第2話 まあ、どこにでもありそうな、昔話しの怪談話で御座います(2)
沢山! 沢山! 多々あるのだ。青白く燃えている炎の火の玉がね……。
ある! ある! 宙に浮いているのが、子狐おさんの、目に瞳に映るから。
「な、何~? 何々、何じゃ~。あれはぁ~? わらわが追ってきた。ついてきた。青い炎の玉が! 玉がぁ~! あんなにも沢山あるなんて信じられない。ないよ。わらわは本当に正直驚いた。驚いたよ……」と。
子狐おさん、は、またまた驚嘆を漏らし。開いた口が塞がらない状態へと陥るのだが。
〈ブル〉
〈ブル、ブル〉と。
そう、子狐おさん、は、直ぐに己の頭を振り我に返る。返るとね。
「……青色の炎の玉についていく。ついていってみよう……」
子狐おさん、は、このように独り言を漏らしながら『タッ、タタ、タ──!』と駆け足。急ぎ足──!
己の持つ四本の足で走り抜けるのだ。
そう、青白く燃えながら浮遊、移動をしている。続けている。
神殿、社へと向かっているだろう。
炎の玉達を追う。追いかけるのだ。
天空は雲達の上にそびえ立つ。ある。宮殿、社なのかわからない建物に向けてね。木の板でできた通路を勢い良く駆けあがるのだ。
まあ、どれぐらいの時間、距離を、子狐おさん、は走る。駆け抜けるようになるのか迄は、彼女自身もわからない。わからないけれど。
とにかく駆け足──!
それも? ワクワク、「ウフフフ」と、子狐おさん、は、笑みを浮かべ、漏らしながら嬉しそう。
そう、まるで子狐おさん、は? 何か? 何かに憑りつかれ、誘われ、導かれるように走る。走り──駆け抜けていくのだ。
母(かか)さまの諫め……。
少女は言うこと、告げてきたこと……。
『おさん、もう直ぐお盆だから。蘇りの水が湧く安芸の北の、備後や出雲に近い地に。転生していない鬼火や狐火、人魂が、その地や自分達の里、故郷へと一時帰宅をする。するのだ。でッ、する。し終えれば、鬼火、狐火、人魂は、出雲に近い地。黄泉比良坂かへと返る。返ると。出雲の天空神殿へと戻り。あの世の、冥府へと戻るから……。おさん、見かけても、絶対に興味心を抱いてついて行ってはいけぬ。いけぬぞ。おさん……。分ったな? これは? 母(かか)さまと。おさんとの二匹。親子の約束じゃ。分ったな、おさん?』
『はい。わかりました。母(かか)さま……。わらわは必ず。母(かか)さまとの約束を守ります。守りますから。母(かあ)さまは、そんなにも自身の顔色を変えて、わらわのことを心配。危惧しないでください。母さま……。わらわは大丈夫。大丈夫ですから……』
子狐おさん、は、こんな感じで、母(かか)さまと会話、諫めを何度も。口煩いくらい告げ、諫められた。して、されてきたこと自体を少女はすっかり忘れ。板張りの……。
そう、黄泉比良坂を抜ければあるとされる。入道雲の中にポッカリと浮かぶ、天空神殿へと向けて、子狐おさん、は、駆け抜けていくのだ。
我を忘れ無我夢中でね。
「あと少し! 後少しだ! もう少し。もう少し走る。走り駆け抜ければつく。つくよ。大きな神殿へとおさん、は……」、
「だから後少し。あとすこしだから頑張ろう。わらわ……」と。
子狐おさん、は、自分自身を鼓舞。励ますように独り言を呟き漏らしながら板の通路を勢い良く駆けあがり。抜けていくのだ。
大変に斜め角度のついた道を斜行しながら頑張りに、頑張りながら駆け抜けていく。
「ハァ~。ハァ~」と息荒くねぇ。
すると、頑張った! 頑張っている。おさんに御褒美だろうか?
斜め角度のついた通路の両端に赤い火が灯されていくのだ。
頂上、宮殿がある場所まで……。
そう、子狐おさんに対して早くこい。こちらにこい。今直ぐに。と、でも言いたい。告げたいように炎の灯りは頂上、神殿まで点く。灯されていく。
だから子狐おさん、は、「よぉ~し。頑張ろう」と、気合を入れ駆け足で斜行を続ける。続けると。
子狐おさん、は、着いた! 到着したのだ!
