【短編】ツインテール女王様の皮をかぶった美少女の中身は超弱気

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

第1話

甘々でちょい変態の■許嫁■が俺を≪ダメ人間≫にする

https://kakuyomu.jp/works/16816700429549536659

のスピンオフですが、単体でも楽しめるように配慮しています。

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六連星(むつらぼし)朱織(あかり)。

彼女は、ある意味、人々の期待に応え続ける心優しい人だ。


それが、自分自身を傷つけることになっても、彼女はその姿勢を崩さない。

例えば、高校1年の1学期に彼女が転入してきたときのこと。

教室の黒板の前に立って挨拶をしたときも……




(ひそひそひそ)

『つり目って気が強そう……』

『いまどきツインテールってアニメじゃないんだから……』

『パッと見、意地悪そうだけど、本当はどうかな……』




彼女が口を開く前から、教室内では噂をしていた。

それだけ彼女の容姿が優れていたことの裏返しでもある。


彼女は、ツインテールの片側を翻してこう挨拶した。




「私、六連星(むつらぼし)朱織(あかり)。可愛い子とだけお友達になってあげるね」




そんな、とんでもなく上からの挨拶で彼女は、すぐにクラスで孤立した。


ツインテールって言うんだろうか、両脇で髪を結んでいて、幼い印象の彼女だが、顔はすごく整っていて、控えめに言っても美少女だった。


上からの物言いだが、彼女の容姿の良さからクラスのヒエラルキーの中では、上の方だが、『どこにも属さない』特別な存在となっていた。


彼女はいつも一人。

誰とも挨拶すらしない。


最初のうち、挨拶していた女子たちも段々と誰も声をかけなくなった。

入学から1か月もしたら、誰も話しかけることが出来ない『我がまま女王様』のキャラ付けになっていた。


今思えば、彼女自身も自分を演じていたのではないだろうか。






■豊田晄士(とよたあきと)

僕は、豊田晄士。


中学から勉強しか取り柄がなかったけど、受験に失敗して今の高校に来た。


志望校以外は学校とは考えていなかった僕に、この高校は何か意味があるのか・・・

もう正直、なんでもいいと思っていた。


絶対受かると思っていた驕りもあったのかもしれない。

抜け殻になった僕に何か価値があるのだろうか。

なんで僕、ここにいるのか・・・


クラスに溶け込むこともできなくて、一人孤立していた。






僕が彼女の自己紹介の次に、彼女を見かけたのは学校の帰りがけの公園。

あのとても印象的な自己紹介の後、彼女は机について一切誰とも話さなかった。


帰りがけの児童公園で見かけた時、彼女は泣いていた。

号泣だった。


遠くから見ても声が聞こえるくらいに泣き叫んでいた。



「うわーん!なんであんなこと言っちゃうの―!?お友達になりたかったよー!」



遠くからだったが、特徴的な髪形と、シルエットからすぐに彼女だと分かった。

同級生が号泣している場面なんて初めて見た。


泣いているところを見られるなんて嫌だろうと思って、僕は、気付かないふりをして通り過ぎることにした。

ただ、公園には入ってしまったので、彼女からすごく距離を置いて通り過ぎる。




僕の顔を見ると、彼女はぐじぐじと涙を拭いて言った。



「あ、実力テスト学年1位の人!」



勉強しか取り柄のない僕にぴったりの呼び方。

他に特徴はないってこと。


別に悪口でもないし、甘んじて受け入れよう。

僕は認識されてもその程度なのだ。



「一番たくさんの人と話す人!」



驚いたことに、彼女は第二声も出た。

たしかに、学年一位になったことで、色々な人に話しかけられた。

別に話したかったわけじゃない。



「みんなが嫌がっていたクラス委員を引き受けた優しい人!」



彼女は意外と僕のことを知っていた。

たまたまだろう。


僕は彼女のような『女王様』に覚えられるような存在じゃない。

勉強しかできない人。

そして、高校受験に失敗して、ランクを落とした学校に通うしかない人なのだ。



「豊田晄士(とよたあきと)くん!」



驚いたことに、彼女は僕の名前まで憶えていた。



「きみは六連星さん……」


「座って!豊田晄士くん」



彼女が、公園のテーブルにつくことを促した。

フルネーム呼びかよ……

そんなことを思いながら、彼女に促されて木製のテーブルとセットになった椅子に座った。


とにかく彼女は僕にたくさん話しかけてきた。

クラス内の『女王様キャラ』はどこに行った!?



「朱織、バカだから、頭いい人と話したことなくて……」


「僕も別に頭がいいわけじゃないよ。単に成績がいいだけ……」


そう、ただ学年一位になっただけだ。


「違うの?」



六連星さんが不思議そうに首を傾げた。

かわいい子は、首を傾げるだけでかわいい。

世の中は不公平にできている。



「頭のいい人は、問題を自分で解けるだろう。僕は、解き方を覚える記憶力と、事務処理能力が高いだけだよ」


「ごめん、朱織には分からないや」


「……六連星さん、僕に何か用なんでしょ?」


「そう!そうなの!朱織に友達ができる方法を教えて!」



そんなの僕が知りたいくらいだ。

もしかしたら、クラスの中でもっとも聞いてはダメな人に聞いているのではないだろうか。


だって、僕はボッチで、彼女は孤立。

二人とも友達が一人もいないのだから。


ただ、僕と六連星さんは出会ってしまった。

それは、1人と1人ではなく、2人ということ。


二人でいれば、3人目、4人目と集まっていくかもしれない。



「まず、僕たちが友達になるというのはどうだろう?


