第6話父親の計画
次の日になった。
既に部屋には誰一人といなかったのだが、誰かが部屋に入っていった、すぐに誰かが気づき注意しに行った。
「あの、ここは今誰もいないですけど、他の人が使っている部屋なので、勝手に入らないでいただけますか」
「失礼、少し用事があって訪ねたのですが、もう行ってしまったようですね」
その人は注意されると、すぐに部屋から出ていってくれたが、注意された人物は自分が血を流している事に気づかずに部屋から出ていった。
「おい、本当かよその噂」
「どうやら本当らしいぜ、まああれだけ悪さをしてればいつか捕まると思ってたけど」
「私が聞いた話じゃ傷だらけで、騎士団の前に捨てられてたみたいよ」
せっかくの祭なのだが、祭では噂話で盛り上がっていた。
「ほらユウも投げてみる?」
母親に抱かれながら、ルンキ姉さんがボールを渡してきた、ルンキ姉さんが最初に手本を見せてくれるようだ。
「こうやって投げればいいだけだから、簡単だよ」
ルンキ姉さんが投げたボールは店主の頭上を突き抜け、そのまま壁にめり込んでいた。
「全くルンキ何やってるのよ、ごめんなさい、これだけあれば許してくれますかね」
ルミ姉さんは、腰に巻き付けていた袋の中から金貨を出していた。
「いやいや、マルシェ家のお嬢さんから、こんな金貨を受け取る事なんて出来ませんよ、好きな景品を持っていってもらって結構なので」
「それではこうしましょう、この金貨を渡すので、ここにある景品を全て貰ってもよろしいでしょうか」
「本当にいいんですか、ここにある景品って殆どガラクタみたいな物で、金貨一枚の価値なんてありませんよ」
「大丈夫ですよ、それでどうしますか」
「それじゃあ、ありがたくいただきます。少々お待ちを今景品を袋に入れるので」
「袋なら大丈夫ですよ、ルンキあの袋を貸しなさい」
「ええ、まだ試作品で使えるか分からないよ?」
「いいから」
ルンキ姉さんはどこから出したか分からない袋をルミ姉さんに渡した。
ルミ姉さんは景品を袋の中に入れていったあんな小さな袋に全部の景品が入るなんて思ってなかったが、景品は全てが袋の中に入った。
「これだけ入るなら、まだ改良の余地はあるかな」
「皆そろそろ行くわよ、お父さんが待っているみたいだから」
母親に告げられ、姉さん達もすぐに行く準備を始めた。
そう言えばさっきからクラ姉さんの姿が見えないが、一体どこに行ったのだろう。
「やっと来たか、もうすぐ騎士団のパレードがあるから、その後に私がユウを抱いて壇上に上がり、皆に紹介する。それまでは皆で楽しんでおくといい」
「でも、もう騎士団すぐそこまで来てるみたいだよ」
「何、こんなに速く来るなんて聞いてないぞ」
「ほら、ユウ、あれがこの街を守っている騎士団なのよ」
母親が見える所まで抱き上げてくれて、騎士団を見ることが出来た。
だがその騎士団は昨日見た白い服を着て仮面を被っていた奴にそっくりだった、それが何人もいた。
「あぅ」
「お母さんユウが泣きそう」
「やっぱり子供には恐いのかしらね」
シル姉さんが気づいてくれると、母親に知らせていた、そんな泣く気などなかったのだが、シル姉さんにはそう見えたらしい。
「そろそろ私も行かなくてはな」
母親から離れ父親に抱かれると、父親は階段を上り壇上に上がっていった。
「皆の衆聞け、遂に私の妻が男を産んでくれた、この子の名前はユウ・マルシェ・ルナシー。この子が私の家督を継ぐ事は既に決まっている、皆の衆この子が大きくなるまではよろしく頼むぞ」
父親のスピーチを聞くと、下にいたこの街の住人達が盛り上がっていた、父親は俺を抱き上げ街の住人に見せていた。
すると父親は辺りをキョロキョロしだしていた。
「おい、一体どこにいるんだ、そろそろ計画を実行しないと失敗するだろう」
誰に言ったか分からないが、すぐに誰に言ったか分かった。
父親の横にすっと現れたのは昨日の白服仮面だった、下に見えないよう、隠れながら父親は話した。
「全く遅いじゃないか、何で騎士団に扮しているかはどうでもいい、すぐに実行するぞ」
父親が抱いていた俺を下にバレずに横にいる白服仮面に引き渡そうとしていた、それを阻止しようと、ジタバタと暴れた。
「おい、暴れるんじゃない。お前なんか産まれてこなければよかったんだ」
そんな事言われてもと思っていたところで、白服仮面に引き渡された、白服仮面はそのまま父親から一歩離れ、仮面を外そうとしていた。
「全くお父様も悪い人ですね、ユウを悪人に引き渡そうとするなんて」
その声に聞き覚えがあり、安心した、だからあの時からいなかったのか。
仮面を外し、顔を見ると、クラ姉さんはニッコリと笑顔を見せてきた。
「大丈夫ですよユウ、あなたを危険にさらす奴は私達が必ず報いを受けさせますから」
クラ姉さんの声を聞き、近くに潜んでいたのだろう姉さん達が全員姿を見せた。
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