第6話 告白相談 with トモサカ

1996年5月13日(月)


丹波からの依頼は片付いた。


さて。遠藤からの依頼もやらんと。

あいつはあいつでメンドクサイことを言いだす奴だからな。


だが、しかし部活後の"アクエリ"は惜しい。

しゃーない。ちょっと協力してやろう。


課題は2点。


・どういう告白がいいか?

・告白する時間と場所をどうするか?


正直一点目は自分で考えろよ。って気もしなくはない。

けど自分がもしだれかに告白しようとした場合

実を言うと告白の方法は全然思いついていない。


唯一あるとすれば電話とかじゃなくて

面と向かって告白だよなーということぐらい。

でも何を言えばいいのかが自分自身あんまり思いついてなかった。


今後の自分の為のような気もする。

告白の仕方に関しては

恋多き奴らに相談してみよう。


俺の知り合いの恋多き奴らと言えば

まずはイケメン……

いや"腹黒イケメン"のトモサカだな。



「カズ。すまん。僕は告白したことが無くて……」

トモサカがすまなさそうに答える。


「されたことは?」

すかさず突っ込む。


「それは。まぁ……そこそこ」


「どれぐらい」


「言わなきゃダメか?」

トモサカが答えずらそうにしている。


「そりゃ。多い方が経験値が高いことになるからな!?」

意地の悪い返答をしてみる。


「両手に余るぐらいかな?」


ってことはこいつ10件以上も……。

昼休みにトモサカに相談してみた回答がこれだ。

答えが斜め上どころじゃない。

モテナイ男、全員に喧嘩売りやがったよ。

この"腹黒イケメン"。


「この前の球技大会の後もひどくて……」

うわー。語りだしたよ。

お前それ。モテナイ奴らから見たら嫌味でしかないからな。

でも確かにこいつはサッカーで活躍してた。

5、6点ぐらい決めてたんじゃないかな。


えっ。俺。俺はサッカーでもとりあえず走ってたよ。元気よく。


「お前に相談した俺がバカだったよ」

自分の胸の内をストレートに話す。


「あっ。でも心に響いた告白はあったよ」

おっ。

「そういうの。そういうのが欲しいんだよ。どんなだ?」


苦笑しながらトモサカは答える。

「自分の内面に惹かれたと告白されたときは何か心にぐっと来たよ」


「内面ってお前……」


「外見とかサッカーやってるところが恰好いいはいつも言われてたから。

けど内面に惹かれたってあんまり無かったからね」


外見では無く、内面か。

「ちなみに何を誉められたんだ」


「それは秘密」


「ちぇー。いいじゃんそれぐらい」


「カズの口から漏れたら、

それを使って告白してくる子が出てくるかもしれないだろ」


あー。そう言うことか。こいつ今、誰とも付き合ってないんだよな。

次に相談する予定の奴と付き合ってたって噂は聞いたけど。


「カズ。人を外見だけで判断して付き合うのを俺は否定しないよ。

けど長く続かない事も多い。

もっとカッコいい奴や可愛い奴が来たら乗り換えられるからな」


「うわー。付き合った事がある奴からそういう事聞くとリアルだわ。

すげー聞きたくなかったわ。それ」


「あと気を付けた方がいいことは身だしなみとか清潔感かな」


「身だしなみ?」


「そう。カズみたいな寝癖はマズいぞ」


「いや。これは4限の授業で寝てて……」


「寝てばっかりだな。カズは」

トモサカが笑う。


「寝る子は育つって言うだろ」

正直。もう少し、身長が欲しい。


「あいかわらず"ユニーク"だな。カズは」

相変わらず"ユニーク"か……。

トモサカは俺の事をよく"ユニーク"だという。


それにしても

誉めるなら内面、そして身だしなみと清潔感か……。

俺も確かに不潔な奴とは付き合いたくないな。

よし。図書室行く前に、寝癖直しとこう。


「それとカズは性格上、好きになった理由をストレートに話した方がいいと思うぞ」


「好きになった理由ね……」

俺は何だろうな。

不良っぼい見た目している俺にしっかりお辞儀とかしてくれたってとことかかな?

