第6話 まあ、どこにでもありそうな、昔話しの怪談話で御座います(6)
「本当にこれは何? 何だろう?」と、先ずは声を漏らす。
でっ、漏らし終えれば。
「わらわの目の前を飛ぶ、浮遊する。この青白く燃える玉は、甘いのかな? 辛いのかな? それとも酸っぱい物なのだろうか?」と、困惑。思案をする。
でも直ぐに、子狐おさん、は、答えを出す。出すのだ。
そう、こんな感じでね。
「よぉ~し! このわらわが、この青白く燃える。温度、体感を感じない玉。火の玉をたべよう。食らってみよう」と、独り言を漏らすのだ。
子狐おさんの、母(かか)さまにあれほど。狐火、鬼火、人魂に近寄ってはならぬ、触ってもならぬ……。ましてや? 食う事など言語道断と注意。諫められていた禁じ事を、子狐おさん、は、今から己の興味本意な欲望に勝てずに破ろうとしている。
だから子狐おさん、やめなさい。やめなされ。早くお家。貴女が家族と共に仲良く暮らす巣穴に戻りなさい。もしも? その狐火、鬼火、人魂を子狐おさんが食らうようなことになれば、貴女は二度と優しい母(かか)さまや兄弟姉妹達の許へと帰還、帰れなくなるから。そんな恐ろしいことを思案しないで、今直ぐ天空神殿から出て、帰還をしなさい……と、思い。子狐おさん、へと注意をしたい。する衝動に駆られていたのだが。時は既に遅い。遅いのだ。
だって子狐おさん、は、己の可愛い頭をあげると。そのまま、青白く燃える火の玉へとジャンプ──飛びつき、自身の口に『アグ』と、咥えて『パク、パク』と、食して飲み込んでしまったのだ。
すると蛹が己の殻を破り蝶へと変貌するように、幼い彼女……。子狐おさんの、容姿が子供から大人へと神々しく輝きながら変貌……。
それも? 狐の姿ではなく、二つの大きな乳房を持つ、妖艶、官能的な女性へと変貌してしまう。
だからこの後、おさんは、優しい母(かか)さまや仲良くジャレ遊んだ兄弟姉妹の住む巣穴に戻ることができずに。
「コ~ン! コ~ン!」と鳴き続けるのだ。何日も何日もね。
でっ、泣き終えれば彼女、妖狐の、おさん、は、人を化かし、悪戯三昧の日々を送り。西の物の怪代表する大妖狐へと変貌。変貌を遂げて。
広島県は、広島市、中区の江波の電停付近の象になり称えられ祭られるほどの、お狐さまになったとさぁ……。
おしまい。おしまいなのだ。
◇◇◇◇◇
西国の妖狐の昔話しで御座います かず斉入道 @kyukon
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