第5話暗躍しようとしている
「それでユウ・マルシェ・ルナシーに決定したんだな」
「はいお父様、お母様もこの名前を気に入っており、もう皆で呼びあっているんですよ」
「そうか、そうか。ユウかこれからは色々教えていかなければいけないな、家の事情について」
「まあお父様ったら。ユウはまだ一昨日産まれたばかりなのですからそんな事分からないですよ」
「そんな事ないよなユウ。お前はもう立派な貴族だもんな」
そんな声と一緒に高く抱き上げた父親は顔を近づけてきたので、すぐにクラ姉さんに助けを求めた。
「たぁや」
「お父様ユウが嫌がってるので、そんなに顔を近づかせないで下さい」
「そんな、もしかしてもう嫌われたのか。そうじゃないよなユウ」
「うぅぅ」
「ああ、分かった分かった。クラどうすればいいんだ」
「何を言っているんですかお父様、私達を育てたのはお父様とお母様でしょ、自分でなんとかして下さい」
「そんな」
父親の試行錯誤するのを見ていると、昔の事を思い出した、確か小さい頃にも姉が悩んでいるのを見たことがあった。
姉さんは元気なのだろうか、まあ俺の事なんてもうとっくに忘れてると思うけど。
「そう言えばお父様、そろそろ祭の準備をしなくてもよろしいのですか?」
「もうやっているぞ、明日はユウを街の皆に初めて見せるからな、皆気になっているらしいぞ」
「そうですか、それでは私そろそろ用事があるので、後は任せますよお父様」
「おい待て。これから一体どうすればいいんだクラ」
「もう少ししたらご飯の時間なので、ミルクをあげたらすぐに眠くなりますよ」
父親とクラ姉さんが部屋から出ていくのを見ると、父親は近くにあった哺乳瓶を手に取った。
「もう作ってくれていたのか、さすが私の事が分かっているなクラ」
「あ、あ、あ」
「飲みたいのか仕方ないな、ほらゆっくり飲むんだぞ」
哺乳瓶を口に咥えて、ゴクゴクと中にあったミルクを飲みきった。
「それにしてもユアはどこに行ったんだ、クラに聞いても知らないの一言だったし、そんなに一気に飲むんじゃない」
哺乳瓶を取り上げられると、部屋のドアがノックされた。
「誰だ?」
「俺です」
「お前か計画は明日の筈だろう、何故ここに来た?」
「確認をと思いまして、明日はあなたが子供を抱いて壇上に登られるんですよね?」
「そうだ、その時がチャンスだ、いいか絶対に失敗するんじゃないぞ、失敗してしまったら、全てが水の泡なんだからな」
「それでは失礼します」
「全くこんな場所に来るなんて、まあ一人だったおかげで、計画はバレずに済んだがな」
一人じゃないんだがな、さっきの話を聞く限り、この父親は明日何かの計画を企てているらしい、それが良くない計画なのは明らかだった。
「なんだユウそんなに暗い顔になって、もっと明るい顔をしろ、明日はお前の為に祭りを開くんだからな」
そんな事を言われても、あんな事を聞いたら明るい顔なんて出来るわけない、プイッと顔を上に向けた。
すると天井からブラン姉さんの顔が見えた、ブラン姉さんもこっちに気づくと、人差し指を鼻に当てていた。
「ん……? 何か上にいるのか?」
父親も上を見ようとしたが、ブラン姉さんは消えた後だった。
その後ミルクを飲み終えると、クラ姉さんの言った通り眠くなってきた、すると丁度母親が部屋に戻ってきた。
「おいユア、ユウを放って今までどこに行ってたんだ」
「別に私がどこに行こうとあなたには関係ないでしょ」
「ふん、それより私はそろそろ家に戻って祭の準備が進んでいるかどうか聞いてくる。お前も明日は祭に出られるようにしておくんだぞ」
父親は怒りながら部屋から出ていった。
そんな時に窓の方から誰かがこちらを見ている事に気づいて、窓に目を向けると、そこには白服を纏い仮面を被った奴が窓に張り付いていた。
すぐに母親にも気づかせようとしたが、母親はベッドの方まで一直線に行き、窓に張り付いた奴などに気づかなかった。
「ごめんね今日は一緒にいてあげられなくって、明日はクラ達と一緒に祭を楽しむ予定だから、早く寝た方がいいわね」
窓を見ると、さっきの白服の奴は消えてしまい、夕方の夕陽だけが見えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます