん、ちゃんと最後まで後処理してきたからもう何にも残ってないよクラ姉さん」


 クラはルンキの手に血がついている事に気づいたが、全てを察したみたいだ。


「私が最後にするので、ルンキはどこでも好きな所にしてもいいですよ」


「やった……!! どこにしようかなってお父さん泣いてるの? ああカッコ悪いなお父さん」


 ルンキはどこにしようか選んでいるみたいだ、だが父親が泣いている姿を見てそんな気持ちも萎えて。

一瞬で父親の心臓目掛けて、持っていたナイフで刺した。


 さっきまで娘達に命乞いをしていた父親はもう既にこの世界から消えた。


「うーん、好きな所をしても言いと言ったのは私ですが……まさか心臓とは」


 そんなクラは父親の心臓が動かなくなった事を知り、腰に差していた剣を抜き、父親の首を切り落とした。


「さあユウの所に行って祭を楽しみましょうか」


 クラは父親の首を投げ捨て、姉妹でユウの所へと戻っていった、そして路地裏に投げ捨てられた首があるのを街の皆は知らない。


 貴族カリック・マルシェ・ルナシーは祭の最中に隠していた病に犯され亡くなった事にされた。

その半年後マルシェ家に新たな父親が出来、そしてその父親と母親との間に、子供が出来るとは姉達でも予想できなかったこと。

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