第13話 鍵、二人きり、そして隠れて......とくれば?
1996年5月27日(月)及び28日(火)
「てなわけで告白に図書室を使うのはどーだ?」
放課後、いつものコンビニで遠藤に説明する。
言った瞬間。こいつガシッと俺の両手を掴んできた。
「ありがとう。鬼塚。僕は君を信じていたよ!」
うん。とりあえず、手を放そうか遠藤。
遠くにいる女子が何やらこちらをみてヒソヒソと話をしているから。
もちろん現在、高宮には彼氏がいない事、遠藤に脈ありである事も合わせて説明した。
「でも高宮を図書室に呼び出さないと駄目だぜ」
遠藤の手を放しながら伝える。
「それは僕がするよ」
「どうするん?」
「付せんに"6月4日の昼休みに図書室でお話ししたいことがあります。
二人だけで話せるよう準備しています"と書いて彼女の机の中に入れておくよ」
「直接言った方が間違えなくて良くないか?」
「大丈夫。今までも付せんでやり取りしてるから」
それって簡単な文通とかいうやつじゃね。
うん。やっぱり、お前ら、告白いらねーわ。
もう付き合ってるのと変わらん。
「あのさ。鍵を借りるからさ、日時は確定させたいんだが、
6月4日の火曜でいいのか?」
「うん。それでお願いするよ」
「それで図書委員さんにはこっちから連絡しておくぞ」
「あぁ。頼む」
そう言った後に遠藤は何やら考え込む。
「意表をついて"トンボ"らしくいこうか? やっぱり"天沢"が王道だろうか?」
何やらブツブツ遠藤は言い出していた。
関わり合ってはいけないと本能的に察し、その場を後にした。
「天沢のセリフは"自分が一人前のバ……リン職人になったら……してくれないか"だから、これを僕に置き換えると……」
そういやアカリが言ってたな。
こいつ全部セリフ覚えてるかもって。
ヤバすぎるだろ!
さて中間試験中の昼休み。
相変わらず俺は図書室に来ていた。
図書委員さんとの簡単な告白の打ち合わせと勉強を兼ねてである。
「すいません。それじゃ。6月4日の火曜日でお願いします」
図書委員さんに告白の日時を伝える。
「わかったわ。
その日は図書室整理中の張り紙を出して、そのまま図書室の鍵を閉めておくから。
それで二人が来たら鍵を開けて中に入れてあげる。
それで二人きりにできるわ。それで良い?」
「それと貴方も昼休みすぐ来てね。その遠藤君と高宮さんだっけ?
二人の顔、私は知らないから」
あー。そうなるか。
未だ関わらなきゃいけないか。
「そういえば、あの子たちは告白の時に来るの?」
図書委員さんが図書室のカウンターから少し離れた机で勉強している清水さんとアカリの二人を見ながら尋ねてきた。
「うぇっ!?」
考えてなかった。
「当日、図書室の前にあなたがいて、図書室に入れなかったら怪しまれるわよ?
全くの他人なら大丈夫だろうけど……」
あー。そうなるのかな。
「どっか隠れる場所なかったでしたっけ?」
隠れてやりすごすのはどうだろう?
「体全体を隠すトコロにいると、図書館に来た二人に応対できないわよ?」
そう言えばそうかも。どうしよう?
「最初から図書館に来ないようにしたら?
その日は本の整理をするから、図書室入れないよと前もって言っておけば?」
Good idea!
それでいこう。
「その手でいきます!」
清水さんはともかく、アカリにバレるのはマズい。
大変マズい。
あいつは他人のプライベートにづかづか入り込んで
踏み潰す奴だ。
なんとかあいつを引き離さないとと考え
俺は彼女たちの元に向かった。
「あのさ。6月4日の火曜日、図書室使えないんだって」
しれっと二人に伝える。
「そうなんだ。ありがとう。じゃ教室で勉強しようかな?」
清水さんはすんなり騙されてくれた。
顔にはいつも通りの笑み。
うーん。嘘を付いたことに少々、心が痛む。
「ふーん」
アカリが何か疑わしいものを見る目つきでこっちを見てる。
「なんだよ?」
何か文句あんのかといった口調でアカリに応える。
「あの美人の図書委員さんと"二人きり"で"隠れて"何かするの?」
おい。ちょっと待て。なんでそうなる?
清水さんまで不安そうにこっち見てるじゃないか!
「さっき。何かあの人と"鍵"がどうのこうのとか
"二人きりで"とか、"隠れる"がどうのこうのとか喋ってたでしょ!
私。聞き耳たてて聞いてたんだからね!」
ちょ。ちょ。ちょ。待った。待った。
絶妙に間違ってんだよ。お前の聞き耳。
「いやらしい!!」
おーい! ちょっと待てー! 誤解を与えそうな語句だけ拾ってんじゃねー!!!
あー。あー。清水さんがスゲー顔してるじゃねーかよ。
「鬼塚君……。図書委員さんと二人きりで……。その何するんですか?
それって……。それって私たちに言えないような事なんですか?」
清水さんが完璧に誤解してる。
しょんぼりしてる。
マズ過ぎる!!!!!
「ミサキ。いったでしょ。
こいつはこういう男なのよ。
優しいだけの男なんて一皮剥いでやれば、ただのケダモノなんだから!」
周りで勉強している人達も聞き耳を立てているのが分かる。
もう無理。
図書委員さんヘルプ……。
この二人に正直に遠藤の告白計画を話します……。
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