第18話 冒険者組合への帰路

 日はまもなく暮れる。門が閉まったら食料なしで野宿になる、急がねば。しばらくし門が見えてきた、よかったまだ開いている。門の前には衛兵とエルフロックさんが立っていた。


「おーい、お帰りなさーい」


 手に持ったカンテラを揺らしながら呼びかけてくる。


「お疲れ様です。だいぶドロドロになってますね、あとの手続きは私の方で済ませておきますのでカメリアボアは預かりましょうか?よろしければ湯屋でゆっくりしてきてください」


 他の4人に目配せをする、ヴィエラが首を横に振る。


「大丈夫よわたしたちで運ぶわ」

「と、いう事みたいなんで大丈夫です」

「分かりました。私も組合に戻るのでご一緒してもいいですか」


 エルフロックさんを含む6人で組合を目指す。


「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!ロゥが別の人とパーティー組んでる!!!」

「この声は!」


 レニの大声が聞こえるとヴィエラが反応する。レニの姿がぶれ目の前に現れる、見慣れた光景だ


「ね゛ぇ゛!う゛ち゛の゛パ゛ー゛テ゛ィ゛ー゛入゛る゛ん゛じ゛ゃ゛な゛い゛の゛!!」

「だぁぁぁ!耳元で叫ぶな!鼓膜が破れる!」


 腕に取り付いたレニを振り払う。あぁ、右耳がなんも聞こえない…


「ちょっとレニ!わたしの事を無視するつもり!」


 ヴィエラが私とレニの間に割って入ってきた。さっきも反応してたし知り合いなのだろうか。


「えっ、誰」

「なっ!」


 レニの返答にヴィエラが絶句する、レニの顔を見るに本当に心当たりが無さそうだ。


「本当にわたしの事が分からないのかしら…」


 ヴィエラの口調に怒気が混ざる


「ごめん、本当に分かんないや」

「あなたのライバルであるヴィエラ=マクナルを忘れたと言うの!」

「……えっ!ヴィエラだったの!?」

「やっぱりレニの知り合いなのか?」


 レニに尋ねる


「あぁ、うん。うちね隣のオークの町から出てきたんだ。そのオークの町に一つだけある行商品を売ってるお店の子なんだ。うちのママが元冒険者で町の子供に戦い方を教えててヴィエラも来てたんだ。一緒に訓練してたけど昔はツインテールだったから気づかなかったよ」

「まったく、もぅ、本当にあなたは…。わたしに何も言わずに町からいなくなったと思えばここで冒険者になっていて、後を追えば1年で5級になっているって。全く理解できないわ」

「あははは…」


 ヴィエラの言葉に乾いた笑いをするレニ、というより1年で5級まで上がったのか。だいたいどれくらいで上がるかは知らないが6級以下の冒険者が大多数を占めているのだから規格外であることに間違いはないだろう。


「そんなことより、ロゥ!どうしてヴィエラのパーティーといっしょにいるのさ!」


 そんなことを言いながら刀の柄に手をかけわずかに刀身を抜く


「まてまて刀をしまえ。今回は臨時のパーティーだから。急に強いパーティーに参加してもどれだけ立ち回れるかわからないし危険だろ?な、だから刀しまえ」


 小首をかしげ少し考えた後にレニは刀をしまう。あぶねぇあぶねぇ…


「そうだったの?てっきり本加入かと思っていたけれど…ひっ」


 ある程度状況を理解したヴィエラが冗談交じりにそう言うとレニが目にも止まらぬ速さで刀を抜き去る。おい、ヴィエラが怯えてるぞ!あと目のハイライトoffになってるぞ!


「ヴィエラ…それだけはダメだよ…ロゥも…うちに嘘ついたの?」


 エルフロックさん助けてくれ!アイコンタクトを送ると理解してくれたのか


「大丈夫ですよレニさん!今回の事は私からイチタロウさんに臨時パーティーの依頼をしたので。打ち合わせの際もすでに声は掛けられているって言ってました!」

「そうなんだ!ならいっか!「良くない」あてっ」


 突然レニの頭上に現れた目隠しをした女性がレニを小突く


「も~なんなのさぁ…あっ、ルーチェ」

「勝手にいなくなって。ほら、帰るよ」

「あぁ待ってよ~。ロゥ!絶対他のパーティーに入っちゃだめだからn「それを決めるのは本人」あうっ」


 腕をつかまれ引きずられながらも念押しをして来る、私にそこまでの価値はあるのかどうか…ヴィエラ御一行はまだ固まってるよ


「おーい、大丈夫か。レニなら帰ったぞ」

「……っは!な、なに!」

「いや、レニは帰ったぞ」

「え、えぇそうみたいね。早く組合に向かいましょう」


 荷車をハイマーに任せて全員で組合へ向かう。組合のドアを開けると他の冒険者が積み荷を見てひそひそ声で話しだす。


「おい、あいつら老齢狩ってるぞ」

「確か10級のパーティーだよな」


「エルフロックさん、やっぱり老齢の個体は狩れたら凄いものなんですか?」

「うーん、どうだろう。確かに魔法を使ってくるからそれなりに実力は必要なので凄いことですが今聞こえてくる内容に関しては「割に合わない獲物狩ってるぞあいつら」っていうニュアンスが正しいですかね」

「ちょっとまて、値段変わらなかったりするのか」

「えぇ。何なら少し安いです」

「俺たちが頑張って倒したのに…」


 ちょいまてべリス。お前老個体の討伐に参加してないだろが。そんなこんな会話をしながら荷車を奥の昇降機に乗せて解体室へ上げる、解体や査定などをしてもらい支払いは明日になるとの事だ。べリスが限界みたいなので打ち上げはせずに解散した。


 教会に戻ったら2人の二つ名について尋ねてみるか

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る