第17話 強襲カメリアボア
「今回はわたしたちで倒すわ!イチタロウは後ろで見ていなさい!」
ヴィエラがそう言いクォンの後ろにつく
「俺たちの連携を見ておくといい!」
ハイマーが自信満々に言い両手剣を構える。足音が大分近い、来るか。
クォンが竪琴を弾きバフをかける、一度に強力なものをかけると感覚が鈍るようで中程度の効果を持つものを多重掛けする。そして別の弦を弾きクォンの正面に人間大の白いタワーシールドが召喚される。なるほど、魔法で盾を召喚するタンクなのか。べリスがタワーシールドを飛び越えるとドカッという鈍い音が鳴る、その音に合わせてクォンはタワーシールドを解除しハイマーが正面から、ヴィエラ・べリスの2人がサイドから襲い掛かる。えっ?私?私は現在何もせず後ろで見ています。
4人の連携はしっかりととれていた。クォンが竪琴を弾きカメリアボアのヘイトを稼ぐ、突進して来るボアを先ほどとは別の片手で構えられるサイズの盾で受け、ひるんだところでハイマーが両手剣で顎下からすくい上げるように斬る。ヴィエラは右手で順手に構えた短めの片手剣で斬りつけると同時に風魔法を発動し風の刃で切り裂く、ボアが土を蹴った際に飛んでくる土や石は左手で逆手に構えた短剣ではじいている。べリスは先端が鋭利な短剣を使っておりボアを刺していく、しかしほとんどの攻撃はカメリアボアの毛や皮を裂く程度で大きなダメージとはなっていないヴィエラの風魔法とハイマーの攻撃がわずかに出血させているだけだ。
「ヴィエラちゃん!攻撃あんまり効いていないみたい!まだしばらくは耐えられるけど魔力切れになるかも!」
ボアの突進を盾で防ぎながらクォンが叫ぶ
「イチタロウ!後ろから見ていてどこがダメージ入っているか教えなさい!」
ヴィエラ絶えず攻撃を加えながら言う。ダメージが入っているところか…
「見たところハイマーの攻撃が一番効果があるように思える、べリスの攻撃は挑発にもなっていない。ヴィエラは足を攻撃して機動力を削ぎべリスが傷を広げる、クォンとハイマーは今のままで良い」
「「「「わかった」」」」
4人が声をそろえるとヴィエラ、べリスが足に攻撃を始める、突進のすれ違いざまに魔法で切り裂き刺突でダメージを蓄積、突進に合わせて攻撃をしているため先ほどより効いているのかボアの動きが鈍くなっていく。べリスは隙を伺いながら攻撃を加え即離脱を繰り返しているため消耗が激しい、肩で息をし汗をぬぐう。
「ブモォォォォッ」
ハイマーの斬り上げをくらったカメリアボアが後ろに吹き飛び倒れ暴れる、ボロボロの顎下に対しヴィエラが魔法を放ちハイマーが狩りゲーの溜め3の如き大振りで頭を落としにかかる。ズドッという音と共に両手剣の刃がボアの首の半分ほどまで入り込む、カメリアボアは痙攣し絶命した。
「ど、どうよ、私、たちの、連携、は、ハァハァ」
剣をしまい地面に座り込むヴィエラが私に向かってそう言う。他のメンバーも座り込んだり大の字で寝転がったりで息を整えていた。ここまでくると何もしていないのが非常に申し訳ないのだが……
「いや、凄かったよ。正直今日は君たちのお守り役なのかと思ってたから」
「なに、よ、失礼ね。年下、でも、あなたより、よっぽど、経験はある、のよ」
「本当にお疲れ様。血抜きはやっておくからゆっくりしてて」
頷くとヴィエラも大の字になる。べリスは限界なのかうつ伏せで体を上下させているよ。さて血抜きするか。首の下の頸動脈に刃を入れるのだが…ハイマーの一撃で切れている、周囲に川がないので血が広範囲に広がらないよう穴でも掘るか。木の下に小さな穴を掘りカメリアボアをつるす、抜き終わったらクォンに氷魔法で凍らせてもらおう。近くに水場がなかったから臭くなるとは思うが、まぁそこは初めてという事で大目に見てもらうか。
突如草木が揺れる音が少し離れた場所でし、開いた手ほどの大きさの土塊がクォンに飛来する。
