第9話

 部長のお酒を飲むスピードは1時間経っても変わらずにいた。ハイペースでありながら量もそこそこ飲んでおり、ビールジョッキはそろそろ8個目が空くところだった。あまりにも酒豪すぎるが故に、ギャルは酒で落ちてしまった。


「ぶ、部長お身体とか大丈夫なんですか?」

「……私がビールなんて飲んでいると思うのかね?」

「へ?」

「君たちの目的はぜーんぶ知っているさ。君の妹からの情報でね」

「は……?」


 俺は驚きを隠せなかった。

 妹との繋がりを自分から晒した部長に驚いたのではなく、俺がどう動いていたのかを妹がどこで知ったのかに驚いた。バレてはいないと思ってしまった慢心からバレたのか、それとも計画の段階でバレていたのかなんにせよ訳分からず、俺は部長の顔を見つめた。


「……」

「よし。少しお話をしよう。私の昔話についてだ」

「……是非」

「私は17歳の頃。ある1人の少女に恋をした。それもまだ7歳という若さの子にだ。その子からは7歳というお子様感が無くてね、私と同年代のような輝きを持っていた。私はその子を襲った」


 話が急に飛躍し、俺はただ困惑しているとニタァッと不快な笑みを浮かべ部長は言った。


「私はね。君の妹を愛しているんだ。でもきみの妹は君を愛している。つまり私が君を殺せば君の妹は私のモノになる!」

「……妹を殺そうがなんだろうが構いませんよ。だが、俺は死ぬつもりなどない。むしろ今のであんたを殺す気満々になった」

「ほう。何故か聞いてもいいかな?」

「たった7歳の若い子を襲ったこと。そしておそらくお前が前に自殺スポットで殺した可愛らしい女性はお前がその時襲った7歳の子なんだろ」


 部長の目を睨みつけながら、片手にフォークを持ちながら部長の返答を待っていると、ぱちぱちと拍手をしながら部長は言った。


「ご名答」

「……」

「私は人から大切なものを奪うのが好きなのさ。もちろん君からもね」


 俺は我慢ならずテーブルに置いていた部長の右手にフォークを突き刺してしまった。


 流れ出る血、騒ぎ始める店内。


 俺は全てを真っ白にしてしまった。


 すると部長は俺に耳元で囁いた。


「……私は君の恋を応援しよう」

「はぁ……?」

「ふふふ……」

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