第5話 講習修了、入会パーティー?
「解体講習は終了だ。下に連絡を入れておくから人事課で昇格してもらってこい」
やっと終わった。あれから気を失うこと5回なんとか一人で解体作業を行えるようになった。バランに「遅い!外でもそんなにちんたらやるのか!」と怒られながら。
「ア…アリガトウゴザイマシタ」
まるで壊れた機械のようだろ?精神面はボロボロです。おぼつかない足取りで部屋を出ると息を切らしたフィンさんがそこにはいた。
「バランさんから酷い顔をしていると聞いて来ましたが…かなり参っているようです
ね。手続きはここで行いますので脇の椅子にでも座って休んでいて下さい」
手渡された皮の水筒には温かいレモン水が入っていた。ちびちび飲んでいるうちに気が付いたらねむってしまっていた。
頭をはたかれて目が覚めた。そこにはバランとフィンさんがいた。外で鐘が鳴っている、講習が終わったころはまだわずかに日が傾いていたくらいだったのだが。
「終業の時間だ。私たちも帰るからいつまでも寝てるんじゃない」
「ちょっとバランさん!あなたが無茶させたから疲れてるんじゃないんですか!」
「申し訳ございません。すぐに出ますので」
そう答えるとフィンさんは術石を手渡して
「昇格手続きは終了しています。これからよろしくお願いしますね。あと、バランさんの勤務日に講習の連絡を入れてしまって申し訳ございませんでした。あの人はかなり変わり者なので」
「いえ気になさらないでください。むしろあそこまでイかれてるからこそ今回で出来るようになったのかもしれないので」
「陰口は私のいないところで言うべきじゃないのか」
謝るフィンさんにそう答える。バランが何か言っていたようだが気にしなくてもい
いだろう。
「そうだ、レッドフォードさんが一階にいらしているようですよ。『今夜は入会祝いでパーティーだ~』とか」
「わかりました直ぐに降りましょう」
私はフィンさんとバランの3人で階段を下りていく。
「や、お帰りイチタロウ君。解体の講習はバランだったんだね、酷いことされてないかい?この人は昔から容赦なかったから」
昔馴染みなのだろうか
「気絶したそばから水をかけてきて無理やり起こされたくらいですかね」
「バランさんそんなことしたんですか⁉」
「こいつが情けないだけだ。私は悪くない」
と、バランは言っているが私は覚えているぞ。3回目くらいから笑いながら水をか
けてきていたことに、にやけ面を隠そうと必死になっていたことも。
「神父、お店のほう準備できたみたいですよ」
アナスタシーヤが扉を開けて入ってきた
「あぁターシャありがとう。ところで2人ほど増えても大丈夫かな?」
「フィンさんは歓迎しますがバランさんも一緒ですか、多分大丈夫かと思いますけど一応連絡してみます」
大丈夫との事だったので5人でお店へ向かう。バランが私は帰る、と言っていたがレッドフォードが悪い笑みで引き留めていた。
お店についたがこれはどう見ても居酒屋だ。暖簾に『居酒屋 珍肉』と書いてあるのだから間違いない。これはパーティーではなく飲みでは?
「いいんですか聖職者が酒を飲んでも」
「特にうちの教義に禁酒はないからね、第一うちは機神セルの教会で機械は酒なんて飲まないだろう?」
レッドフォードの返答で初めてなんの教会かが判明した。だから機械人形がたくさんあったのか。
「神父、今日の支払いは誰持ちですか?」
アナスタシーヤよ、それ一番最初に確認することか。もちろんレッドフォードが支払うとの事だ。
料理はおいしかった。肉がモンスター肉なのだ、この世界には豚も牛も鳥もいる、それなのに。そんなことよりもアナスタシーヤの酒が止まらない。これで果実酒8本目だ、因みにその他4人で果実酒2本。1本1.5Lくらい入っているものをとんでもないスピードで開けていく、バランは酔いつぶれ(コップ2杯)、レッドフォードはほろ酔いで16年前の冒険者時代の話をしてくれた。どうやらバランのパーティーに所属していたらしく当時10歳だった支部長の娘のフィンさんがクエスト受注の担当をしていたようだ。4人の年齢も判明しアナスタシーヤが18歳、レッドフォードが36歳、フィンさんが26歳でバランが43歳だ。
食事も終わりレッドフォードがバランを自宅まで届け解散した。今日はレッドフォードもアナスタシーヤも教会に泊まるようだ。アナスタシーヤが帰り際に果実酒を買っていたのは気のせいだろう、ていうかまだ飲み足りないのか。少し酔っ払ってはいるが風呂には入りたい、シャワーは解体室でしてきたがまだ匂いが残っているように
思えるのだ。おぼつかない足取りで風呂場に向かうと先客がいた。…レッドフォードだった。いや、わかってはいたけどそんなオチは求めていない。おかげで冷たい水ではなくお湯で体を流し湯舟にも浸かれたので良しとするか。
明日は何かクエストでも受けてみよう。ベッドの上で微睡みながら初めてのクエストを成功させる自分の姿を妄想し眠りについた。
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