彼女ーミサキーがいた日々

第19話 火が付いたぜ！ このヤロウ！！

1996年6月20日(木)

一人の男子高校生が机に噛り付いて遅くまで勉強していた。

お嬢様？

家が金持ち？

英検持ってる？

月一で海外旅行だ？　(←ダレもそんなことしてない)

月にすっぽん、猫に小判だ？　(←ダレも言ってないし、少し使い方を間違ってる)

清水さんと俺だと、美女と野獣だ？？　(←ダレもそこまで言ってない)

なんぼのもんじゃい！！！

一科目だけでも上回りゃ、清水さんの役に立てるんだろ！！

俺の担当は数Ⅰ、数Ａだ。

だったら数学、極めて見せる!

『甘えてる』だぁ？

バカにしてんじゃねーぞ。アカリ！

吠えズラかかせてやる！！

久しぶりに火が付いたぜ！　このヤロウ！！

『カズ。あんたもしかしたらそういう下衆といっしょ？　

真面目なミサキの事、体よく利用したいだけ？』

ああん？　数Ⅰ、数Ａやったるわー！！

極めて見せるわー！！！

数学で１位取れりゃいいんだろー！！！！

そしたら清水さんにも教えられるんだろー！！！！！

『そういう男っているのよねぇ。

ちょっと女子に優しくされて勘違いしちゃう奴。

だいたい友達少なくて世間知らずなのよ。そういう奴に限って』

『ホント。単なる"お礼"とか"励まし"という社交辞令を誤解されたら、

たまったもんじゃなのよ』

だぁあぁぁぁ！　うっせー！！　うっせーー！！！

頭ん中から出てけ！　てめー！！

惚れたら不味いかよ！！

俺みたいに茶髪で強面の奴に

優しくしてくれる子なんて滅多にいねぇんだよ！！！

好きになったら悪いかよ？

付き合たいって思ったら駄目なのかよ！！！！

誰にも迷惑かけてねーだろ！？

お前と違って！！！！

優しくされて、好きになったら悪いんか？

男ってバカなんだよ。それで惚れちまうんだよ！

バカで悪かったな、このバカ女！！

それにこっちがもっと優しくして

惚れさせてやるぐらいのことして見せてやるわ！！！

『そう……。だったら、行動で示しなさいよ！』

当たり前田のクラッカー！！！

ダマッて見とけ！

この恋人のいない"恋愛ますたー"めっ！！

その日、彼は明日の勉強会の為、

数学の問題を解き、そして解説出来る様に何度も考え直すことになる。

遅くまで……。

しかし彼は気付いていながら、しっかり分かってはいなかった。

頭の中にいるアカリと格闘し、毒づきながらも勉強するという事は……

むしろ"アカリの罠"にどっぷり浸かっているということを……。