「ホワイトカーテン!!」
反射的に魔導具を詠唱し起動、土塊を霧散させる。持っててよかった『ホワイトカーテン』ってボケてる場合じゃない、土塊の発射地点に弾丸を撃ちこむ。「プギィィ」という鳴き声がし無傷の白毛が混じったカメリアボアが2頭茂みから顔を見せる。
「4人とも動けるか!」
2対1は流石にまずい
「私はなんとか行けるわ」
「俺はギリギリ動けるぞ」
「俺、は、まだ無理だ」
「私も…少し厳しいですぅ…」
ヴィエラとハイマーはかろうじで動ける感じか
「ヴィエラ、魔法で片方のタゲをとってくれ、その間にもう1体は片付ける」
「任せなさい!」
片手剣を素早く4度振り風の刃をぶつけ命中したボアが少しひるむ、これで1対1だ…と思った瞬間、「ヲォォォォォ」と魔法を受けたボアが嘶き両前足で地面を強く踏み込むと私と4人を分断するように高い土壁を木々をなぎ倒し生み出す。
「キャ!」ドンッ!ドサッ、「「「ヴィエラ!!」」」ヴィエラの悲鳴と何かが物にぶつかり落ちる音がし3人の声が聞こえた。
「大丈夫か!!」
「…」
返事はない、かすかに3人が安否を確認している声が聞こえるだけだ。相対する2頭のカメリアボアが笑っているように見える、こいつらが老齢の個体か。相手方にこちらの武器特性はまだ知られていない、初弾で1頭仕留めるしかない。
距離は50mと少しくらいでスコープを覗き込む時間が惜しい、スコープとサイレンサーを外し狙い撃つ。ホロサイトやドットは好きじゃなかったからアイアンサイトで狙うのは慣れてるんだよ!!「バーン」…銃声が響く、命中した1頭は地面に倒れ痙攣しもう1頭は音に驚きたじろんでいる。残り1頭。
素早く2頭目を狙うと残ったカメリアボアも動き出す、突如足場が隆起し後ろに吹き飛ばされた、反動で銃を手放してしまう。カメリアボアは自身の周りにいくつかの土塊を浮かせ発射体制に入っている、銃を拾っている時間はない……左腰に吊るしている魔導具に手を当て錬金術を使う。魔法の応酬が始まる。
カメリアボアは初撃の大きな土塊ではなく小さいものに変え投げた野球ボールのような速さで撃ち出してくる、私はこれを空気を固め迎撃するがいかんせん数が多いので反撃にまで移れない。業を煮やしたボアは「グウォォォ」と叫ぶと土塊を飛ばしながら突進してくる、おいおいそんなことできるのか!!回避行動に移ろうとすると足元が泥沼になり膝まで沈む、くそがっ!
勝ちを確信したかカメリアボアは土塊を止め体中に土を鎧のごとく纏う。
「こんな負け方してたまるかよっと!」
私は叫び右手を地に着き錬金術を発動、さんざん足元を狙われたお返しだ。カメリアボアの目の前に大きな穴をあける。錬金術は等価交換、残った土はどうしたって?それはもちろん……カメリアボアが穴に落ちると同時に土の槍が体を貫く、最後のあがきか土塊を撃ち出そうと魔力を練っている。
「おぉぉぉぉぉ!!!」
上空からハイマーが降ってきた、それも両手剣を振り下ろしながら。老齢のカメリアボアの頭が落ちる、た、助かった……。
「すまんハイマー。助かった」
緊張がほぐれホッと一息
「いいってことよ。なんたって最強の両手剣使いだからな!」
ハイマーは鼻高々にそう言う。魔法を発動したカメリアボアが死亡したため土壁が霧散する、使用者が死ぬとこうなるのか。ん?足が抜けない。下を見ると泥沼が固まっている、それはないだろ。ハイマーに血抜きをお願いし後の3人に協力してもらい足を掘り返す、頑張ったのにしまんねぇな。
血抜きを終えクォンに凍らせてもらい荷台に積む、クエストはクリアだもう帰ろう。カメリアボア3頭を乗せた荷車を引きながら都市へ帰る、べリスはダウンしていたのでハイマーとの2交代で……
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