その時にふっと彼女の言葉を思い出した。




『やっぱり良い人なんですね。鬼塚君は。友達の為に席を譲ったんですね』

その言葉を思い出しながら、胸が苦しくて、暖かくなるのを感じていた。




遠藤は何だろう。

外見なのかな。あいつは?

トモサカ理論でいくと付き合っても長続きしなくなるんだが、どうなんだろう?


「とりあえず。サンキュ。助かったわ」


「カズとその友達が上手くいくことを願ってるよ」

別れ際にトモサカから激励を受けた。

やれるだけやってみよう。


"アクエリ"の為に。


「それとサッカー部入りたくなったら言えよ」

部活の勧誘は余計。


さっそく、遠藤に連絡を入れよう。

でもあいつの場合、外見に惚れてるような気がするけど、どうすっかな。

図書室に向かいながら、俺はそんなことを考えていた。




「僕は外見だけで高宮さんを好きになったわけじゃない!」

部活後、コンビニの駐車場で遠藤が吠えた。


「どうどうどう。落ち着け。遠藤」

遠藤を落ち着かせるために両の手の平を遠藤に向けてなだめる。

こんなに荒ぶる奴だったっけ。遠藤は?


「外見じゃなきゃ。お前の好きになったきっかけって何だよ」

俺から見て、高宮はひいき目に見なくても美人に入る部類だと思うが?


少し落ち着いたのか、遠藤が語りだした。

「鬼塚。僕は体が弱くて、たまに学校を休むのは知ってるだろ?」


「そりゃ。まぁ。この前も風邪で休んでたし。

確か2日連続で休んだ日もあったよな」

それと一体、高宮が好きな事とどうかかわりがあるのか分からない。


「いつも励ましの言葉があるんだ。休んだ次の日に学校に行くと……」


「はぁ? どういうことだ」


「休み明けはいつも、

休んだ時に配られたプリントとかが

キチンと整理されて机の中に入ってるんだよ。

そこに付せんが貼ってあってこう書いてある。

"早く元気になってね"って」


「でもそれが高宮が書いたものか。分かんねーだろ?」


「分かるんだよ! その付せん。

黒猫のキャラクターが隅っこに書いてあって

高宮さんが使ってるんだよ!」

うーん。ちょっと抜けてる気がする。

他の奴が使ってるかもしれないしなぁ。

怒るかもしれないが言ってみるか。


「でも。その付せん他の奴が使ってる可能性はあるし……」

務めて冷静に疑問を口にする。

あんまりきつく言うと遠藤がまた荒ぶりそうだ。


「書いてある文字が高宮さんの字なんだ。明日コピー渡すよ。

席が近いし書いてる字がみれるだろ」

文字が似てるのか……。

筆跡鑑定とかは流石に出来ないけどな。

見てみるか。

けど女子高生の文字って誰の物でも似てる気がするぞ。

だいたい丸っこくてかわいらしい字だし。

人違いだったらどうすんだろ。


ともかくトモサカからの上手く告白する為の意見をまとめて遠藤に伝えた。


まとめると以下3点


・誉めるなら内面

・直接告白するのが良い

・身だしなみと清潔感に注意


といったところ。


ちなみに身だしなみについては

よほど虫の居所が悪いのか

遠藤が珍しく指摘してきた。


「鬼塚。身だしなみだったら君もシャツを出しっぱなしじゃないか。

人に指摘する前に自分の身を正した方がいいんじゃないのか?」

うーん。身だしなみねぇ。


「俺は人からどう見られようがいいんだよ」

俺。正直あんまり気にしないタイプなんだよな。

だけど。清水さんは気にしそうな感じがする……。

しょうがない。

メンドクサイけど俺はシャツをズボンの中に入れた。

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