天空の神殿! 社へとね。
だから子狐おさん、は、神殿の門──。扉までつくと。ガッツポーズを決める。決めてみせるのだ。
自分自身は、こんな小さな身体で、神話の神々と変わらぬ奇跡を起こしたのだから。
子狐おさん、は、歓喜──。
嬉しくて、嬉しくて仕方がない。なのだ。
でも直ぐに子狐おさん、は、我に返る。返るのだ。
だって子狐おさんには、扉の向こうには、何がある。あるのかわからない。想像もつかないから。
少女は緊張……。己の生唾を『ゴクン』と飲み込み、喉を鳴らす。鳴らし終えれば、子狐おさん、は、『コクン』と頷く。頷きながら宮殿、社の中へと侵入──。
伝説の天空の神殿内へと入っていく。
すると天空の神殿内から。
「うわぁ、あああ~。な、何~? これはぁあああ~⁉」と。
子狐おさんの、驚愕した声が外まで聞こえたそうな。
◇◇◇◇◇
「うわぁあああ~! す、凄い……」
そして?
「き、綺麗……。な、何て綺麗なの……」と。
先程天空の神殿内へと入る。侵入をして絶叫! 驚嘆を吐く。放った。子狐おさん。おさん、なのだが。
その後は宮殿内の様子に呆然、沈黙をしながら佇む。佇んで少し間が空き、時が経てば、宮殿内の上──。天井を見上げながら。子狐おさん、は、今のように歓喜、歓喜の表情と声を漏らす。漏らしたのだ。
だって、少女? 子狐おさんの、瞳に映る宮殿内の様子は。少女が産まれて初めて目にする大変に明るく煌びやかな物……。
そう、子狐おさんが、母(かか)さまや兄弟姉妹達と住み暮らしている巣穴の近くにある人が作りし狭く。昼間の陽の高い時間帯でも室内が暗い社……。
本当に神々を崇め奉っているのだろうか? と。子狐おさんが、疑問に思う。思っているような黒い粗末な建物ではなく金……。
そう、天空神殿の中、だだっ広い室内は、薄暗く、粗末に見えるような室内ではなく。大変に豪華。金箔や金粉をふんだに張り、ちりばめている。大変に豪華で明るい部屋……。
そう、如何にも? 日の本の創生の時代の古から神々が住み暮らし雑談、宴や女神や天女達が舞を披露してはお酒や食事をして楽しんでいたように、子狐おさんでも見て分る。理解、想像もできるような大変に豪華な部屋なのだ。
だから子狐おさんの、口から。
「綺麗、何て綺麗なのだろう?」、
「……だろうか? わらわは産まれ初めて、こんな綺麗で明るい。豪華な部屋を見た。見たよ……」と。
彼女は独り言を何度も呟き、漏らしながら。室内を見渡し見詰める。
そして見詰めながら部屋の奥へと向かう。向かうのだよ。
子狐おさんの、母(かか)さまとの約束を破る。破ってね、部屋の奥へと向かうのだ。
子狐おさん、は、興味津々な顔、表情でね。
もう、ここら、この辺でやめて、母(かか)さまとの約束を守り引き返せばいいのにね。
少女は、「うわぁ~。綺麗~。何て綺麗な、の~」と、独り言を漏らしながら。『テク、テク』と、四本足の音を立て鳴らしながら部屋の奥へと向かうのだった。
◇◇◇◇◇
「あ、あった~」、
「ある。ある、ある。あるよ~」、
「……そ、それも沢山~。沢山ある。あるよ~。凄い~。凄いよ~」、
「何でこんなに沢山あるのだろう? あるのだろうか……?」
「青白い炎の玉が……?」と。
子狐おさん、は、驚愕! 驚嘆を漏らしながら部屋──。
そう、天空神殿の中の奥へと急ぎ足で、慌てふためきながら奥へ、奥へと向かう。向かうと行き止まり。
まあ、当たり前のことだけれどね。
でもその代わり?
黄金色した大きな床の間には、やはり黄金色した仏壇、神棚に良く似た。観音扉の建物、建造物があるのが。子狐おさんの、目に入る。入るのだ、だけではない。
そう、子狐おさんが、この天空神殿まで追いかけてきた。青白く燃えながら浮遊、移動をする玉が沢山、沢山あるのだ。
この黄金色に『キラキラ』と、輝く部屋を更に、神々しく輝かせるほどの数の、青白く燃える。燃焼をしている玉が、子狐おさんの、目の先や頭上に多々あるから。少女は走るのをやめて佇み驚愕……。
【10】
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