第8話姉との思い出


「凄い、凄い。ユウが歩きましたよ!!」


 歩いたなんて大袈裟に言われたが、全然違う立ち上がっただけだ。


「クラ全然違う立ち上がっただけだよ……?」


「シルここは褒める所なんですよ。もう歩いたも同然です」


「諦めなよシル姉さん、クラ姉さんに言い負かされるだけだよ」


「さあ私が正しかったんですから、ユウを今日一日好きにしていいのは私ですよね」


 クラ姉さんに抱かれる。

 クラ姉さんはそのまま立ち上がり連れ去ろうとしていた。


「異議あり、今日はクラ姉さん騎士団にこの前捕まえた奴の事情聴取に行く予定があった筈だよ」


「そうですが何か悪いですか……?」


「悪いよユウを危険な奴の前に連れていくなんて」


「私が守りますから大丈夫ですよ。もしかしてあなた達は私がユウを守れないと思ってるんですか……?」


「そんなの思ってないけどさ、ああユウが立てるって言っておけばよかったな」


「まさか立てるなんて思ってなかった、ユウお姉ちゃんに内緒で練習してたんじゃないの?」


 ルンキ姉さんが頬っぺたを突っついてきた。

 

 まあ一年も経ったし立つことは簡単に出来た、立つことに久しぶり過ぎてプルプルと足が震えていた事はバレていないらしい。


「それじゃあユウ、お姉ちゃんと一緒に騎士団まで行きましょうか。道中に美味しいデザート屋台が何台かあるので、そこで何か食べましょう」


 まさかクラ姉さんは騎士団に行く気などないのではないか。


「じゃあ私達も道中までは付いていってもいいよね、どうせ騎士団には入れない訳だし」


「ダメです……!! 取り決めたではないですかユウを連れて行くときは姉一人だと」


「まさかクラ姉さん、あの時の事忘れたとは言わないよね?」


 ルミ姉さんが言った一言に、クラ姉さんは汗を掻き出した。


「い……一体何の話でしょう見に覚えがありません」


「そうやって逃げるの? じゃあ今度からクラ姉さんにだけ売ってあげないよユウの秘蔵写真」


「それは止めてください!? ユウの成長写真が揃わなくなるじゃないですか!?」


 まさかいつの間に写真なんて撮られたんだ、それにそれを言うって事は結構撮られてるし買ってるんだな。


「それじゃあ私達も付いていっていいよね」


 ニッコリとルミ姉さんは笑っていた、クラ姉さんははあと息を吐き。


「仕方ありません……ですが!! ユウの写真は多く売ってもらいますからね」


 どうやら姉達が同行する事が決まったらしい、クラ姉さんに抱かれながら外を歩く、甘い匂いが漂ってくると、何台かの車が停まっていた。


「ユウは何か食べたい物はありますか?」


 クラ姉さんが聞いてくると、俺はある屋台に目が止まった。


「あのソフトクリーム屋台が気になるのユウ?」


 シル姉さんが気づいてくれたみたいだ、姉達はすぐにソフトクリーム屋台に集まりメニューを見ていた。


「ここはバニラにするべきですね!」


「違うチョコ!」


「私はこのカレーが気になる」


「ルミ姉さんって本当不思議な味の奴頼むよね、私はバナナかな」


「えーここはミックスでしょ!!」


「ユウはどの味が食べたいのですか?」


 ミカロ姉さんがメニューを見せてくれた、ここは決まっているだろう、この味だと書いてある場所に指を差した。


「抹茶ですか? 何故でしょうユウにぴったりな気がします」


 味を選ぶとクラ姉さんが注文してくれた、屋台の店主がソフトクリームを一つクラ姉さんに渡していた、あれなんで一つしかないんだ。


「さあユウ一口どうぞ」


 クラ姉さんにあーんされ抹茶のソフトクリームを一口舐めた、この味思い出すな、昔に姉さんと一緒に食べたのを思い出す。


「何、ゆう? ソフトクリーム? そんなの買うわけないでしょ、いいからちゃんと持ちなさいよ、私の買った服落としたら承知しないからね」


「俺が奢るしさ、ここのソフトクリーム美味しいって評判なんだよ」


「ゆうの奢りか、まあいいよ味は勿論抹茶よ、私達は日本人なんだから」


 そう言われ買ったのだが、抹茶は残り一つと言われ、違うのにしようとしたのだが姉に止められ、抹茶一つだけ買ったのだ。


「うーん確かに美味しいわね、ゆうも食べてみなさい」


 間接キスを気にしないのか姉はと思って、一口舐めると姉に奪われた。


「一口舐めたなら後は私のよ!」


 姉はそのまま抹茶ソフトクリームを平らげてしまった、何だよこんなの嫌な思い出なのになんで今思い出してるんだよ。


「ユウ泣いてる」


「ええ!? どうしたらいいのですかシル!?」


 クラ姉さんは少し泣いているのを見ただけで、弱気になっていた。

これは悪い事をしたなと思い泣くのを止めようと必死だった、するとミカロ姉さんが頭を撫でてきた。


「子供が泣くのは当たり前です、いいんですよユウもっと泣いても」


 なんか安心するな、この撫でられる感触、姉さんに撫でてもらってた時に似てるな。


「うぅぅぁぁぁぁぁぁん」


 大声で泣くと、抱いていたクラ姉さんはおろおろしてシル姉さんは見守っている。

 

 ルミ姉さんとルンキ姉さんはおもちゃで泣き止ませようとしていた。

 

 ブラン姉さんは抹茶ソフトクリームを食べさせようとし。

 

 ミカロ姉さんは笑顔で頭を撫でてくれた。


「寝ちゃいましたね」


「あんなに泣いたら疲れちゃうのは当たり前」


「まさかミカロがあんな事言えるなんてね」


「私の作ったおもちゃでも泣き止ませる事は出来なかった、もう少し考え直さないと」


「あーあ溶けちゃった、また今度食べさせてあげよ」


「どうしましょう泣かせちゃいました」


 色々な言葉が飛び交い。

 

 ミカロはこの世の終わりみたいな顔になっていた。


「それでは私はこれから騎士団に行くのでこれで」


 寝てしまったユウを抱き、クラは騎士団に向かおうとして、姉達はそのままユウの事が心配なのか付いていこうとしていた。


「いいですか、付いてこようとした者から、もうユウとの接触を禁止しますよ」


 クラの一言で姉達は立ち尽くすのだった。

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