第2話

 ある日ハナちゃんと話していると勇者さんの話になった。


"ボクも悪い奴退治する旅のお供したいなぁ"


"じゃあ私達で旅しようよ"


ハナちゃんは人間の姿になってからボクに乗るようになった。


"確かにこれ以上ないパートナーだけど"

"ハナちゃんって戦えるの?"


 僕は勇者さんにけちょんけちょんにされていたハナちゃんの姿を思い出した。


"チロちゃんが今想像してるアレは異常なのよ!"

"その辺の悪いのなら私だって倒せるんだからね"


"それでもハナちゃんだけに任せたくないよ"


"じゃあチロちゃんも戦うために特訓してみたら?"

"パパさんも昔見た時は強かった気がするのよね"


"そうなの!?"


 僕はその話を聞いてすぐお父さんのもとに駆けていった。


"お父さんって実は強いの?"


"どうしたんだ?"


"ボク強くなってハナちゃんと勇者の旅に出たいんだ!"


"むぅ"


 頑固モードになりそうなお父さんだったけど良いところにお母さんがやってきてくれた。


"いいじゃない、お父さんも昔は旅してたんだし"


"そーだそーだ"


 お母さんの背にはいつのまにかハナちゃんが乗っていた。


"じゃあシャル、お前はどう戦いたい?"


"えーと、やっぱり勇者さんみたいに勇敢に相手に突進するとか"


"確かにチロちゃんに突進されたら痛そう"


"お前なぁ、それだと自分も痛い思いをするぞ"


 そうか、確かに痛いのはやだな。ボクは少し落ち込んだ。


"だから私達の戦い方は騎乗する人間をサポートすることだ"

"彼らが動きやすいように走って駆ける"

"私と勇者さんはあの頃一心同体となって敵を倒していたんだ"


"あの頃のお父さんはかっこよかったわね"


"でもじゃあ私達のコンビネーションなら充分戦えるんじゃない?"


 ハナちゃんは何故か自分の強さに自信を持っているみたいだったけど、勇者さんにやられたところしか見たことのないボクらは半信半疑だった。


"でもハナちゃん小さくなっちゃったけど、大丈夫?"


"どうかしら! その辺のなら一発よ!"


 最近ハナちゃんが少しおバカになった気がする。前はもっと頼りになる感じがあった気がするのに。


"シャルと君が仲良しなのは知っているが、旅を一緒にさせるとなるとちゃんと実力を確かめておきたいのが親心"

"勇者さんにいろいろ教えてもらおう"


 ということで勇者さんが遊びに来る日まで旅に出るのはお預けとなった。


 けれど何日経っても勇者さんはやってこなかった。


"すれ違ってるのかしら"


"勇者さんも忙しいからな"


 ボク達が急かすとそんな言葉で流される日々が続いた。

そんなある日、ハナちゃんがまた突拍子もないことを言った。


"もう黙って旅に出ちゃいましょ!"


"それはダメだよ……心配かけちゃうし……"


 どうやらハナちゃんはボク以上に旅に出たいらしく、日に日にどの思いは強くなっているようだった。


"チロちゃんチロちゃん……"


 ある夜ボクはハナちゃんに起こされて目を覚ました。


"んにゃ……まだ夜だよハナちゃん……"


"旅に出るよ! チロちゃん!"


 ボクはわけも分からずチロちゃんが指示する通りに歩いた。


"どこへ行ってるの? またお父さんのおつかい?"


"大丈夫! ママさんにはちゃんと言ってるから!"


"んにゃ……、お母さんが知ってるならいいや……"


 そうしてボクは半分寝ながら長い時間歩いていたらしい。


 聞きなれない騒音に耳をぴくぴくさせているとハナちゃんが大きな声を出して目が覚めた。


"着いたーーー!!!"


 びっくりして辺りを見渡すと見慣れた緑は少なく、たくさんの人間が往来している大通りだった。


"えっ、ここどこ?"


"何言ってるのチロちゃん、始まりの街に決まってるじゃない"

"ここから私達の勇者伝説が始まるのよ!"



 ボクたちはそれから長い旅をすることになる。たくさんの場所を訪れ、たくさんの人と出会い、たくさんの伝説を作ることになる。

 でもそれはまた別のお話。













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うまのシャルロット~悪魔っ娘を乗せて~ 於菟 @airuu55

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