第14話 昇格試験
いつものように掃除を済ませ組合へ向かう。扉を開けるとすぐ右手のテーブルスペースで書類仕事をしているフィンさんを見つけた。私と目が合うとこちらへ向かって歩いてくる。
「おはようございます。今日は珍しいところでお仕事されてましたね」
「はい、おはようございます。イチタロウさんがこの位の日の高さでいつも来られるのでまっていたんですよ?」
身長差がある為上目遣いでこちらの顔を覗き込んでくるフィンさん、ちょっと幼顔もあってか上目遣いがよく似合う、本当に26歳なのだろうか。フィンさんが話を続ける
「これまでイチタロウさんを見ていましたが冒険者術石を身に着けていないようなので気づかないと思い直接声をかけさせてもらいました。冒険者術石を出してみてください」
ポーチから冒険者術石を箱ごと取り出す、箱からわずかに光が漏れていた
「術石が光ってますよね、それが組合から連絡事項があるサインです。他の冒険者さんたちは術石を守るカバーの一部に穴をあけてネックレスにしたりイヤリングにしたりと光に気づけるようにされてるんですよ。まぁ組合の建物に入る際に術石を確認していただけるのでしたら加工はされなくても結構ですが」
他の冒険者の先輩たちはそんなことしてたのか、全然気にしてなかった。
「わかりました、何かしら考えておきます」
「はい、お願いします。では本題に入りましょう。ズバリ昇格試験です!昨日11級の群れ討伐クエストを達成されてある程度の実力があると判断させていただきました。試験はすぐにでも準備できますが受けられますか?」
よしっ!予定通りだ。
「お願いします」
「かしこまりました、準備をしますので少々お待ちください」
フィンさんはテーブルの上の書類を回収しその場を離れる、カウンター奥で数名の職員に指示を出すと階段を上がっていった。
しばらくすると準備を終えたのか男性の職員が3階に上がるよう伝えてくれた、3階には解体室と支部長室しかなかったはずだが…。とりあえず行くとしよう。
階段を上がると支部長室の前でフィンさんが立っていた、まさかその部屋でやるのか。
「お待たせしました。準備が出来ましたのでこちらの部屋へどうぞ」
支部長室の扉を開ける、そのまさかだったか、中には1度だけあった支部長もいた。支部長は朗らかに笑い
「お疲れ様、これから簡単な試験をさせてもらうよその後私と面接…面談と言った方が正しいかな、面談をし昇格させるか否か決めさせてもらうよ。なにそんなに緊張しなくても大丈夫、試験で落ちる冒険者はまずモンスターを討伐できるほど頭を使えないら落ちる冒険者はいないよ」
試験は5問、毒草の納品部位が4問と術石の12階位は何の効果を持つかだ、採取に関しては直近で納品したばかりだし術石は10階位以下は武器や防具に対する属性の付与なのでまず間違えないだろう問題だった。
「お疲れ様、では面接を始めようか。まず何故冒険者組合に入ったか教えてくれるかな」
面接官は支部長だった
「他にやってみようという事がなかったからですかね、あとせっかくなので色々見て回りたいと思ったからです」
「なるほどな、では他の大陸にも行ってみたいと考えているのかね」
「一応は、まぁ行けるところまで行ってみたいかと」
「ふむ、ではそのあたりについても追々説明するとしようか。最後にハイドウルフを討伐した際に負傷したと聞いたが戦闘の様子を教えてもらえるかな」
あ~、銃の事はどう説明しようか、一応棍棒ってことになってるんだよな
「私の武器はボウガンだったのですが撃ち出すものがなかったため棍棒で登録させていただいていました、ですので近接武器での戦闘でなく遠距離武器の戦闘の話になります」
昨日の戦闘の話をざっくりとかいつまんで説明すると
「トラップ魔法で囲んで初めに増援を呼びに行くのを防いだのか、負傷したとはいえ悪くない判断をしているようだね。それにしても昨日バラン君が作っていたのは君の武器からアイディアをもらったものなのか、何か叫んでいたようだからあとで尋ねてみてくれ。ではこれで昇格試験は終わりだ、また術石に知らせるからしばらくは組合の建物内にいてもらえると助かるよ」
「はい、ありがとうございました」
初めての昇格試験は終了した。しばらく建物内にいてくれか…バランの所にでも行ってみようか。同じ階の解体室へ向かう。
「イチタロウか!良いところに来た」
部屋の主がこちらに向いたと思うと私の腕をガシッと掴み部屋の中へ引きずっていく。痛い痛い離してくれぇ!
「ちょっ、バランさん痛い!」
「あれから銃を試作していたんだが上手くいかなくてな」
聞こえてねぇよ、てかクッソ早口だ
「ステイステイ!バランさんステイ」
「何度か試し撃ちをしたのだがお前の持っているもののように狙ったところにとばないんだ」
ん?うまく飛ばないか…
「銃のバレル内部にライフリングって入れてませんよね」
やっとバランが手を離してくれた
「ライフリングとはなんだ」
「ライフリングはですねバレル内部に螺旋状に線を入れることで撃ち出された弾丸に回転を与え真っ直ぐ安定して飛ぶようにするものです。また弾丸が縦や横に変な回転が掛からないため弾頭からしっかりと当たるようになります」
確かこんな感じだったようなはずだ、弾丸の初速はバレルの長さに関係してたはず…
「そうか、ちょっとお前の銃を見せてくれないか」
バランに銃を渡すと懐中電灯のようなもので中を覗き込み独り言を言い始める、しばらく時間がかかりそうだな。
冒険者術石が光る、バランは…私の銃を片手に試作品と比較してるな。
「バランさん、少し1階に行ってきます。また戻ってきますのでそれは持ってもらって大丈夫です」
「…」
返事はないが聞こえているだろう。解体室を後にし階段を下る、1階の人事課でフィンさんに声をかける。
「すみません、お呼び出しとの事で」
「はい、ありがとうございます。昇格試験は合格という事になりましたので手続きを行わせていただいてもよろしいでしょうか」
よかったよかった。これで不合格だったらどうしようかと思った。
「お願いします」
「それにしても早いですね、つい数日前に入会して解体出来ないと思ったらもう一人前の冒険者ですか。くれぐれも無茶はしないでくださいね」
「わかっているつもりではあります、無茶して死んだら世話無いですからね」
「はい、終わりました。こちらお返しします。ところでパーティーは組まれる予定ですか?あまり他の方と交流されていない印象なのですが…」
「そうですね<ディバース>のレニに入らないかと言われていたのでお世話になるかと」
あと1つ2つクエストをこなして判断しよう
「そうですか、あそこはそれぞれが一芸特化のパーティーなのでとても楽しいと思いますよ」
「イチタロウ!試し撃ちに行くぞ!」
バランがバタバタと階段を降りてきながら大声で叫ぶ。今からクエストを受けるにしても時間が無いし付き合うか、
「はい、付き合いますよ!」
走るバランを追いかけ門を出る
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