ただでさえ水色の頭髪のせいで周囲から浮いていた『蒼空風刃』。その上、嘴や翼までもが生える『変異種』として目覚めてしまう。同じく変異種の兄『嵐刃』や仲間達と共に、「普通の人間になりたい」という願いを叶えるため、激しい戦いに身を投じていく――。
異能モノもしくは『異形モノ』として、風刃の苦悩や願いが非常に巧く表現されている作品だと思いました。特に、能力を使って助けたはずの人々から石を投げられ、理不尽に迫害されてしまうシーンは、王道ながらもリアリティがあって良かったです。
敵味方問わず各キャラクター達の個性もシッカリ描かれており、作者さんの書きたいものが情熱と共に注入されて表現されている印象でした。
ただ文章という点においては、情熱や『書きたさ』が先行し過ぎており、個人的には読みにくい部類の作品だと感じてしまいました。改行ナシで文章が詰まっているかと思いきや、バトルシーンや印象的なシーンでは大量に改行したり。
無料のWeb小説では『作法』や『小説ルール』を絶対遵守する必要はなく、守ったからといって必ずしも読者や評価が伸びるわけでもありません。なので自由に楽しく、フリースタイルで書いても誰も咎めはしないのですが、現状ではかなり『読む人を選ぶ作品』になっていると思います。
加えて、地の文が硬いかと思いきや、キャラ同士の会話劇(特にコメディシーンにおいて)はライトもライトなノリで、その辺でも温度差やチグハグな印象を受けました。
このまま作者さんの書きたいように書き進めるのも自由ですが、より多くの読者や評価を獲得したい気持ちが強くなったのなら、同時進行で他の作品を参考にしたり、基本的な小説の書き方を学ぶのもアリだと思います。少なくともそれによって『時間の無駄』や『損をする』ということはないと思います。