第12話 図書委員さんとお願い
1996年5月27日(月)
次は告白する時間と場所を考えねーとな。
なんかもう告白不要じゃねーの。
さっさと付き合え。
という気持ちもあるのだが……。
中間試験中も、昼休みに図書室で相変わらず俺は頭を抱えていた。
どこかに鍵が借りれる教室とかあればいいんだけど。
鍵があれば部屋に鍵を掛けて誰にも邪魔されずに告白できる。
けど理科準備室とか家庭科準備室とかは先生しか鍵を持ってないからな。
マスターキーは職員室にあるらしいけど流石にそれを手に入れるのは……。
生徒が鍵をもっている教室って無いのかな……。
んー。あれ?
そういえばここ。図書室ってどうなの。
図書委員の人が持ってるんじゃないか。
聞いてみるか……。
俺は図書室のカウンター近くにいる図書委員さんに聞いてみる事にした。
「すみません」
「何かしら」
「図書室の鍵って図書委員の人が持ってるんですか?」
「そうよ。司書の先生も持ってるけどそれがどうしたの?」
うん。これ!
いけるんじゃない。
勿論目の前にいる図書委員さんが手伝ってくれればという前提になるけど。
「あの。ちょっとご相談があるんですが」
「どんな相談かしら」
周りに人がいないことを確認する。
勉強机のまわりには試験勉強している生徒がチラホラみえるが
この図書室のカウンターの周りには人がいなかった。
念の為、声のトーンを周囲に聞こえないように少し落とす。
「昼休みにこの図書室を少しの時間使わせてもらえませんか?」
「……。何に使いたいのかしら?」
少しいぶかしがる表情を見せながら図書委員さんは質問を質問で返してきた。
「その。えっと。告白に……」
ここは正直に答えた方がいいかな。
変に話を作るよりは
正直に言った方が
怪しまれないと。俺はふんだ。
「告白?」
「はい。告白して振られてもいいとは思ってるんですが
彼女が恥ずかしがり屋のようで、周りに人がいないようにしたいんですよ。
最近、雨で外も使えない事ありますし、
教室もテスト一週間前で、先生に見つかると早く帰れってどやされるんで
いい場所が無くて……」
図書委員さんが眼を爛々と輝かせて俺の方を見る。なんで?
「どっち?」
はい?
「どっちなの?」
なんですか?
「図書室に連れてきてる
はっきりものを言う子とおとなし目の子のどちらかでしょう?
どっちに告白するの?」
そう言って勉強机に座っているアカリと清水さんの方に目配せする。
ギャー!
説明ミスった。
俺じゃねー!!
俺が告るんじゃねー!!!!
「あのっ。すいません。俺じゃないです。俺の友達が告るんです」
「えー」
見るからに図書委員さんの眼の光が弱まる。
そんなに他人の告白に興味あるんかね。
「駄目ですか?」
少し悩んだ後で、図書委員さんが答える。
「昼休み始まってから直ぐの5分ぐらいならいいわよ」
マジですかっ?
「"本の整理中"という張り紙を図書室入口に張り出して、
本の返却ボックスを廊下に出して
図書室と図書準備室に鍵を掛ければ
その間だけ二人だけの図書室にできるわよ」
聞いた瞬間、やったーと、小さくガッツポーズをしてしまう。
でもな……。
「本当にいいんですか?」
「そのかわり。お願い聞いてくれる?」
うわー。来たよ。
しかも眼がさっきと同じで怪しく輝いてるんですけど……。
「あの。ちょっと内容によるんですけど……」
嫌々ながら聞いてみた。
「そんなに難しいことじゃないわ」
図書委員さんが俺の耳元で囁く。
聞いた内容は。うーん。まぁ難しいことではない。
難しくはないのだが……。
「あのー。関係者以外にバラさないって約束できます?」
「いいわよ」
「じゃ。お願いします」
本当は遠藤に確認取るべきかもしれないが
断りそうだし、メンドクサイからO.Kした。
「けど。私も毎日昼休みにいつもここの担当しているわけじゃないから
中間テストが終わって二週目、つまり六月の第一週ならいつでもいいわよ
それにテスト期間は利用者が多いし」
「なんか図書委員さんはいつもいる気がするんですが……」
「本が好きだからいるのよ。週ごとの担当は決まっていて
その人が鍵を持ってるから
それに私、図書室が好きだから。だからいつもいるの。
人手が足りないときは手伝ってもいるけど……」
そうだったんだ。
考えてみればそうか
クラス毎に図書委員がいるのに
ずっと昼休み担当してるっていうのもおかしな話だよな。
「そうそう。眠気覚ましのツボも図書室の本に書いてあったのよ。
役に立ったでしょ」
図書室の本め! 余計なことを!
「でも調べたのは私じゃないけどね……」
図書委員さんは悪戯っぽく笑みを見せる。
「えっ。それってどういう意味ですか?」
じゃ誰が調べたんだ?
「さて。どういう意味でしょう? それを考えるのが貴方の仕事よ」
そう言って図書委員さんは薄く笑った。
思い当たるのことは一つしかいない……。
だけど、そうだったらいいなと思ってしまっている自分がいた。
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