第15話 レッドフォードの実力
さて、今日は何を受けようか。10級に上がった翌日、クエストを探すためクエストボードを眺めている。ほとんどのクエストがパーティ推奨でソロ向けの物は朝早くにもっていかれる、カウンターで相談してみるか?10級のカウンターへ向かう。
「お疲れ様です。クエストの受注ですか?」
「すみません、臨時のパーティーを探しているんですけど」
「パーティーをお探しですね、術石を確認させていただきます。あっ、この方なら…担当者を呼んできますのでお待ちください」
対応してくれた女性の職員が頭を抱えている男性に声をかけるとパッと笑顔になりこちらへ駆けてきた。
「あなたがパーティーを探している冒険者でお間違いないですか!」
「あ、はい、臨時ですが…」
かなり食い気味でくるからたじろんでしまった。
「いやーありがたい。因みにクエストは明日になりますがよろしいですか?」
「えぇ、大丈夫です」
「助かります。このパーティーは実力はそれなりですがプライドが高くてですね…。自分たちより高位の冒険者と組みたがらないんですよ」
おいおい、そんなこと先に言うかい。まぁ最悪挨拶だけしてあとは無言を貫けば問題はないだろう。
「あぁそうだ僕の名前はエルフロックです。10~6級のパーティーを担当しています。正式加入の際も私が担当しますので宜しくお願いします」
エルフロックさんからパーティー詳細やクエスト内容を聞き組合を後にする。やることもないし教会に戻るか。
「おや、今日はクエストに行かなかったのかい?」
教会に戻るとレッドフォードが訪ねてくる。
「今日ソロ向けのクエストがなかったんですよ、明日臨時パーティーを組んでいってきます」
「そうなると今日は暇かい?」
「まぁそうですね」
「だったら僕は準備してくるから装備の点検を終わらせておいてよ」
ポーチの中を確認していると神官服を脱ぎカーゴパンツにブーツ、灰色の半そでシャツ姿だった。いつもはおろしている肩まである後ろ髪も1つに縛っている。
「やけに軽装ですね、大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫、この服はモンスターの皮を剥いで仕立ててもらったものだから。それに今から行くところでは攻撃なんてくらわないよ」
ドーン!ズズズッ…ガラガラッ
レッドフォードの拳をくらった3mほどある角の生えたオーガが吹き飛び遺跡を破壊する。
「いやー軽い軽い、サイクロプスのほうにしたらよかったな」
魔法で光の剣を出しものの数秒で解体する。あ、言い忘れてたけどここは巨人の森、1級冒険者がパーティーで挑む難易度を誇るエリアだ。「じゃあポータルで飛ぶからこっちに来て」と言い大都市エルダーへと転移し巨大な鳥の背に乗ってここまでやってきた。
「イチタロウくんの武器はボウガンなんでしょ、ちょっと使ってみてよ」
「えぇ、あのサイズに効くとは思えないんですけど…」
「ほら、あそこ」
レッドフォードの指さす方向で2体のオーガが争っている。スコープとサイレンサーを装備、頭部を狙う。ヘッドショット、サイズが大きいから外さないよな…って普通に動いてるんだけど!あっ、もう1体のオーガに殴られてよろめいた。あの体躯に殴られてよろめくだけで済むのにレッドフォードは吹き飛ばしたのか…
「うーん、ダメージは入ったみたいだけど足りないみたいだね」
「まぁこのサイズの弾ですからね、一発で仕留めるならもっと大きくないとダメかなと」
銃弾を1発レッドフォードに投げて寄越す。いろいろな角度から観察した後ポーチから指輪を取り出し指に嵌めた後銃弾に魔力を込める。
「はい、これでもう1体も撃ってみてよ」
見た目は特に変わらない、1発込めで装填し狙いをつけトリガーを引く。ドゴッ!弾丸の発射と共に銃口と装填口から激しい熱波が噴き出し顔の右半分を焼くと同時に反動を抑えきれず後ろに吹き飛ぶ。
「イチタロウ君!!!」
大慌てでレッドフォードが駆け寄ってくるのが見える、片目で薄っすらとだが。レッドフォードが白い手袋をし私に回復魔法をかける、視界が開けてきた。
「すまないイチタロウ君、少し調子に乗りすぎてしまったみたいだ」
「あ、いえ」
深く頭を下げるレッドフォード、気まずい
「あ、でもオーガは倒せたみたいですよ」
話を逸らす。レッドフォードなりに考えてやってくれたことだ怪我を負いはしたがもう後は残ってないし痛みもない、気にしていないわけではないがいつもお世話になっている相手にこれ以上気に病んでもらうことではないと思う。
「いや、でも…」
「弾丸に魔法を付与したんですよね、どんな魔法ですか?」
「あ、あぁ。火力が足りないと思ったから2階位の爆発魔法を弾に付与したんだ」
「もしかしてこっちにも付与しました?」
レッドフォードに薬莢を見せると
「そうだね、受け取った弾全体に付与したけど…」
「これは薬莢と言って中に火薬を込めて先端にある弾丸部分を飛ばすための入れ物なんですよ。弾丸が飛んで行ったあとはここから吐き出されるんです」
「そうだったのか、よく確認すればよかったよ。本当に申し訳ない。お詫びと言ってはなんだけどこれを受け取っと欲しい」
そう言うと1つの指輪を手渡してくる。
「なんですか求婚ですか私は普通に女性が好きなのでちょっと…」
「違う違う!第一僕には奥さんがいるからね!これは回復術具というこの大陸の術石のようなものだよ、隣のベイル大陸は道具そのものに魔術式を組み込むんだ」
いやーびっくりした。添い寝の件もありそっち系なのかと思ってた
「これは僕が現役の時に使ってたもので手足がなくなっても再生させられるくらいには効果が強いよ、ただ流す魔力量や流した時の疲労感は術石よりも若干大きいから連続で使わないように気を付けてね」
「ありがとうございます。いいんですか譲ってもらっても」
「もう昔みたいな無茶はしないからね、これからの君に使ってもらった方がいいよ」
ほう、1級冒険者がパーティーで来るところに単身で乗り込むのは無茶じゃないとおっしゃるか。
「あと15体ほど倒してくるからここで待ってて」
グラグラと遺跡が揺れる、乗ってきた巨鳥が上空をまい振動がすると降下し荷物を持って上昇している。15回ほど繰り返すと巨鳥に乗ってレッドフォードが戻ってきた。
「もう日が暮れる、早く戻ろうか」
大都市エルダーに巨鳥で飛んで帰りそこからポータルで教会に戻る。巨鳥から外した素材を倉庫に放り込むと「ご飯にしようか」と言い『居酒屋 珍肉』に向かう。
今日のオーガのおかげで火力不足が実感できた、明日はパーティーのお世話になるから足を引っ張らないようにしっかり装備を整えておこう。あと付与魔法も検討しなければ。
ポーチの中を確認し寝床に入る
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