第6話 いざ鬼退治へ


 桃太郎は宮子が作ってくれたきび団子を大事に腰巾着にしまうと、彼女の見送りを背に勇んで足を踏み出した。

 向かうのは鬼が島。目的は、鬼退治。


 最近村で鬼が悪さをするという噂がされるようになった。鬼など誰も見たことのない存在だったが、確かに数人は鬼に物を盗まれたと証言している。半ば怪しいと思いながらも、宮子にも被害が及ぶことを危惧し、桃太郎は鬼退治へ行くことに決めたのだった。

 もちろん宮子は心配し止めたが、同じくらいに宮子のことを心配する桃太郎は折れずその決意は固いものだった。ならばせめて元気が出るようにと朝早くにこしらえてくれたのがきび団子だ。

 桃太郎が不在中は、彼が脅しに脅したタヌキを宮子の護衛とした。


 桃太郎が山道を歩いていると、途中で男性が倒れていた。周りには番犬か、3匹の犬が吠えている。意識はあったため身を起こしてどうしたか尋ねると、彼は旅人であり空腹で倒れていたのだという。

 桃太郎は正直惜しいと思ったが、その男性に宮子の手作りのきび団子を差し出した。すると泣きながらおいしいと言って全て平らげてしまい、桃太郎が少し涙目になっていると顔に生気を漲らせた男性がお礼にと犬を一匹くれた。

 その男性と別れ犬を連れて進んでいくと、犬が突然吠えだし林の中へと走って行ってしまった。

 急いで追いかけていくとたき火の後なのか、そこから草に火が燃え移り山全体に広がる直前だった。急いで水筒の水やマントで鎮火させる。山火事になったら大変なので、よく気づいたと犬の頭を撫でて褒めていると、山に住んでいる動物たちからも礼を言われた。その中の猿と雉は桃太郎の事情を聞き、礼に自分もお供をすると言い出した。


 犬と猿と雉を連れて岸まで行くと、霧に覆われているが海に浮かぶ鬼が島と呼ばれ誰も寄りつかない島がうっすらと見える。

 さてどうやって海を渡ろうかと思案していると、そこを通りがかった幼子が雉の美しい姿を見て母親に強請りだした。雉を差し上げることはできないので、せめてと色鮮やかな羽を渡すと大喜びし、母親は頭を下げると悩んでいた桃太郎の話を聞いてくれた。都合の良いことに、なんとその女性の夫が船頭らしく、近くまで乗せてくれることができた。


 順調に島へと着き、さて鬼はどこかと探しながら歩いていると、ふと遠くで子どもの泣く声が聞こえてきた。声を辿って着いた場所には誰もいない。雉が上空から調べると、声の主は大きな木の枝にしがみついている子猫であることがわかった。猿は心得たとばかりに木に登り、すぐに子猫を抱きかかえて降りてきた。

 子猫を腕に抱きながら歩いて鬼の拠点を探っていると、鬼の集団のようなものに見つかった。対戦になるかと身構えると、なんとリーダーらしき鬼が桃太郎の腕の中にいる子猫を指差し号泣し出だす。

 なんとその子猫は鬼の王の愛猫で、最近姿を消し皆で大捜索していたらしい。よくぞ見つけてくれたと満面の笑みの鬼の王に金銀財宝を土産に貰い、桃太郎たちは帰路へとついた。結局村での鬼騒動は、街で捕まったらしい盗人のせいだったのである。


 早い帰りに驚いた宮子は桃太郎の話を聞くと、『なんだか藁一本から億万長者になった人みたいだねぇ』と言って目をまん丸にさせていた。


 こうして宮子と桃太郎は、一生食うに困らず幸せに暮らしましたとさ。

 おしまい。

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