第7話 採取クエストとおためしその1

 次の昇格は各毒草を一定量の納品だ。薬草や魔力草は都市内部の農場で栽培されているが、毒草の類いは土壌と大気を僅かながら汚染ため栽培は行われていないそうだ。常設クエストの為組合には寄らず直接現地へ向かう。都市の外の世界はどのようなものだろう、門をくぐり外へ出る。


 毒草が自生している場所に到着した、門を出て街道を1キロほど歩き森に入った。人の行き来が多いのか、整備こそされていないものの踏み固められた道を6キロ程歩くと解毒薬用の毒草の群生地にたどり着いた。因みにここまでモンスターには遭遇していない、人のが通る事を知っているのだろう。


 採取を始める。解毒薬の調合には成長して1日2日の子葉を使う。その為数日人が訪れていない場合採取できない事がある。子葉を摘んだら少し土を掘り根を傷つけないよう気をつけて、土を被るくらいで茎を切る。こうすることで再度生えてくるようだ。また、成長し大きくなった葉は毒薬等に使われるため納品対象ではないが幾つか摘んでおく。


 毒草の群生地から東に2キロ程歩くと火傷の初期治療に使うための毒草を見つける。こちらは茎を地面から3cm程のところで切る。側軸を落として完了だ。葉は触れると触覚がなくなる程にかぶれるのでまとめて土に埋めておく。

 

 日が真上を通過し半分ほど傾いた頃、その他の採取物を全て集め終えた。都市からはかなり離れてしまったようだ。ふと羽音がしていることに気づいた、離れたところにヒュージブーンでも居るのだろう。幸い森の中なので木に隠れることは容易だろう。


 モンスターに遭遇することもなく街道までたどり着いた、そこで違和感を感じた。後方から草木が掻き分けられる音が聞こえる。視線を向けると視認できるもので5匹の赤と黄色の毛並みをした狼が此方を狙っている。現在の装備は警備服のズボンに教会で貰った長袖服、ヘルメットに反射板付きのチョッキ、武器は弾の無いガーランド。僅かながら攻撃力に紙防御、間違いなく餌になる。近くに人は居ない、門までは約1キロ、全力疾走しかない。ぐっと踏み込むと景色が後に飛んでいく。後を見ると街道に出た狼が此方を立ち止まって見ている、諦めてくれたようだ。これを機に装備も見直すとしよう、まずは納品からだ。私は門兵に会員術石を提示し都市へ入る。


 冒険者組合2階に納品に向かう。カウンターは15~11級・10~6級・5~0級で分かれている。15~11級のカウンターへ向かう。13級の納品依頼をまとめて達成するのは良くあることのようで問題なく受理してもらうことが出来た。


「各種納品ありがとうございます。規定数確認できましたので昇格手続きを行いますね」


 術石を渡すと受付の女性は作業をしながら


「12級からはモンスターの討伐になります。もし今日と同じ装備で行くとおっしゃられた場合クエストの受注は認めませんので必ず装備は整えておいてください。本当は都市から出られる場合は最低限胸当て位はつけて欲しいものです。今日は何事もなかったようなので良かったのですが…」

「そうだ、帰り際に赤と黄色の毛並みをした狼5匹に後を付けられました。あの辺りはモンスターと遭遇することはないと聞いていたのですが大丈夫でしょうか」


 手続きが終わったようだ。女性は術石を手渡しながら


「あれはパレードウルフと言って毒草の群生地を昆虫系モンスターに食い荒らされないよう組合のほうで飼いならし放っています。後を付けていたのも多分お見送りのつもりだったのでしょう」


 ひとまずは一安心なのか?完全に餌を見る目をしていた気がしたのだが…


「イチタロウさんは地図を買われていましたよね、ご存じかとは思いますが組合の裏の通りには武器屋防具、術石などの装備品を取り扱っている店舗が並んでいます。明日はクエストは受けずに装備を整えることをお勧めしますよ。魔導具や術石についてよくわからないようでしたら演習場で試していただくことも出来ますが利用されますか?」


 それはありがたい、術石が15~0階位に分かれていることは知っていたが具体的にどんな効果があるかはいまいち分かっていなかった。


 演習場へ向かうと若い男性が術石や武器を準備してくれていた。


「冒険者術石を確認させてくれ、えーイチタロウだな、俺はテミングだよろしく頼む。特に職員とかじゃなくて4級冒険者だ」

「はい、一太郎です、先ほど12級になりました。よろしくお願いします」

「おう、よろしくな!じゃぁ早速説明していこう。ざっくり説明すると15~10階位までの術石は武器や防具に属性を付与する。で、9~0階位がいわゆる魔法だ。こっちは導具と呼ばれるものに嵌めて使うのが主流だな。一つ試してみるか」


 そう言うとテミングは鉄剣に赤の術石を嵌め込みカバーをする。


「あの、そのカバーは術石を保護するためのものですか?」

「あぁそうだ。術石をはそれなりに壊れやすいからな、こいつが割れたら中に記録されている魔術回路が暴走して火だったら爆発したり風だったら突風が発生したりするからな。昔の話だがとある術石屋が空間の術石を店の中で割ってしまって店ごと別の空間に飲み込まれたこともあったな。まぁ多少落としたくらいじゃ割れることはないがな。ほれ準備できたぞ」


 剣を受け取るが何も起こらない


「ほら剣に魔力を流して」


 魔力を流す?今までそんな経験はないのだが…ラノベで読んだみたいに集中してみるか、出来るとは思えんが。


「あっつ‼」


 出来てしまった。魔力が流れるとともに急に剣の温度が上がり刀身に火を纏った。これはかなり格好いいぞ、もう一度やってみよう。大太刀ならまるであのキャラクターのようだ。


「そうだイチタロウ木製の武器に光以外の術石をはめるなよ、速攻壊れるぞ」


 その後いくつか術石を変えて試してみた。例えば水の場合刀身の周りに薄い水の膜が張られそれが超高速で微振動することで切れ味が上がる。風の場合剣の周りを風が纏って受けた相手に追加でダメージを与えていた。先ほどテミングが言っていた光の術石も嵌めてみたが剣が光っただけだった。アンデット系のモンスターには有効だがそれ以外だと松明の代わりにしかならないと言っていた。


ここで魔力切れを避けるため一度休憩だ。




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