「さすが天才!もうお友達ができるのね!」


「うん、そして、仲良くしていたら、その雰囲気に誘われて、3人目、4人目が来るという作戦なんだけど……」


「さすが学年一位!朱織じゃ思いつかなかった!」




とりあえず、友達の証として握手してみた。



「んーっっ!!」



突然、六連星さんが奇声を上げた。



「大丈夫!?」


「お友達っていいね!一緒に問題を解決できるしね!」



僕は、友達は要らないと思っていたけれど、六連星さんの容姿に惹かれたのか、はたまた、本当は友達が欲しかったのか、彼女と友達になった。


そして、更に友達を増やそうと考えているのだ。


ただ、残念ながらそれからしばらく特に進展はなかった。

僕と六連星さんが一緒にいる機会が多いので『あの二人は付き合っている』という噂が流れ、その期待に応えた六連星さんが、余計に僕と一緒にいるようになった。


お互いの呼び名も晄士(あきと)と朱織(あかり)になった。





■友達候補発見

朱織が友達候補を見つけてきた。

転入生の堀園(ほりぞの)さくらさんだったか。


彼女は、元々クラスにいる鳥屋部(とやべ)セリカくんの許嫁らしい。

転校は家庭の事情だろうか。


とにかく、向こうがカップルならこちらからもアプローチがかけやすい。


堀園さんが一人になったタイミングで朱織が『行ってくる!』と気合を入れていた。

僕はとりあえず、遠くから見守ることにした。






■堀園さくら視点

私は食堂のテーブルについて、セリカくんを待っていた。

手持ち無沙汰だったので、とりあえず食堂の自販機で紙パックのジュースを買った。


『ロシア風イチゴジャム入り紅茶』


なんか、すごいのを買ってしまった・・・

ストローを刺して一口飲んだとき、もう一度同じことを思った。


あの自販機は、中々攻めた商品ラインナップ。

また買いに来きましょう。


セリカくんをぼんやり待っていると、目の前から長いツインテールの少女が歩いてきて目の前の席に座った。


六連星朱織さんといったか。

クラスの女王様的な存在。


たくさんあるテーブルの中で、しかも私の目の前に座ったということは、私に用事があるということだろう。



「堀園さん、それ美味しそうだね。朱織に一口ちょうだい」


「どうぞ」



どうぞ、と言ったときには、六連星さんは、もうストローに口をつけていた。


中々の女王様。

六連星さんが一口飲んだ後、ジュースが目の前に戻ってきた。



「あ、朱織、これ好きかも。堀園さん、全部ちょうだい」



ここで、この笑顔。

やっぱりすごい。



「どうぞ」


「わーい、堀園さんありがと」



(ちゅーーーーー、ぞぞぞぞぞ)


一気飲み・・・



「堀園さん、笑顔が可愛い」


「ありがとございます」



ここで六連星さんの顔が近づき、表情が一気に冷たくなった。



「でも、お人形みたいでつまんない」



一言だけ言ったら、まだ椅子に戻った。



「この顔は、生まれつきですから」


「・・・」


「・・・」



重たい沈黙。



「鳥谷部くん、最近急にかっこよくなったね」


「皆さんが気づかなかっただけかもしれませんね」


「晄士(あきと)には負けるよね?」



『晄士(あきと)』とは、豊田晄士(とよたあきと)さんだったか。

六連星さんの彼氏さんだったかな。



「さて、どうでしょう?」


「朱織ね、一番が好きなの。何でも一番を集めてるの」


「いいご趣味ですね」


「鳥谷部くんいいね。朱織にちょうだい!」


「セリカくんは、イチゴ紅茶ではありませんので」


「本人がいいよって言ったらいいの?朱織(あかり)取っちゃうよ?」



一番弱いところを、的確に見つけ出し、突いてくる。

天性のいじめっ子。

根っこからのいじめっ子だろう。


その容姿の可愛さから、周囲に甘やかされて育ったのが予想できる。

まさに女王様。



「鳥谷部くんもーらいっ」


「ダメ―っ!セリカくんは私のーっ!」


「堀園さん、そんな顔もするんだね。ふふ、お人形さんじゃないんだ」


ニヤリと笑った顔。


「・・・」


「朱織は、そっちの方が好きかな。お友達になれそうね。堀園さくらちゃん」


「ご期待に添えますかどうか」



六連星さんは、長いツインテールを翻して行ってしまった。





■豊田晄士(とよたあきと)視点

今日も朱織は、僕の家にきていた。



「(えぐえぐ・・・)ふえーん、晄士ー!なぐさめてー」


「どうしたんだい?朱織」



また朱織は泣いていた。

朱織の頭をなでると、猫が頭をなでられた時のように、目を細める。

うーん、かわいい。


食堂でのことはうまく行かなかったのだろうか。

遠くから見ていたので、一言一句聞こえた訳じゃない。



「堀園さん、めちゃめちゃ怖かった・・・」


「どうせ、また朱織からちょっかいかけたんだろう?」


「違うの!堀園さんとお友達になりたかったのー!」



それはわかる。

堀園さんはかなりかわいい感じだった。

朱織の友達として、これ以上ないくらいの人材だ。


ただ、朱織が特定の人物に固執するのが珍しい。

みんなと友達になりたい朱織は、ある意味誰とでも仲良くなりたいように見えたのだ。



「珍しいな。朱織が。それでどうだった?」


「うん、堀園さんとってもいい子だった。可愛かった。」


「そっか、じゃあ、仲良くしないとな」


「うん♪」


朱織の笑顔は花が咲いたようだった。

僕は、何としても、朱織と堀園さんを仲良くしたいと考えていた。


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よかったら、★★★をお願いします。


本編の甘々でちょい変態の■許嫁■が俺を≪ダメ人間≫にする

https://kakuyomu.jp/works/16816700429549536659


も覗いてみてください。

六連星さんと堀園さんのその後も描かれています。

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