第10話 恋のライバル、あらわる!?

1996年5月21日(火)


「君の手際が悪いせいだぞ!!」

夕方の天気は午前中の雨が嘘のような晴れ。

北陸の天気ってこんなもんです。

しかし雲一つないお天気とは裏腹にコンビニの駐車場で遠藤は荒らぶっていた。


「僕の完璧な作戦が……」

作戦完璧だったら成功するやん。

それに完璧に失敗でもないと思う。


高宮が休み時間に遠藤がいるであろう保健室を

体育の授業後すぐに訪れていたからだ。

俺も保健室には行ったから分かる話だけど。

ま、既に遠藤は保健室におらず、

教室に戻っていたからトンだ空振りという話なんだが。


だから個人的に脈は有りそうな気はする。


「それに鬼塚。君の差し金か! 僕の机の中にあんなものを入れて」

何の事?


「俺。別に。お前の机に何も入れてねぇよ。渡すんだったら直接手渡しするしな?」


「……。それもそうか。じゃあれはいったい誰が……」

遠藤が何かぶつくさ言ってる。

何か酷く要領を得ない。


机に何入れられたんだろ?


遠藤を見ても五体満足そうだから

危険物入れられたわけじゃないと思うけど……。

取り敢えず、今回の柔道男の企みを伝えた方が良いかな?

推測にはなるんだけど。


「あー。いや遠藤な。あの告白の作戦、意図的につぶされたんだと思うぞ」


遠藤が思考の渦から戻ってきた表情を見せる。

「ん。どういう意味だ? 鬼塚」


「あれな。お前運んでった奴。あの柔道男な。

お前が休んでた時、昼休みによく高宮と話してたんだよ」


「えっ」

遠藤が驚きの表情を見せる。


「保健委員決めるときもさ。確か男子は立候補多くてじゃんけんで決めてただろ。

その中にもいた気がする」


「だから高宮狙いなんじゃない。あいつも」


遠藤がぽかんとした顔をする。

そして少しづつ遠藤がこちらを睨み始める。えっ。なんで。なんで?



「ちょっと。聞き捨てならない話を聞いたぞ。鬼塚」

えっ。何が。何が?



「君はつまり、僕が休みの時に柔道部の彼が仲良さそうに高宮とよく話していたことを知っていたんだな」


「なんでそれを僕に教えてくれないんだ!」

あっ。ヤバい。


「君は僕に協力してくれるはずだよね。

なんでそんな僕が確実に知らない重要な情報を今まで黙っていたんだ!」

ヤバーい!遠藤君怒ってます。


「や。すまん。すまん。忘れてたんだよ。忘れてたの」

体の前で両手を合わせて。頭を下げる。


「き。君は僕に協力するつもりがあるのか!?」

しかし遠藤君の怒りは収まらない。


「あ。あるよ。ある。じゃなきゃこんなに打ち合わせみたいなのしないだろ」


「証明して欲しい!」

遠藤が居丈高になる。


「はぁ!?」

どゆこと?


「証明してくれ!」

遠藤に似合わず高圧的だ。


「どうしろってんだよ?」


「高宮さんと柔道男の仲がどんなものか調べて欲しい!」


「なにー!」

メンドクセー!


「もう付き合っているのか。そして彼といて幸せなのかどうかを……」


「いやー。でもそれはちょっと。自分で聞いた方が……」

下手に出つつも自分でやった方がいいと説明する。


「鬼塚。君、愛川さんに僕のこと話したんだろ?」



嘘っ!



アカリの奴がばらしやがったのか。

でも俺、アカリに遠藤の事は話していないのに……。


ちなみに愛川とはアカリの苗字だ。

苗字と性格が合わない事この上ない。


「高宮さんは愛川さんとも仲がいいんだ。

だから愛川さん経由で高宮さんに聞いてほしい」


「もし高宮さんが既に付き合ったいるのなら、

そしてそれで高宮さんが幸せなら僕は告白しない」


「いいのかよ。振られてもいいとか言ってただろ」

遠藤に尋ねる。俺としては何か告白から逃げてる気がするけど……。


「鬼塚。お前何か勘違いしてるよ」


「僕は彼女を幸せにしたいと思っている。

けれどもう他の誰かと幸せであるなら、それを引っ掻き回したくないんだよ」


「僕は彼女の幸せを願っている。

すでに彼女が今、幸せならそれでいい。それでいいんだ……」

遠藤はそう言いながらも悲しそうな瞳をしていた。

しかし。遠藤、お前ちょっと自分に酔ってないか?


ナルなロマンチストって奴じゃなのこれ!?


そういうの大概の女子に嫌われるんじゃ……。

男子にもかもしれんが……。

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